【情報】

諸説さまざまあり過ぎて、一体何が真実やら解らない。
地球の温暖化すら、実は誰かが流したデマなんじゃないだろうか?
そんな風に思ってしまうのは、現代の「情報」に対する真っ当な感性の持ち主であろう。
だれもが、CMの誇大広告に嘘をつかれ、ニュースにイデアを吹き込まれては裏切られ、マスメディアに踊らされてきて、辟易(へきえき)としている。
そして事実、多くの歴史はねつ造された情報によって世界戦争や世界恐慌へと導かれ、その度にデマの流し手にとって有利な社会構造が採択されてきた。

だが、情報の真偽を問うまでもない。僕らの肌は、環境の異変を日々、感じ取っている。
これは隠せない事実だ。

TRUST YOUR SENSE。
宇宙から生まれた自分の感覚を信じて、その手その目で確かめにいくしかない。旅に出よう。
自分自身が1次情報になるしか、ない。

そう思って、現在進行形の原発紛争の地、山口県上関町祝島を訪れたのは7月だった。
島に残る、人間の本来の暮らし。当たり前の幸せが其処此処にある、人の温もり。自然の恵み。
背伸びが当然の志向になって居る都会の暮らしを反省した。
そのしわ寄せを彼らが負う事の理不尽は、万人が理解しなければならない。


そして、そこで出逢った虹のカヤック隊の「ランボー」を介して紹介してもらった繋がりから、10月に愛知でCOP10が開催されることを知った。

原発の問題というのは、戦争ビジネス、金融至上主義経済、世界的な貧富の格差拡大、世界的搾取システム、等といった現行社会の問題点と大きく通じる問題であり、これは「価値観」の争い、「信条」を巡る意識の戦争とも呼べるだろう。

簡単に云えば、「金」を優先する価値観と「大地」を優先する価値観のぶつかり合いだ。

だが、大地なくしては、金など何の役にも立たない。優先事項はハッキリしている筈だ。



【行き着くところは「開発問題」】

『六ヶ所村ラプソディー』で青森県六ヶ所村の高レベル核廃棄物の再処理工場を巡る地元のあまりに長く複雑な軋轢を鮮烈に描いた鎌仲ひとみ監督。彼女による最新のドキュメンタリー『ミツバチの羽音と地球の回転』。

この映画に登場する実在の祝島島民たちは、自然を敬い1000年前から守って来た島の暮らしに大きな影響を与える3キロ沖合いの原発建設計画に30年間近く、反対を続けている。

反対派住民との「話し合い」による合意がなされて居らず、ただ多数決による町議会の議決をもってして「合法」的に工事を推し進めて来た電力会社、町、県、そして国。強引な工事の進行を、漁船やカヌーで体当たりして「非合法的」に阻止しなければならないことも多々ある。進めるほうは給金を貰っていて、阻止するほうは漁を投げ出して命がけである。

ノラリクラリとした責任転嫁と長大な時間と膨大な資金を投下して、町そのものが変えられて行く。反対と賛成の二項対立に陥れられた住民たちは、家族や親族の関係までズタズタに引き裂かれて、疲弊していく。

目がくらむような補償金を積まれて、多くの漁師が海を売っていった。

ーどうせ漁は続けていかれる。放射能で海は汚れないと電力会社があれだけ云ってるのだ。それなら、貰えるものは貰っておこうじゃないか。

細々と暮らしてきた人々に数千万円といった補償金が突然差し出されたら、翻意する人の居るのは当然だろう。問題なのは、そうした電力会社のやり方であり、それを容認し支援する「原子力立国政策」である。

地域住民がその成立の過程に携わることも許されていない法律や条例に従って降りる開発許可。
開発に抗おうとした地元の人々は、警察も、自衛隊も、裁判所も、マスメディアも、全ては大きな権力のために存在するのだという事を痛いほど思い知らされる。

そしてこれは、原発に限らず「開発」と名の付く現場のほとんどで起きて来た事なのだ。

「経済」を優先する論理やイズムが、「大地」や「暮らし」を尊ぶ少数の意見を押しつぶして行く。

余り語られてこなかった、そして実はありふれた近代日本の姿が其処に見えてくるのである。

掘られたトンネルの数だけ、作られたダムの数だけ、埋め立てられた湾や浦の数だけ、建てられた大規模マンションの数だけ、こうした話が存在する。
主に多くの都会の人々は、僻地(へきち)で起きる悲劇に、極めて無頓着なまま、しっかりとその上にあぐらをかいた生活を断固として継続しているように見える。



【ホットスポッターズミーティング】

生物多様性条約締結国による会議2010年@愛知。通称COP10。
まったく環境に優しくない日本でこの会議を開く事に抗議する大規模デモがドイツで起きたくらい、世界の関心は高い。

3週間に及ぶ会期に、様々な環境対策の指針が採択され、各国に持ち帰られて反映されていく。

これにちなんでNGOやNPOによる大小、膨大な数の報告会や会議が開かれていく。

10月23日(土)午前
国内の、開発現場で環境破壊の阻止のために活動するホットスポッターたちが集って報告会を開くというので、愛知芸術文化センターでのライブの翌朝、眠い目をこすって出席してきた。

