今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

国際的なレジームに反する中国の国土拡張策

2014-05-29 09:19:31 | 幸福の追求

 「王は暴力を用いて地上を征服し、海辺にいたるまで

  大地を併(あわ)せ有し、海の此方(こなた)では満足

     せず、海の彼方(かなた)をも得ようと求める」(中安

     含経(ちゅうあごんきょう)

 これはブッダの言葉である。国家や人間の際限ない欲

望を戒めた言葉である。まさに中国は国際秩序を無視し

た蛮行といえよう。特にインドネシアでは抗議デモなど

で死者まで出している。国際的なレジーム(自由と民主主

義)に反するものと云わざるを得ない。さらにはフィリピ

ンとの間で小島をめぐる紛争を巻き起こしている。国際

的にも認められないことである。

 一方、日本では眠れる獅子を起こしてしまった。中国

の尖閣諸島に対する占有権を主張する諸活動は非常に不

愉快である。何よりも平和国家を目指してきた日本に社

会不安を惹起する結果となっている。

 中国は世界的な世論を見直すべきであろう。大人(たい

じん)としての中国政府に賢明な行動を期待したい。


集団的自衛権と自衛隊員の雑兵化?

2014-05-21 11:55:34 | 幸福の追求

 集団的自衛権論議が佳境を迎えつつある。賛否両論の論

争は出尽くしたようである。推進派は米などが戦争に巻き

込まれそうになったら日本も積極的に参戦しようという趣

旨であろう。また、改憲せずに現憲法を拡大解釈して対処

しようという内容のようである。反対派は、改憲が必須条

件だと主張している。そこまで参戦する必要があるのか、

といった懐疑論であり、平和主義を堅持すべきだ、という

ことであろう。

 ところで、賛否両論の中で欠落している部分があること

に気がついた。太古から中世にいたるまで、戦争の敗残兵

は奴隷として売られるか、最下級兵の雑兵(ぞうひょう)にな

ったものである。また、一番危険な最前線に立たされて、矢

立がわりに使われたものである。農民などの臨時に雇われた

足軽もこの雑兵である。日本も先の大戦の敗戦国である。そ

れらの歴史的な経緯を鑑みれば、集団的な自衛権が行使され

るようになれば、日本の自衛隊も危険な任務を押し付けられ

るようになるのではなかろうか。当然、戦死者や負傷者が多

数出るようになるのではなかろうか。

 現憲法では「戦争の放棄」を謳っているのは世界中が知っ

ている。だから後方支援で済んでいる。日本近かいで戦争状

態になれば、そのような心配を超えた状態になるはずである。

しかし、現状では全面戦争が起こるとは思えない。何千キロ、

何万キロも離れた所で多数の自衛隊員の死傷者を出すように

なるのは意味がない、と云わざるを得ないのではなかろうか。

自衛隊員も同じ日本人である。

 日本は平和主義に徹し、平和外交で紛争を解決すべきでは

なかろうか。集団的自衛権に反対である。


身勝手なナイジェリアの女子生徒拉致!

2014-05-14 06:47:04 | 幸福の追求

身勝手なナイジェリアの女子生徒拉致!

