ーー エコノミック アニマル の誤算 ーー
ウエブの英語塾広告で、下記のような二つの文句が太文字で冒頭に出ていたのが目に止まった。
『 列島の語学 ビジネス市場規模 5 千億円 ( 世界 No.1 ) . にもかかわらず、世界 214 ケ国中 197 位の英語力しかない日本人 』
『 英語は金で買えると思っているバカ 』
共に、列島の語学学習諸子が、銭儲けの犠牲になっている事を示唆する文句である。
今のところ、銭儲けの犠牲になっているのは英語である事が、下記のウエブ検索の記事件数の数字を見れば分かる。
元気ですか 585、000 件
チャル チヨネ ( 韓国語 ) 556 件
你好嗎 1、490、000 件
How are you 741、000、000 件
共に、簡単な挨拶言葉に関する記事なのに、英語だけ、このように件数が異なり、How are you 一言だけで、億単位の記事件数があるのは、何を意味するのか、英語学習諸子は考えてみる必要があるだろう。
エコノミックアニマル ( economic animal ) という、日本経済高度成長期の流行りだった言葉がある。昭和40年(1965)、パキスタンのブット外相が日本の経済進出のあり方について言ったもので、経済的利潤の追求を第一として活動する人を意味する。
書籍や塾で習っても、英会話が一向に上達しない人が、『お金で、英会話が買えたらなあー』と嘆くのを、良く耳にする。お金万能とは言うものの、お金で買えないものは世間に沢山ある。その一つが語学である。
米国人なら、誰でも英語を話す、日本人なら、誰でも日本語を話すが、月謝を払って覚えたものではない。なのに、中、高、大を通じて、十年ほど、折角学校で習った英語を使わずに、改めて、塾に通い、書籍を買い込んで英語を習おうとする、列島の「ヘンてこ」な語学の在り方は、極めて不思議な「日本」として、外国人の目に映る。
ヨーロッパ人は数ケ国語を話す人が多い。特に、ドイツ人の英語力は、日本で良く話題にされる。ウエブで目に止まった、在独日本人の素直な話を挙げて見る;
『 HDで男女4人組に飲みに誘われて行動を共にしていたとき、彼らは当然ドイツ語が母語ですがドイツ語だと私が理解できないだろうということで次の瞬間、全員が私にも分かるようにと英語で話し始めました。私を囲んでドイツ人同士も英語で会話です。
ミュンヘンで出合ったウィーンから来た若者たちと英語で。彼らはWien ヴィーンといわずに英語読みVienna ヴィエナと使い分ける。
我々日本人がこのレベルに追いつくのはいったいつになることやら・・・ 』
これこそ日本人が他国を見下す時良く口にする「日本では考えられない」という事そのもの、いや、全く、列島では、想像も出来ない事である。
英語を習う、日本では「学習塾」に行くことが当たり前になっている。それで列島には塾が溢れ、その数 10、000 以上あるようだが。ドイツはどうだろうか。試しに、「ドイツの英語塾」をウエブで検索してみた所、ドイツには塾はない、という事が判明した。
塾の無いドイツで、人びとが英語を話すのに、塾氾濫の日本は、「英語音痴」で有名であるなら、「学校での勉強が十分ではないから、塾に行く」という日本の考え方の合理性は多いに疑問視されるべきであろう。
又、10、000 以上の厖大なる数の、塾、会話教室、個人教師などなどの存在が果たす役割は何か、という疑問を、日本人は考えて見た事があるのだろうか。
英語が始めて日本に上陸したのは、今から百数十年前で、以来、日本人は英語に熱狂し、英語塾は、雨後の筍のように繁盛し、今日に到っている。なのに、未だに、日本人は「英語音痴」から脱っする事が出来ない。「学校での勉強が十分ではないから」が、原因でないのは、はっきりしている。
How are you の一言は、中卒以上の日本人なら、とうの昔に、学校で習い覚え知っている。所が、信じ難い事に、日本のウエブに、How are you の一言を教える広告記事が億単位犇 ( ひし) めき合っている。尚且つ、他国の言葉であるHow are you を「死語」だと決め付ける塾や教師すら居る。なぜ? それが、手段を選ばない商い合戦の広告であるのは言うまでもない。
ここで、改めて冒頭に書いた 二つの文句を振り返って見る。
『 列島の語学ビジネス市場規模 5 千億円 ( 世界 No.1 ) . にもかかわらず、世界 214 ケ国中 197 位の英語力しかない日本人 』
『 英語は金で買えると思っているバカ 』
この二つの文句は、事実を有りの侭 ( まま) に述べたもので、嘘偽りもはったりも無い。
日本人の語学音痴は、『英語は金で買える』という誘惑の罠に嵌まった為である事が、過去百数十年続いた「音痴」歴史が証明している通りで、ならば、どうすれば改善は可能になるか、という問題に答えるならば、「心と口を開かない限り」列島外語学の進歩は望めない、と苦言を呈するしかない。
心を開いて、外国人と屈托なく付き合い、誇りと恥を捨てて、気軽に、下手な英語で話かけるように努める。しばらく恥をかいている内に、英語が話せるようになり、驚きを感じるのは間違いない。
誇り高い日本人だから、それは出来ない、と言うのであれば、残念だが、英語に留まらず、外国語の習得は諦めるしかないだろう。