    (愛知学院大学の会議場にて)

【もう闘うことをやめよう】

各地の活動家たちが、おざなりではない、切実かつ冷静な、熱い議論を繰り広げた。

高尾山の生物多様性保護のために活動している 虔十の会(けんじゅうのかい)代表・坂田さんが司会を務める。

会議の向かった先は「もう、闘うことをやめよう」。

長くて数十年を闘って来た各地の活動家たち、地元は、もう心身ともに疲弊してボロボロになっている。

だから、賛成や反対という二項対立に陥ることから脱却して、いかに互いが共通の目的を目指していくかを考える。
(実はこの「闘うことをやめよう」、「二項対立に陥ることをやめよう」というテーマは、この旅の終盤に訪れる沖縄・辺野古の基地建設予定地でも大切な要素となる)


・反論して責め立てるばかりではなく、行政の立場に立って提案をし、共に答えを目指す。
・雇用と生活を開発に頼る現実にも目を向け、代替の案を提示する。
・自分たちの意になるべく近い政治家を頼っては裏切られるのならば、自分たちが地方政治に出馬すれば良い。
・同じ様な活動を行う各地域が、もっと繋がり合うネットワーク作り。

よりクリエイティブな自然保護活動へのシフトという、ネクストステージへ踏み込む強い意志が顕われた会議だった。


「洪水対策」をうたって利権目的で受注されるダム工事。日本中で3000近いダムがあるという。本州に、ダムの無い河川は存在しない。そして、ダムの必要性は昨今、論議の的となっている。つまり、「工事」そのものが目的化しているのではないか、と。

今回の会議の採択した指針によれば、此処で反対派住民がとるべき行動は、行政に「ダム工事反対」と突きつけるのではなく、「洪水を防ぐ」という共通の目的を共有することである。この共通の目的に沿ってリサーチすれば、ダムが洪水の対策にはならないことがすぐに解る。実はダムは洪水を増やしている。数万年、数十万年の自然の造形に従わない「治水」などあり得ない。

問題は、これらのダム受注の利権で生活を営んで来た人々のことである。だがこれも心配要らない。必要のないダムを自然の河川に戻す事業は、ダムを作る事業の10倍コストがかかる。自然を「壊す」から「作る」土木事業へ。それがこれからの公共事業だ。そのためになら、僕も喜んで税金を払おう。


チベット問題に関心を払っているような意識の高い人になら、知ったら放っておけないが全くニュースに載っていないこれら数えきれないほどの開発問題に、目を向けてほしいと思う。ツイッターを始めとする自由な市民メディアには、こうした情報ソースは溢れている。小さなチベット問題が、山ほど存在するのが此の列島であり、知らず知らずそれらは全て僕らの生活様式と密接な因果関係を有している。

そして、象が蟻を踏みつぶすようにして大きな権力の下敷きになってきた地域住民たちにとって、黙視し容認してきた大多数の国民と彼らの血税こそが、もっとも強大な象の本体である。

我々は今一度、常に「成長し続けなければならない」経済を優先した社会構造を、反省しなければならない。

絶望的な状況の中で諦めずに闘って来て、尚かつ人生に朗らかさを失うまいと務める人々の野草のような逞しさに逆に勇気をもらいつつ、会場を後にする。


午後から名古屋市内を巡るパレードに参加するということで、前日のライブを共にしたタケル(AMBASSA)らと市内の公園へと向かった。

(つづく)


三宅ブログ | コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )

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コメント
 
 
 
Unknown (Unknown)
2010-11-11 21:09:07
いぇー!レポ待ってたよー。

そうか、fight the power や fight for your rights の時代ではないんだね。

unity だ。

喧嘩や言い争いも必要だが、非暴力で相互理解を目指す。

one love って色んな人が言う地球規模の大きな1つにだけじゃなくて、各地に小さな one love コミュニティがあればいいんだよなぁ。

うん、無料で登録した人達の見聞きしたリアルな情報の方が今は信頼できる。

続きも楽しみに待ってるよー。
 
 
 
核融合発電 (Unknown)
2010-11-11 21:50:32
究極のクリーンエネルギーは「核融合」らしい

水素やヘリウムなどの軽い核を使い、それを分裂させるのではなく融合させる。融合させるとエネルギーが出る。これは太陽が燃えるのと同じ原理です。

実際、高レベル核廃棄物はまったくでない…が、低レベル核廃棄物は出る…らしい
まだ原発よりは安全だと思います

ただ、研究開発に最低あと30年かかると言われてます。
各国でバラバラにやっていたのではダメだということで、世界的な共同研究施設ITER(イーター 国際熱核融合実験炉)がつくられてます。

核融合に必要な燃料は水素とヘリウム、海水から取ることができるのでかなり環境に良いと思われます。









 
 
 
Unknown ()
2010-11-11 23:27:41
チベットの問題とは全然違うと思います。
同じレベルで考えるのはどうかと思います。
 
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