ナイジェリアで4月14日の深夜、16~18才の女子生徒の

いた学校の宿泊施設を急襲し、276人を拉致したと報じられ

た。そのうち53人が脱出し、223人が行方不明という。その

内の130人が「(キリスト教から)イスラム教に改宗した」と

してその写真が5月12日に報じられた。残りの90人につい

ての報道はない。心配である。

 この事件を起こした「ボコ・ハラム」は、イスラム過激派

で、ナイジェリア政府が拘束しているボコ・ハラムの戦闘員

全員の解放と、女子生徒の解放条件にしている、と報じられ

ている。さもなくば「奴隷として売り飛ばす」と、云ってい

るとも報じられている。

 残酷な話である。宗教間の紛争はいい加減にしてほしい。

何よりも「すべての人間の基本的な人権」を世界中が守る、

という基本を確認してほしい。ましてや女子という弱者を交

渉道具とするのは許せない。すべての人間は女性から生まれ

るのである。むしろ男性よりも尊重されてしかるべきである。

 ボコ・ハラムは無条件で女子生徒を解放してほしい。自分

たちも同じ女性から生まれたことを思い出してほしい。イス

ラム教も相互扶助を重視している宗教のはずである。

 また、国連は世界中の女性を男性並みに尊重するようにア

ピールし、世界的規模の運動にもっていく必要があるのでは

なかろうか。人を殺さない、基本的人権が守られる世界にし

てほしい。


君死にもうことなかれ(与謝野晶子)

2014-05-09 08:42:21 | 幸福の追求

 

原文

あゝおとうとよ、君を泣く
君死にたまふことなかれ
末に生まれし君なれば
親のなさけはまさりしも
親は刃をにぎらせて
人を殺せとをしへしや
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや

堺の街のあきびとの
旧家をほこるあるじにて
親の名を継ぐ君なれば
君死にたまふことなかれ
旅順の城はほろぶとも
ほろびずとても何事ぞ
君は知らじな、あきびとの
家のおきてに無かりけり

君死にたまふことなかれ
すめらみことは戦ひに
おほみずから出でまさね
かたみに人の血を流し
獣の道で死ねよとは
死ぬるを人のほまれとは
おほみこころのふかければ
もとよりいかで思されむ

あゝおとうとよ戦ひに
君死にたまふことなかれ
すぎにし秋を父ぎみに
おくれたまへる母ぎみは
なげきの中にいたましく
わが子を召され、家を守り
安しときける大御代も
母のしら髪はまさりぬる

暖簾のかげに伏して泣く
あえかにわかき新妻を
君わするるや、思へるや
十月も添はで 別れたる
少女ごころを思ひみよ
この世ひとりの君ならで
ああまた誰をたのむべき
君死にたまふことなかれ

読み方(現代仮名遣いで)

ああおとうとよきみをなく
きみしにたもうことなかれ
すえにうまれしきみなれば
おやのなさけはまさりしも
おやはやいばをにぎらせて
ひとをころせとおしえしや
ひとをころしてしねよとて
にじゅうしまでをそだてしや

さかいのまちのあきびとの
きゅうかをほこるあるじにて
おやのなをつぐきみなれば
きみしにたもうことなかれ
りょじゅんのしろはほろぶとも
ほろびずとてもなにごとぞ
きみはしらじなあきびとの
いえのおきてになかりけり

きみしにたもうことなかれ
すめらみことはたたかいに
おおみずからはいでまさね
かたみにひとのちをながし
けもののみちにしねよとは
しぬるをひとのほまれとは
おおみこころのふかければ
もとよりいかでおぼされん

ああおとうとよたたかいに
きみしにたもうことなかれ
すぎにしあきにちちぎみを
おくれたまえるははぎみは
なげきのなかにいたましく
わがこをめされいえをもり
やすしときけるおおみよも
ははのしらがはまさりぬる

のれんのかげにふしてなく
あえかにわかににいづまを
きみわするるやおもえるや
とつきもそわでわかれたる
おとめごころをおもいみよ
このよひとりのきみならで
ああまただれをたのむべき
きみしにたもうことなかれ

意味

ああ弟よ、あなたのために泣いています。
弟よ、死なないで下さい。
末っ子に生まれたあなただから
親の愛情は(他の兄弟よりも)たくさん受けただろうけど
親は刃物を握らせて
人を殺せと(あなたに)教えましたか?(そんなはずないでしょう。)
人を殺して自分も死ねといって
(あなたを)24歳まで育てたのでしょうか?(そんなはずないでしょう。)

堺の街の商人の
歴史を誇る家の主人で
親の名前を受け継ぐあなたなら
(どうか)死なないで下さい。
旅順の城が陥落するか
陥落しないかなんてどうでもいいのです。
あなたは知らないでしょうが、商人の
家の掟には(人を殺して自分も死ねという項目など)ないのですよ。

