評判の『シルビアのいる街で』(2007)を、シアター・イメージフォーラムでようやく見ることができた。これがなんともしみじみと心に刻まれる、というか、これを見た人にとって人生の思い出になるような水準に達していて、思わずびっくりしてしまったと同時に、こんな映画をつくる才人がバルセロナに隠れていたのかと、ここ数年のあいだに幾度もこの美の都市を訪れているはずの我が身の無知と不勉強に、赤面するほかはなかった。
「nobody」誌編集部の厚意によって、『イニスフリー』(1990)、『影の列車』(1997)、『シルビアの街での写真』(2007)と、ホセ・ルイス・ゲリンの過去の未公開作3本もDVDで見ることができた。これらも含蓄に富み、知性とふくよかさを併せ持つ作品群で、またしてもびっくりせざるを得ない。とくに、昨年の東京国際映画祭でも上映された『イニスフリー』は、ジョン・フォードの『静かなる男』(1952)でジョン・ウェインが父祖のルーツの地に帰郷する、そのロケ場所となったアイルランドの小村イニスフリーに取材し、フェイク・ドキュメンタリーともスケッチ的ポートレイトともつかぬ摩訶不思議な時空間で、見ているこちらを包み込んでゆく。
アメリカ映画の風を息いっぱいに吸い込み、それでいて隷属的なアメリカ映画至上主義にも堕さない、個としての強靱な映画作家のあゆみを、ゲリン映画の中に、しっかりと認めることができる。
東京・渋谷宮益坂上のシアター・イメージフォーラムで公開中
http://www.eiganokuni.com/sylvia/
「nobody」誌編集部の厚意によって、『イニスフリー』(1990)、『影の列車』(1997)、『シルビアの街での写真』(2007)と、ホセ・ルイス・ゲリンの過去の未公開作3本もDVDで見ることができた。これらも含蓄に富み、知性とふくよかさを併せ持つ作品群で、またしてもびっくりせざるを得ない。とくに、昨年の東京国際映画祭でも上映された『イニスフリー』は、ジョン・フォードの『静かなる男』(1952)でジョン・ウェインが父祖のルーツの地に帰郷する、そのロケ場所となったアイルランドの小村イニスフリーに取材し、フェイク・ドキュメンタリーともスケッチ的ポートレイトともつかぬ摩訶不思議な時空間で、見ているこちらを包み込んでゆく。
アメリカ映画の風を息いっぱいに吸い込み、それでいて隷属的なアメリカ映画至上主義にも堕さない、個としての強靱な映画作家のあゆみを、ゲリン映画の中に、しっかりと認めることができる。
東京・渋谷宮益坂上のシアター・イメージフォーラムで公開中
http://www.eiganokuni.com/sylvia/
スペインという国は、唐突に才能ある映画作家が出てくるという印象があります。ホセ・ルイス・ゲリンにもそのような匂いを感じ、来週には必ず観に行こうと思っています。
スペインという国は、今の季節はおそろしく暑くて、日中は撮影なんか、長時間まともにできません。そんなときには、ガスパッチョなんていただくと、身も心もリフレッシュしてしまいます。
しかし、不思議なのは、この人はカタルーニャ人なのに、どうしてJosep Lluís Guerin(ジュゼップ・リュイス・ゲリン)とはならななかったのでしょう。
識者に聞いたところ、本人かその親類に訳を尋ねるしかないが、ゲリン家がいわゆる「国内移民」(アンダルシア州やガリシア州のような貧しい地域からの移転労働者の末裔)であるか、もしくはカタルーニャ人でも息子のファーストネームに純スペイン風の名前を採用しようとする親もいるらしいです。
どうも細かいことを書きました。
人名表記、正確にはどう読むのか気になっていました、ホセ・ルイス・ゲリンでいいんですね。ありがとうございます。
私は少し前に見たのですが、いまだにこの映画の「音」にやられています。今年見た映画の中でもっとも忘れられない作品です。中洲居士さんがご覧になられたという過去の作品も早く見たいです。
『シルビアのいる街で』は、わたくしも音がすごいと思いました。映像以上ではないかと。
他作品については、今秋の東京国際映画祭で予定されている「ゲリン特集」、プログラム発表が注目です。
発売のあかつきには、よろしくお願いします。
寒くもなく暑くもなく、そこそこ爽やかな朝となりました。関東はこれから天気が崩れるようですが。
『シルビア~』はいい映画でしたね。そして、「映画はいい」というふうに映画そのものを肯定したくなる心地の、なんと浮き浮きするものであることか。