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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

いざイノダコーヒーへ

2007年08月13日 | 
 先週の水曜日、京都四条烏丸にあるホテルにチェックインして少し休んだ後、家族と散歩に出た。行き先は、というと三条堺町の「イノダコーヒー」である。息子にとっての京都は、このコーヒー屋から始まっており、息子と最初の京都散策はまずはこの店から始まらなくてはならなかったのである。
 イノダコーヒーは京都の老舗コーヒー屋の一つであるが、わが家にとってこのコーヒー屋は、フォーク歌手の故高田渡の有名な《コーヒーブルース》に登場する喫茶店でもある。60年代のフォークソングの素朴なメロディーは覚えやすく、家でかかっているうちに子どもはすぐに記憶してしまった。そして小学校低学年から意味もわからず「三条堺町のイノダってコーヒー屋へね。」と繰り返し口づさむようになってしまった。息子にとってフォークソングの原点も高田渡であり、《自転車に乗って》や《コーヒーブルース》なのである。
 四条通りから三条通りへ向かいながら、まず息子に京都の道路の名称について教える。そして堺町通りに出ると、三条堺町というのが、「三条通りと堺町通りの交差する付近」であろうことを話す。二人で道路の標識を確認しあう。
 そして・・・イノダコーヒーに到着する。なんだか連れて行った親の方が感動してしまっている。しかし息子の方は結構冷静沈着、無言で店屋に入って売られているコーヒー豆などを黙って眺めている。
 さて後日、息子に感想を聞いてみた。
「高田渡の歌を聞いていたときは、もっと小さくて、安っぽい店だと思っていたんだけど、あんまり高級なお店だったので、少しぼくの考えていたイメージと違ったかな・・・」
 確かにそうかもしれない。私も最初にこの店に入ったときは、高級感あふれるたたずまいと、値段の高さに驚いた。なんとなく高田渡の庶民的な歌とのズレを感じたものだ。
 どちらにしても現場に行くというのは重要なことだ。私のような民族音楽学者が常に現場で音楽を学んだり、調査したりすることは当然のことだが、歌の歌詞に出てくる場所だけでも、あるいは石碑一つを見るだけでも、現場にいくことでそれまでの見方や解釈が変わるはずだ。
 私は息子をイノダコーヒーに連れていってよかったと思っている。それによって彼の持っていた高田渡や《コーヒーブルース》に対するイメージが変わったとしても、それはそれでいい。解釈するのは彼の自由だし、解釈するための素材は多ければ多いほどいイノダ。

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