弟よ、死なないで下さい。
天皇陛下は戦争に
ご自分は出撃なさらずに
互いに人の血を流し
「獣の道」に死ねなどとは、
それが人の名誉などとは
(天皇陛下は)お心の深いお方だから
そもそもそんなことをお思いになるでしょうか。(そんなはずないでしょう。)

ああ弟よ、戦争なんかで
(どうか)死なないで下さい。
この間の秋にお父様に
先立たれたお母様は
悲しみの中、痛々しくも
我が子を(戦争に)召集され、家を守り
安泰と聞いていた天皇陛下の治める時代なのに
(苦労が重なったせいで)お母様の白髪は増えています。

暖簾の陰に伏して泣いている
か弱くて若い新妻を
あなたは忘れたのですか?それとも思っていますか?
10ヵ月も一緒に住まないで別れた
若い女性の心を考えてごらんなさい。
この世であなたは1人ではないのです。
ああ、また誰を頼ったらよいのでしょう。
(とにかく)弟よ、死なないで下さい。

解説

○あゝおとうとよ、君を泣く
「君を泣く」は詩的表現で、普通の言葉で言えば「あなたの置かれている状況を考え、泣いています。」といったところでしょうか。実は、この詩が発表された時「旅順口包囲軍の中に在る弟を嘆きて」という添え書きがあったのです。与謝野晶子の弟は、日露戦争の最中、戦争を優位に進める手段として、強引に旅順港を叩き潰す作戦に加わっていたようなのです。ちなみに、この作戦は成功して旅順は日本軍の手に落ちたものの、日本軍は5万9千人もの死傷者を出したそうです。

○君死にたまふことなかれ
「たまふ」は「~なさる」、「なかれ」は「~するな」です。また、「君」はもちろん弟を指しているので、「弟よ、死なないで下さい」という感じでしょうか。当時は男尊女卑の考えが強くて、姉の与謝野晶子が弟に対して敬語を使っているのがよくわかります。

○末に生まれし君なれば
これはそのままですね。「末っ子に生まれたあなたなら」という感じです。

○親のなさけはまさりしも
前の文章から続いていて、「末っ子に生まれたあなたなら、親から(私よりも)強い愛情を受けただろうけど」ということでしょう。時代が変わっても、後に生まれた子どもの方がかわいいという親心は変わらないようですね。

○親は刃をにぎらせて
これはそのままですね。後ろとつながっているので、詳しくは次とまとめて解説しましょう。

○人を殺せとをしへしや
「人を殺せと教えただろうか、いや教えていない。」という否定をあらわす疑問文です。つまり、「末に生まれし」の部分からここまでつながっていて、「愛情を私よりたくさん受けて育ったあなたですら、人を殺せなんて習っていないのだから、あなたのやっていることは間違っているんだ」という思いを表現しているのだと思います。

○人を殺して死ねよとて
「とて」は「と言って」の略ですが、ほとんどそのままです。これも後ろとつながっているので、後ろで詳しく解説しましょう。

○二十四までをそだてしや
これも「をしへしや」と同じで、強い否定を表わす疑問文です。前の文と合わせて、「人を殺して自分も死ぬために、親はあなたを24歳まで育てたのではないですよ。」という意味合いを表現しています。

○堺の街のあきびとの
これは想像しやすいでしょう。「堺」はもちろん現在の大阪府堺市のことで、「堺市にある商人の」という感じでしょうか。

○旧家をほこるあるじにて
「旧家」は昔からある家のことで、文章は「旧家であるという歴史を誇る家の主で」といった感じでしょうか。

○親の名を継ぐ君なれば
これはほぼそのままですね。「なれば」は「ならば」「だったら」という意味で、全体では「親の名前を受け継ぐあなたなら」という感じでしょう。

○君死にたまふことなかれ
これは1度出たので解説は省略しますが、前の文章とつながっていて「親の名前を引き継ぐなら、こんなところで死ぬな」という感じの意味合いでしょう。

