今度の日曜の「展覧会の絵」特別コンサートのために書いた解説を一部掲載しました。
一般的に「輪唱」と言われているカノンは「カエルの歌」のように同じ音をワンフレーズずらして歌ったり弾いたりする音楽の事で、バッハの同時代者だったパッヘルベルのカノンは有名である。カノンはバロック時代以前から作曲技法として非常に厳格な理論がが要求される大変ペダンティックな音楽だったが大バッハの活躍しだした18世紀の初頭には既に殆ど廃れていた音楽だった。カノンを作曲する複雑さはちょっと考えていただければ理解できると思うが、一つの旋律を作曲し出した時、既に後から入って来るパートの音は決定してしまうのである。いっさい変更の余地はない。しかも「カエルの歌」や「パッヘルベル」は同じ音を追いかけて奏する「ユニソン(同音)」カノンだが、これ以外にも音の高さを違えて奏する2度、3度などのカノン、音の形を反対向きにする「反行カノン」など様々な技法がある。(2度のカノンとはたとえば第1声部が「ドレミ」だと第2は「レミファ」となる。反行カノンは「ドレミ」に対して「ドスィラ」となる)しかもその動きは一音たりとも違えてはいけないのみならず、当然の事だが聞くに堪えうる音楽にならなければならない。そういう意味ではカノンの作曲は音楽というよりある種の知的パズルの要素が多く、見事に書かれていても退屈な音楽になりやすい。
大バッハが「音楽の捧げもの」を作曲した1747年頃は聖トーマス協会のカントールとしての仕事も毎週カンタータを作曲しなければならなかった頃に比べると、義務としての作曲は殆ど必要なくなりかなり自由な環境にいた。バッハは若い頃からフーガやカノンに対して、理論的挑戦に強い興味を持っていたようだがこの頃になってそういう種類の作曲を多くし始めた。契機になったのは「ゴールドベルグ変奏曲」の作曲依頼があってからで、バッハはここで30の変奏曲のうち9曲をカノンに当てている。バッハはそこで「同音」カノンから始めて2度、3度、から9度のカノンまで至り、しかもその中には「反行」カノンなども含めるという離れ業を行った。さて、バッハのカノンは退屈な音楽か?答えは否である。この曲を聞く人は必ずしもカノンである事を知っている必要がないし注意して聞いていないとカノンだと解らない事も多いだろうと思うが、これら9曲のカノンは技術的に完全であるばかりか音楽そのものが大変美しいのである。殆ど音楽史上の奇跡と言えるくらいだ。
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一般的に「輪唱」と言われているカノンは「カエルの歌」のように同じ音をワンフレーズずらして歌ったり弾いたりする音楽の事で、バッハの同時代者だったパッヘルベルのカノンは有名である。カノンはバロック時代以前から作曲技法として非常に厳格な理論がが要求される大変ペダンティックな音楽だったが大バッハの活躍しだした18世紀の初頭には既に殆ど廃れていた音楽だった。カノンを作曲する複雑さはちょっと考えていただければ理解できると思うが、一つの旋律を作曲し出した時、既に後から入って来るパートの音は決定してしまうのである。いっさい変更の余地はない。しかも「カエルの歌」や「パッヘルベル」は同じ音を追いかけて奏する「ユニソン(同音)」カノンだが、これ以外にも音の高さを違えて奏する2度、3度などのカノン、音の形を反対向きにする「反行カノン」など様々な技法がある。(2度のカノンとはたとえば第1声部が「ドレミ」だと第2は「レミファ」となる。反行カノンは「ドレミ」に対して「ドスィラ」となる)しかもその動きは一音たりとも違えてはいけないのみならず、当然の事だが聞くに堪えうる音楽にならなければならない。そういう意味ではカノンの作曲は音楽というよりある種の知的パズルの要素が多く、見事に書かれていても退屈な音楽になりやすい。
大バッハが「音楽の捧げもの」を作曲した1747年頃は聖トーマス協会のカントールとしての仕事も毎週カンタータを作曲しなければならなかった頃に比べると、義務としての作曲は殆ど必要なくなりかなり自由な環境にいた。バッハは若い頃からフーガやカノンに対して、理論的挑戦に強い興味を持っていたようだがこの頃になってそういう種類の作曲を多くし始めた。契機になったのは「ゴールドベルグ変奏曲」の作曲依頼があってからで、バッハはここで30の変奏曲のうち9曲をカノンに当てている。バッハはそこで「同音」カノンから始めて2度、3度、から9度のカノンまで至り、しかもその中には「反行」カノンなども含めるという離れ業を行った。さて、バッハのカノンは退屈な音楽か?答えは否である。この曲を聞く人は必ずしもカノンである事を知っている必要がないし注意して聞いていないとカノンだと解らない事も多いだろうと思うが、これら9曲のカノンは技術的に完全であるばかりか音楽そのものが大変美しいのである。殆ど音楽史上の奇跡と言えるくらいだ。
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