荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『ガーメント・ジャングル』『地獄へ秒読み』 ロバート・アルドリッチ

2010-01-13 00:28:34 | 映画
 「録り貯めたHDDから……を見る」という言い回しが、当ブログに馬鹿のひとつ覚えのようによく出てきて、我ながらうんざりするが、劇場や試写室に出かけられる状況下にはないため、お許しいただきたい。
 そこでロバート・アルドリッチを何本か見た。『特攻大作戦』『攻撃』『キッスで殺せ!』といったおなじみの作品でいろいろと再発見があったが、それにしても未見だった2本の作品──ニューヨークのアパレル業界における労働運動の拡がりと武装右翼による組合つぶしを扱った『ガーメント・ジャングル』(1957)と、第二次大戦終戦直後のベルリンで不発弾処理の恐怖を描いた『地獄へ秒読み』(1959)──は、いずれも恐ろしくすばらしい作品ではないか! なぜ、これを今まで見ずに済ませていられたのか、不思議でならない。
 『ガーメント・ジャングル』では、監督のクレジットがヴィンセント・シャーマンと表記されており、アルドリッチはクランクアップ5日前に監督を解任された。レッドパージの傷跡なまなましい時期としては、デリケートすぎる題材ではあっただろう。ここからアルドリッチの困難が始まっている。苦悩に満ちたヨーロッパ時代である。『地獄へ秒読み』はそんなさなか、英国ハマー・プロの製作協力のもと、ベルリンでロケされた。プロデュースは、ハマー・プロ創設者の息子マイケル・カレーラス。
 アルドリッチ作品というのは、ウェズリー・アディやリチャード・ジャッケル、ニック・デニス、バート・ヤングなど、常連の脇役たちを見るのが楽しいと相場が決まっているが、『地獄へ秒読み』のヒール役ジェフ・チャンドラーという役者が、たいへんすばらしい。残念ながらこの俳優は、本作の2年後、椎間板ヘルニアの手術中に血液の問題が生じ、そのまま息を引き取っている。若死にしていなければ、アルドリッチ映画の重要な常連の一角を担っていたかもしれない。


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2 コメント

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『ガーメント・ジャングル』に登場する組合 (中洲居士)
2010-01-14 13:14:07
『ガーメント・ジャングル』に登場する組合としては、2つあります。

1つめは、主人公のカーウィン・マシューズが係わることになるInternational Ladies' Garment Workers' Union(国際婦人服労働組合)。そしてもうひとつは、主人公マシューズが、ロバート・ロジアとジア・スカラ夫婦と出会うDressmakers' Union of Greater New York(ニューヨーク大都市圏服飾職人組合)です。ロバート・ロジアが武装右翼に襲われて命を落とした後、街頭葬儀のシーンがあるが、あれはあきらかにニュースリール。だれの葬儀だったのか。
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不発弾の処理 (中洲居士)
2010-01-20 22:31:34
不発弾の解体作業というのは、じつに恐怖と緊張感を要する作業となり、『地獄へ秒読み』を見ているこっちも汗がじっとりしてきますが、キャスリン・ビグローの新作『ハート・ロッカー』もそういう内容だそうですね。嫌だなあ、怖いなあ…
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