○旅順の城はほろぶとも
「旅順の城」は最初に解説した、旅順港のことを言っています。そこが陥落しても、という感じでしょうか。

○ほろびずとても何事ぞ
前の文章とつながっていて、「旅順が陥落するかどうかなんて関係ない。」という意味です。言外に、弟の無事を祈る与謝野晶子の気持ちがあることは容易に想像できます。

○君は知らじな、あきびとの
「知らじ」の「じ」は打消推量で「~ないだろう」という意味で、「な」は強調。「あなたは知らないでしょうが、商人の」として次の文につながっています。

○家のおきてに無かりけり
これはそのままですね。「家の掟には無い」という意味です。何が無いのかは具体的には分かりませんが、詩の意味合いを考えれば「人を殺せ」という掟がないと解釈するのが無難でしょう。

○君死にたまふことなかれ
これは既出なので省略します。

○すめらみことは戦ひに
「すめらみこと」は「天皇陛下」のことです。文章は次につながっているので、全体の意味は次にまとめます。

○おほみずから出でまさね
「おほみずから」は「ご自分は」ということ、「出でまさね」は「お出にならずに」ということです。現在は使いませんが、当時は天皇陛下にしか使わない最高級の敬語というのがあって、「おほみずから」「出でまさね」がそれです。前の文章と合わせて「天皇陛下は戦争にご自分は出撃なさらずに」ということです。

○かたみに人の血を流し
「かたみに」は「互いに」ということ。「敵味方互いに人間の血を流して」ということです。

○獣の道で死ねよとは
「獣の道」は2つの解釈が考えられます。1つはまさに「獣の道」で、山の奥やら荒れ地やらといった、到底人間の死に場所とは考えにくいところを想定しているという解釈、もう1つは「人道」の逆で、たとえ戦争といえども人殺しという大それたことをしながらという意味合いで使っているという解釈です。私は2つを掛けていると思うのですが、いかがでしょうか。

○死ぬるを人のほまれとは
これはそのままですね。「死ぬのが人間の名誉とは」という意味です。

○おほみこころのふかければ
「おほみこころ」も「おほみずから」などと一緒で天皇陛下に対してのみ使う最高級の敬語で、意味は「(天皇陛下の)お心」といった感じです。「天皇陛下のお心が深いので」として次につながります。

○もとよりいかで思されむ
「もとより」は「最初から」、「いかで」は「なぜ」「どうして」ということ。つまり、前の文章を受けて「そんなお心の深い方がどうして死ぬのが名誉だなどと思われるのでしょうか、最初からそんなこと思われるはずがない」といった感じの意味合いです。

○あゝおとうとよ戦ひに
これはそのままですね。「ああ弟よ、戦争で」という感じです。

○君死にたまふことなかれ
これは既出なので省略します。前の文章とつながっていて、「戦争で死なないで」と弟に呼びかけています。

○すぎにし秋を父ぎみに
「すぎにし」の「に」は発音しやすくするの働きしかなく、「し」は「~した」という経験過去ですから、「過ぎ去った秋」つまり「この間の秋」となります。全体で「この間の秋にはお父様を」となって次につながっています。

○おくれたまへる母ぎみは
「おくれる」というのは、「親しい人に先に死なれてしまう」という意味だそうで、この文章は前の文章とつながって「お父様に先立たれたお母様は」という意味になります。

○なげきの中にいたましく
これはあまり解説の必要がなさそうですね。難しい言葉ですが、現代でもよく聞く言葉です。全体で「悲しみの中、さらに痛々しくも」という感じです。

○わが子を召され、家を守り
これもそのままです。「召され」とは当然「戦争に召集されて」ということですから、「我が子を戦争に召集されて、自分は家を守って」ということです。

