ロシア日記

~ペルミより愛を込めて~
日本語教師と雪のダローガと足跡

~サンクトペテルブルグ~
雪の上の足跡

優しいひと

2019年10月03日 | 日記
 ロンドンで過ごした息もつけないような2年間の日々が、いつかいい思い出に変わる日が来るとはあの頃は露ほども夢にも思いませんでした。そして、あの頃の日々がいい思い出に変わろうとしている今、ふと、懐かしくあの頃過ごした家の近くの通りや街角が脳裏に浮かび上がってきてびっくりします。素敵な人に会えたのも、あの街です。

 沖縄に生まれたMさんは、クリスチャンを信奉する家庭で育ち、イスラム教を選び取りました。現在は、アルジェリア人の旦那様と出会いロンドンで暮らしています。その彼女にロンドン大学で会い、言語学部の博士課程である彼女に、論文の書き方を一から教わりました。何から手をつけていいのか、誰に教わったらいいのか途方に暮れていた私に手を差し伸べてくれたのは彼女です。寮と大学院がすべての往復であった私に、世界は様々なことで苦しんだり喜んだり動いたりしているんだという自分以外の状況を認知する視野はなくなり、学費と今までかけた労力と時間がこの論文を終わらせないことにはまったくの無に帰してしまうという世界の終わりのような危機感でがんじがらめになった私にとって、彼女は天から舞い降りたような一筋の希望の光でした。
 そんな思いとは裏腹に、彼女は当たり前のように、私の執拗すぎるメールでの質問の嵐にも大学構内でも時間を作っては丁寧にわかりやすく返答してくれました。あの時から論文の構成、書き方、考察の意味などが腹落ちしてき、どうにか終わらせられそうな私にとっては希望以外のなにものでもない光が見えてきました。
 
 今でも季節のGreeting cardsの交流があります。自分が落ち込んだり、人を傷つけてしまったかもしれないと後悔するとき、彼女の優しさと人のために労を惜しまない寛大さを思い出し、誰に誓うでもなく、彼女のような人になろうと思い直すのです。

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