丹波明 Concert Portrait

2012-11-27 | 音楽
昨日(27日)はオペラシティーリサイタルホールで丹波明さんの Concert Portriatを聞いた。

丹波さんはこの前から日本に滞在中である。来年3月に東京でカルテットの新作を弾くことになっている。
昨日コンサート前にその楽譜を頂いた。
コンサートは「邦楽聖(ひじり)会」の演奏で全て邦楽器のための連作"Interférance" の
1、4、7、8、9番。全て「聖会」の委嘱作品。1番の1980年作から、9番の新作初演曲まで。
聞きながら、自分がこれから書かなければいけない曲の事が頭にだぶってきてたいへん刺激になる。

特に7番(3本の尺八)と9番(尺八と三味線)は大変刺激的な素晴らしい曲に思えた。
他の3曲もそれに劣らずと言いたいが、1番(尺八、琴、三味線)はなんとなく模索、逡巡が感じられる曲だった。
聞きながら、尺八と三味線は何とか書けそうな気がして来る。
三味線は特に弦楽器、音域もチェロに近いのでわかりやすい。
琴はその点、弦の数が多く、様々な可能性が高い楽器でかなり勉強しないと書けそうにない。
昨日の演奏でもそういう工夫が凝らされた部分が多かった。

現代の邦楽演奏家は大抵の方が西洋音楽記譜法で読み書きなさるのでその点では全く問題がないと
丹波さんもおっしゃっていた。
それのみならず、ああしたらどうか、こうした方がいいんじゃないかと、並の西洋音楽家(?)
なんかよりずっと意欲的だとおっしゃっていた。

5人の奏者はどなたも大変素晴らしかった。音が素晴らしい。
特に琴の後藤すみ子氏は経歴を見ると1954年芸大卒と言うから、僕の生まれた翌年の卒業という
ことでご高齢であるが、確たる演奏姿勢に感銘を受けた。

遠い叫び声の彼方へ 武満徹の音楽 を聞いて

2012-11-27 | 音楽

やっぱりまいる、この人の音楽はみんなまねしようとしたけど誰も出来ない音楽だと改めて実感させられた。
その最たる物が何と言う事か僕にとってはアンコールの映画音楽だった。
題名は聞き取れなかったが半ば調性がはっきりしたメロディー的にはヘタをすると安っぽい音楽を
あんな風に書けるのっていったいどういうことなんだろう。タケミツしかいない。
オカリナや拍子木の効果音はまあお愛嬌と言うか、映画音楽だからサービスなのかなとも思うけど、
途中の弦楽器だけのパッセージはゾクゾクするようなハーモニー。

子供の頃NHK大河ドラマ「源義経」のテーマ音楽を聞いたときの衝撃をまた思い出した。
そういう傾向は晩年の「Family Tree」にもあるし、プログラムの最後の曲「遠い叫び声、、、」
にも現れている。なんか、終わりの頃にタケミツはヤッパリトナールな音響にノスタルジーを感じていたんだろうか。

東フィルもこの最後の曲では凄くのびのび弾いていたし、ソロの漆原啓子さん(多分初めて聞いたと思う)が素晴らしかった。
解説にこの題名について「性的恍惚のイメージが付随する」と書いてあったが、"Far call. Coming, far" は英語がよく解らない
僕でもその意味はフランス語に直訳しただけでわかる。
というかこの文章だけを読むと欧米人は普通はそんな風に想像するんじゃないかな。
ジェイムス・ジョイスと言う人の小説の一節だそうだ。こんなに俗っぽい口語文をこんなに美しい
詩的な日本語に訳した(変換した)のは誰なんだろう。タケミツ本人?

前半の「弦楽のためのレクイエム」「樹の曲」「地平線のドーリア」は正直言って少し退屈した。
曖昧なオケの動き、確信の無い音表現だったような気がする。「弦楽の、、、」はもっとエキサイティングな曲だったはずだ。
少し眠くなる。(ちなみにとなりの図体のでかい兄さんは前半は初めから終わりまで全てグースカ寝ていたが拍手だけは耳が痛くなるような拍手w)

このコンサートを聞きたかった大きな理由はもうひとつ、高橋悠治が弾くから。
やっぱり素晴らしかった。
僕が学生の頃の70年代からばりばりに活躍していた人だがちっとも衰えていない。

タケミツのピアノ曲は、も、さながら宇宙が出来上がる様を見ているような恍惚たる世界だ。
高橋悠治の今は亡き古き戦友へのHomageと言った感のある素晴らしいFor Away とLes yeux closでした。

11月23日 東京 文京シビックホール 

変な反論、、、っていうか反論にならない反論が多い日本

2012-11-07 | 東京日記
かなり旧聞になるが、坂本龍一の「たかが電気」の話でずっと気になっていた事を思い出した。
あのとき一番多かったと思う「反論」方法の物言いは、
「自分が一番電気の恩恵をこうむって商売しているくせに。だったらまず電気を使うのをやめてから、、、云々」
こう言うのを読んで何か違うといつも思っていたが、街を歩きながらやっと自分なりに納得できる回答が出たのでご報告したい。