○安しときける大御代も
「安し」は「安泰だ」という感じ意味で、「大御代」は「天皇陛下の治める時代」ということ。全体で「安泰だと聞いていた、天皇陛下の治める時代なのに」という感じでしょうか。

○母のしら髪はまさりぬる
「まさりぬる」は「増さりぬる」が一番しっくりくる解釈だと思います。「母の白髪は増えていく」ということです。つまり、母親は安泰なはずの天皇陛下が治める時代で苦労していると言っているのです。

○暖簾のかげに伏して泣く
これは今更解説の必要もないでしょう。そのままです。

○あえかにわかき新妻を
最初の部分が分かりにくいのですが「あえかに・わかき」と分かれるようです。「あえか」は「か弱い」とか「きゃしゃな」という意味で、「わかき」はもちろん「若き」です。全体で「か弱くて若い新妻を」となります。

○君わするるや、思へるや
これはそのままでしょう。前の文を受けて「新妻のことをあなたは忘れたのですか、それとも新妻のことを思っていますか」となります。

○十月も添はで 別れたる
これもそのままですね。「10ヵ月も一緒に暮らさないうちに離れ離れになった」ということです。

○少女ごころを思ひみよ
これもそのままですね。「少女ごころ」はここでは奥さんの気持ちということでしょうから、全体で「あなたの奥さんの気持ちを考えてみなさい」ということです。

○この世ひとりの君ならで
「この世であなたは1人だけではないのです」ということです。あなたが死んだら、悲しむ人はたくさんいるのだから、簡単に命を投げ出すようなことはしないで欲しいという願いがこもっています。

○ああまた誰をたのむべき
「たのむ」は「頼りにする」という意味だと考えると、「ああ、また誰を頼ったらいいのでしょう」という意味になります。おそらく、もう自分の力が届かないところで弟の生死が決められていることにもどかしさを感じてこのような文が挿入されていると感じたのですが、皆様はいかがでしょうか。

○君死にたまふことなかれ
これは既出なので省略します。意味合いとしては前の文章を受けて、「何でもいいからとにかく死なないで帰ってきて欲しい」という願いが強く込められていると思います。

 野僧の一番好きな詩である。下記のHPを転載いたしました。厚く御礼申し上げます。

http://www.geocities.jp/the_longest_letter1920/kimi_shinitamou_koto_nakare.html

 


