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マリ大統領選挙の結果~そして復興へ。

2013-08-19 07:30:35 | アフリカ情勢
8月11日(日)に投票が行われたマリ大統領選挙の決選投票。15日、内務省シンコ・クリバリ大臣により最終結果の公式発表が行われた。公式には憲法裁判所の結果の承認手続きが残るが、実質的にはこれでいったん選挙ステージが終了を迎えたといっていい。それではここで、主なポイントをレビューしておこう。

(選挙結果公式発表の様子)



◆結果のあらまし
【選挙結果】
登録有権者: 6,829,696名
投票数: 3,033,601票
無効票数: 92,920票
有効票数: 3,033,601票
投票率: 45.78%

IBK氏: 2,354,693票(77.61%)
スマイラ・シセ氏:679,258票(22.39%)


下馬評でも予想され、また選挙後もすでに広く報じられているように、イブラヒム・ブバカル・ケイタ氏(通称'IBK')が圧倒的な強さを見せて勝利を飾った。これは、第1回目投票で立候補し、ここで第三位以下となった25人の候補のうち、実に22人がIBK支援に回ったことからも、当然の成り行きといえる。

また雨期、ラマダン明けの投票日、国内各所では豪雨に苛まれたものの、46%近い投票率となったことは、国民の関心の強さを示すもので、高く評価できる。


◆賢明で勇気ある敗者
決選投票前には、対抗候補のスマイラ・シセ氏陣営より、今回の選挙で多くの不正が行われているとの糾弾があり、選挙の正当性や、結果を巡る紛争に発展するリスクが危惧された。しかし、決選投票後、IBK氏の当選確実がデ・ファクトとなってくると、フランス国営放送ラジオの取材に応え、結果を受け入れ、IBK氏の成功を祈念する旨表明。賢明な態度にマリ国民、そして国際社会は胸をなでおろした。並行で進んだジンバブエの選挙は対照的だった。

想えば、コートジボワールは2010年の大統領選挙後には、前職ローラン・バグボ氏が選挙結果を認めずに内戦に発展、惨事を生んだ(→こちら(http://blog.goo.ne.jp/nbote/e/983b814ad8c84f59797a9507166caa4f)を参照)。

このあとガボンでも2009年の選挙に敗れたンバ・オバム氏が、本当は自分が勝っていたと主張。ちょっとした混乱を産んだ。

そして2012年のセネガル大統領選挙でも、前職アブドゥライ・ワッド氏が結果を認めずに、「コートジボワール化」することが懸念されたが、セネガル国民と国際社会の圧力を前に、敗北を認め、平和裏な政権移行が実現した。

今回の選挙でもこのような事態が危惧された。国際社会は不完全ながらも選挙を早期に実施することを重視し、選挙結果に有効性(Legitimit�)を持たせるための「仕掛け」を組み込んだ。選挙の徹底的な監視、生体認証を含む選挙人や開票の管理、右に基づく選挙評価の早期声明などがその例だ。不正や有効性への疑問に対する「抑止力」とするためで、最近のアフリカにおける選挙支援のトレンドとなっている。

いずれにせよ今回、シセ氏が結果を受け入れ、平和裏に政権が移行する道筋が立ったことは、復興に向けた大きな前進である。国際社会も一様に高く評価している。


◆次なる政治課題
今回の選挙結果を受け、マリは国家の再統合と当地の回復、復興支援に向けて力強く踏み出していくこととなる。
ここにおいてマリの政治基盤確立は大きな前提となる。主に3つの点を挙げておこう。

第一は、組閣である。先述のとおり、決選投票ではIBKに対して22の候補が選挙協力を行った。これらのステークホルダーへの利益配分と、安定的かつ実務的な組閣を両立することは、なかなか難しいパズルである。

第二は、アマドゥ・サノゴ派の処遇、つまり2013年3月の政変を主導した軍部の帰趨である。選挙終了の3日後、しかも選挙結果公式発表の前日に、閣議においてサノゴ「大尉」の「将官」昇進が閣議決定された。客観状況から見て、これはトラオレ暫定大統領の単独の決断でないことは想像がつく。もともとIBKはA.サノゴ派とは近い距離であることが報じられてきた。人権団体は「恥ずべき決定」として糾弾している。

なんとかここまで押し進めてきた「民主的な選挙」。新政権が「汚点」、もしくは見えざる影響力の中でスタートを切るような格好になることは、望ましいことではない。

第三は、トゥアレグとの関係である。今回の選挙からは距離を保った北部トゥアレグ勢力であるが、交渉相手としてIBKは「上等」だと見ている。独立や自治、優遇政策など具体的な交渉に入る前に、交渉や国民対話の枠組み、トゥアレグ勢力の代表性(prpr�sentativit�)など、入り口部分ですでに課題を残す。いずれにせよ新政権は組閣後60日のリミットの中で、交渉に入ることが求められている。


◆おわりに
大きな課題を抱えつつも、一つの障害を乗り越えて、新しいステージの入り口まで来たマリ。マリ国民も、国際社会もマリが足踏み、後ずさりすることは望んでいない。再び涙と血を流す事態は避けなければならない。

そのためにも、この地域で起きていることを、無関心の中にうずめてはいけない。我々が関心を持つこと、そのものが十分大きなモラルサポートになるのだ。

(マリの市場。いち早い民生の安定が望まれる。Wikip�dia version fran�aiseより。)


(おわり)


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