この反論方法はまあ、聞く方読む方もあまり気分の良くない物言いだし、書いている方もただ、相手憎さか何か感情的なもので、
既に論議の態を成してはいないので反論する必要もあるまいと思っていたが、やはり違う。
こう言う言動ははっきり言えば危険ですらあるのであまり大手を振ってまかり通って欲しくない。

その理由は簡単である。
例えば健康保険の法律の改正案が社会的に論議されたとしよう。
賛否両論激しかったが法案が通過した。
さて、反対した人はでは改正後の健康保険を使う権利はなくなるだろうか。
あり得ない。民主主義とはそういうルールで動いている。

高速道路の建設に反対した人はその高速道路を一生使う権利がなくなるだろうか。
携帯電話の電波は人体に有害だから廃止を訴える人は、携帯電話を使用する権利がなくなるだろうか、、、

そもそも、そんなことを言ったら日本はおろか、世界中の殆どの国で原子力発電の賛否、正否に対して論議が不可能になる。
これは一種の言論弾圧指向の考えかたで、極度に非民主主義的と言える。

ついでに言うとこの手の論議のすり替え「論議」が日本の政界にはびこっている。
いや政界だけではないか。論議の下手な日本には井戸端会議から、町内会からこの手の論議だらけかもしれない。

消費税値上げ、育児手当、何でも良いが政府与党が出す法案に対していつも野党は(自民、社会の昔から)同じ文句。
「そんな事を今論議している時か、他にしなければならない事がいくらでもある、、、」式発言。
これも、論議のルール違反なのはフィンランドでは子供でも知っている。

フランス語ではこれを Amalgam と言う。


ジャズと林光

2012-11-01 | 東京日記
29日。青山のビルの地下1階にあるバーで知り合いの加藤アオイさんのピアノとヴォーカルのジャズを聞きに行った。
サックスは阿部川純一郎、ベース 藍沢栄治。いっぱい入っても30人くらいの場所だがこの夜は10人くらい。
でも来ている人は皆ジャズが大好きと言う感じの人ばかり。とっても楽しいひと時だった。
ジャズは基本的にアドリブの世界。譜面にかじりついて音楽をやっている僕はいつも羨ましさと、どこか後ろめたさを感じる。
バロック時代の多くの音楽はこうやって演奏されていた事を思うとクラシックプレーヤーはもっと見習わなくてはとおもう。
というか、自分は。
加藤さんのヴォーカルはかなり低めの(一番下は確かDくらいだった。美空ひばりや晩年のカラス並み)所謂ハスキー声。
加藤さんはなんとフランス語で2曲も歌った。ひとつは" pleurer la rivière"という曲。(多分)
もとは50年代の英語の曲で"Cry the river"かな?
80年代にフランスでヒットした曲らしいが、知らない。とっても良い歌詞で泣けました。
もう1曲はダリダの"Parole, parole"。初めてこの歌の歌詞をちゃんと聞いた。
そういう意味だったのか。無駄な「おしゃべり、おしゃべり」
ちょっと英語訛りなフランス語がなかなかでした。
ピアノがそして抜群。ラフマニノフばりの両手一杯の複雑なコードを弾くかと思えば、
右手の「うた」がキラキラ輝いたりして素晴らしい。
ベースの藍沢さん。本当に楽しんでいる。アドリブは聞き物だった。
終わった後3人の方としばらくお話した。

それにしても、ジャズってとおもう。
こうして毎日のようにその刹那だけの、二度と同じものが聞けない、演奏している人ですら2度と同じ物が出来ない世界って凄いなと思う。
どんなに凄いアドリブでも録音したり楽譜に書き留めなければその場で消えて行く世界。
なんと言うもったいない事なんだろう。
いや、だから本当のアドリブは生まれるのかもしれないが、、、、、

昨日は四谷区民ホールで「林光 男と女」と題したコンサート。服部真理子さん、女優の新井純さん、
オペラ役者と名乗る大石哲史(さとし)さんで「こんにゃく座」の出し物や、
林光の「ソング」、ピアノソロで「「もどって来た日付、ピアノのための12ヶ月」。

林光の独特の世界。和声はあっけらかんとするくらいオーソドックスだったり、
サティーや、クルト・ヴァイルが時々現れたり、ミニマリスムを思わせる「繰り返し」
の世界(たとえば「荷風のオペラ」の出だしは面白かった)が現れたり。
殆ど40年ぶりくらいに林氏の音楽を聴いたが、とっても楽しかった。

「荷風のオペラ」は抜粋だったが充分楽しめた。
女優の新井純さんは、失礼ながら決してお若くない方とお見受けしたが、なんとその艶っぽい演技。
盛りを過ぎた芸者の悲哀がしみじみと感じられた名演でした。

真理子さんのピアノが美しくて流石!
それと、「もどってきた日付、、、、」はハイセンスな林光の世界。
ベーゼンドルファーがもの凄く奇麗に響いていた。
真理子さんBrava!