戦争の是非判断と世界のレジーム

2014-05-06 15:45:49 | 幸福の追求

 人類は太古から現在にいたるまで戦争を繰り返してきた。人類史のほとんどは 

人間の血で書かれた悲惨な戦争の歴史書といっても過言ではない。戦争の原因は 

ともかくとして、それぞれの戦後の判断は戦勝国、敗戦国で違っていた。 

 しかし、第二次世界大戦を契機に、敗戦国であっても公正な判断を世界に示す 

ように変わってきた。特に「何が悪かったのか」、という具体的事例をあげて世 

界中に示して詫びるように変わったのである。たとえばドイツは、600万人以上 

といわれるユダヤ人を殺害したホロコーストを全面的に自己否定し、「二度とし 

ませんから」と世界に公言し、今日の繁栄にいたっている。もしも、ドイツが開 

き直っていれば、現在のEUは出来なかったであろう。これが「自由と民主主義」 

という「世界のレジーム」の流れとなっている。 

 一方、日本はドイツのような反省や戦争の総括をしてこなかった。いわゆる負

けっぷりが悪かったといえよう。それでも今日のような経済的な発展ができたのは 

米国の理解と支持があったからである。その原因の一つとして外交官の杉原千畝氏 

の功績によるものといえよう。3000人以上のユダヤ人にビザを発行し、日本経 

由で米国に渡航させて命を救ったからである。しかし、日本政府は戦後何の反省も 

総括もしなかった。日本政府は杉原氏の行為を否定していたのである。いわば「瓢 

箪から駒」で今日の経済的な発展に繫がったといえよう。 

 さらに日本軍は中国や韓国、さらにはアジア各国で大量殺戮や慰安婦問題などに 

真摯な謝罪をしてこなかった。また、戦争を始めたA級戦犯を祀る靖国神社に政府 

や政権政党の要人は平気で参拝をしている。これは日本が何の反省もしていない、 

と世界中から見られていることを意味している。米国などのキリスト教国と思われ 

る国でも、一つの宗教施設を慰霊施設としている国はほとんどない。国立無名墓地 

として慰霊しているのが実情である。また、戦争遂行上の精神的なシンボルとして

きた靖国神社は世界的なレジームに反する存在として見えるのであろう。 

 今日の新聞各紙は、日中友好議員連盟と中国の要人との会合で、高村自民党副総 

裁は「政府に召喚された兵士が眠る靖国神社に参拝するのは当然のことで、戦争指 

導者に参拝しているわけではない」、と主張した。これは異端の説にも一理あり、

の類で、日本の一方的な解釈にすぎない。これに対し、「戦争を美化するもの」と

いう厳しい中国の反論にたじたじとなったようである。被害国である中国などの痛

み、怨みなどを何ら考えず、自国のエゴだけを主張する日本の態度は世界各国から

さらに批判されるであろう。 

 安倍首相のいう「世界のレジームからの脱出」ということが、戦争にする無反省、 

開き直りの論理を意味するものとすれば、一般日本国民の精神的な脆弱性が世界中か 

ら問われることになるだろう。

 


オバマ大統領の云いたかったこと?

2014-05-01 05:32:14 | 幸福の追求

 オバマ大統領が23日、18年ぶりに来日した。世界をけん引している

大統領としては、常に世界中の紛争や経済摩擦問題などで頭の中は一杯

なはずである。特に極東アジアの当面する最大の課題は日中韓の歴史問

題と人権問題であろう。戦争の発生は大して心配していないはずである。

まず、米中間の全面戦争は絶対にしない、という米中間の確約がある

からである。また、北朝鮮が韓国に侵入するような全面戦争は中国が抑

止する、韓国が北朝鮮に侵入する場合は米が抑止するという確約もある

はずである。さらにロシアと日本が戦争するという可能性も0に近い。

問題があるとすれば、領土をめぐる日中、日韓関係であるが、小競り合

い程度の軍事衝突が発生する可能性があるものの全面的な戦争にはなら

ない、という見通しを持っていると思われる。これも米中間で確認ずみ

のことであろう。一方、中と比・インドネシア間の領土問題も全面戦争

は避ける、という米中間の確約があるはずである。

 このように冷静に判断、分析すれば安倍政権のいう「集団的自衛権」な

どは米にすれば、大した問題ではないはずである。米があえて日本に期待

するとすれば、給油などの後方支援と資金援助ぐらいなはずである。日本

政府が独り相撲を取っているように見える。

 一部のマスコミ報道によれば、オバマ大統領は日本の集団的自衛権を歓

迎するものの、安倍政権のもとでの集団的自衛権は歓迎しない、と報じら

れている。日米同盟に名を借りた安倍政権の戦争思考を見透かしているか

らだと思われる。これも米中間の共同認識なはずである。

 オバマ大統領にすれば、日中、日韓関係がスムーズにいってくれなけれ

ば困る、というのが本心であろう。その一番の問題点は日本の歴史認識に

ある、と大統領は見ているようである。その本心をあえて出したのは、慰

安婦問題を「ひどい人権侵害だ」、さらに「安倍首相と日本国民は、過去

を正直に公正に理解する必要性を認識しているだろう」と韓国で発言して

いる。これはあくまでも米日韓の相互理解による確固たる同盟強化と、中

国への配慮を示したものと思われる。日本はドイツのような真摯な戦争の

総括をするべきだ、という本心を大統領は云いたかったのではなかろうか。

 世の中、最悪の倫理違反は殺人であり、次に悪いのは人権侵害であろう。

それ以外は許されてしかるべきであろう。