チョッパーは、自らの意志でドクトル・ホグパッグと戦う事を選び、ロビンはその援護に回った。
同じ医師として、どうしても許しがたかったのだ。
だがボグバッグは、ゾロの影の入った侍ゾンビ「ジゴロー」と、サンジの影の入ったペンギンゾンビ「イヌッペ」を召還して、仲間達の力でチョッパーとロビンを取り押さえさせた。庭であった時は「女は死んでも殴らない」とサンジのポリシーを貫いていた「イヌッペ」も、今はロビンに蹴りかかって行くほどに、主人に忠実な兵ゾンビとなっていた。
捕らえられたチョッパーは、ホグバッグに食いかかった。
「・・・ここまで悪党だと気持ちいいくらいだ!ホグバッグ!!!今まで凄い数の人達の命を救ったお前を医者として本当に尊敬していた。ゾンビの研究だってそうだ。『死』は突然やってくるから・・”死んだ人”にも”残された人達”にも言い損ねた言葉がたくさんあるはずだ。たった数分だけでいいねもう一度死者を呼び起こす手段があるのなら・・・たとえそれが『邪道の医学』と石を投げられても、それで救われる人の気持ちはデカい。
だから”死者の蘇生”を研究しているというお前の言葉にやっぱりスゴイ医者だと思ったんだ。」
だが、ボグバッグには元々医者としての心構えなんてものはなかった。
天才であるがゆえに、いとも簡単に人を治せてしまうだけの事。
世界中からやってくる命の依頼を、日々面倒くせぇと思っていただけの事であった。
それを決定的にしたのは、大ファンだった女優シンドリーの死だった。どんな病気や怪我が治せても、死なれては手の施しようがないと途方もない脱力感に襲われた時に、ゲッコー・モリアと出会って、死者の復活と影の入れ替えに活力を見い出したのだ。
大好きだったシンドリーを生き返らせ、自分の命令をきく美しい女として、傍に置いた。
チョッパーの怒りは留まらない。 「お前は怪物を生み出しているだけだ!!!ゾンビの数だけ人間を不幸にしている!!!」
ホグバッグはシンドリーに、チョッパーを殺すように命じた。
ホグバッグの命令に従ってチョッパーを攻撃するシンドリーを、チョッパーは無抵抗で掴まえて説得した。
「止まれ!!あんな奴の言う事なんて聞かなくていい!!可哀相にもう死んでいるのに、残された家族がそれを知ったらどんな気持ちだ。一緒に生まれて育った”心”はもう死んでいるのに、体だけは人の言いなりに動かされるって・・一体なんだ!!?」
その疑問にホグパッグが答えた。
「認めろ!!これが人の永遠の夢だ!!人間は蘇る!!!」
だがチョッパーはそれを絶対に認めなかった。
「人間ならもっと自由だ!!!お前が一番人間扱いしてないんじゃないか!!」
シンドリーが兵として使えないとわかると、ホグバッグは「ジゴロー」と「いぬっぺ」に「邪魔者を消せ」と命じた。
ジゴローにとっての”邪魔者”はいぬっぺで、いぬっぺにとっての邪魔者はジゴローだった。
記憶がなくても、もともと相容れない性質である事は、かわらないらしい。
ロビンは咄嗟に機転をきかせて、ホグバッグを挑発した。 「この塔から私達に飛び降りろって言ってみて」
ホグバッグはお笑いで命じた。 「ああ、言ってやる!!二人揃って飛び降りやがれ!!!」
その命令に忠実に従ったのは、ジゴローとイヌッペで、二人は「はい!」と答えて塔から飛び降りて行った。
ホグバッグはもう一度シンシドリーに戦うよう命じた。だが、シンドリーは動かなかった。涙を流して「・・・体が動きません・・・涙が勝手に・・・」と体を震わせた。
魂の抜けた死んだ体にも意志があるかのようなこの奇跡に、チョッパーは驚いた。だがそれは誰にもわからない事。
チョッパーは逃げ出すホグバッグを羽交い絞めにすると、ロビンの助けを借りてその腐った頭を【ロビッチョ・スープレックス】でかち割ろうとしたが、もう少しのところで、魔人オーズの乱入によって邪魔された。
オーズはまっすぐに、ホグバッグとシンドリーのいる方へと歩いていき、そのままでは二人共オーズに踏み潰されてしまう。
ホグバッグは必死でシンドリーに命令を出すも、シンドリーはもう命令を聞くことはなかった。
シンドリーは最後の瞬間、チョッパーを見てにこやかに、美しく笑った。
ホグバッグとシンドリーは、ホグバッグ自身が蘇生させたオーズに踏み潰されて、その姿を消した。
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