李登輝と深田祐介の対談が、「諸君」4月号に載っている。ちょうど私が同誌で李登輝の「変節」を指摘してからほぼ一年後のめぐり合わせだ。これについてろくに記事を読んでもないであろう李登輝信者が台湾の声や掲示板などで「諸君は李登輝を中傷する文章を載せたが、反省したのか?」などと書き込んでいたが、実際に「諸君」の記事を読めば一目瞭然なように、李登輝は明らかに馬英九を擁護し、謝長廷とは距離を置こうとしている。
台湾でも4日に話題になったが、どうも最初の中央社電の翻訳が間違っていたからか、「謝長廷が落選したら、台湾の民主主義は20年後退する」と報道され、それが一人歩きして、謝長廷陣営が喜び、馬英九が渋い顔をする事態となった。
ところが、原文p43を読めば明らかなように、李登輝は謝長廷について「謝さんがあっさり大差で敗北してしまえば、台湾の民主化は20年遅れてしまうでしょう」といっている。これは裏を返せば(謝長廷が小差で負ければ民主化の後退にならない)といっているに等しい。
その証拠に「しかし、馬さんを僅差で追い上げられれば、両党の旧勢力が一掃され、大幅に世代交代が進む可能性があります」とある。ここで「追い上げる」というのは両方の意味に解釈できるが(これが李登輝のズルイところ)、僅差といっているので、「僅差で負ける」という含意だろう。いずれにしても、李登輝は謝長廷が負けると思っている。しかも「大差で負ける」ことは現実には絶対有り得ないシナリオなので、僅差で負けても台湾の民主主義は守られる、と宣言しているに等しい。
さらにp41-42には、馬英九が「反日親中」という「短絡的見方は間違い」と断言し、むしろ馬英九は親米だといい、謝長廷のほうが胡錦涛にとって望ましいかのように指摘している。
馬英九は大中国主義者であるが、古いタイプの反共主義者で、中国共産党と直接のパイプは思われているほどはなく、米国とのパイプが太いというのは、馬英九が米国のグリーンカードを所持し、英語が中国語以上に流暢なことからも明らかだし、無能な馬よりも策士の謝長廷のほうが中国にとっては「やりがいがある」ことも事実だが、ここで「諸君」という反共主義の雑誌において、しかも反共主義者の深田にこういう指摘をしている点で、「謝長廷はむしろ親中で、馬英九のほうが親米で親日だ」という印象操作を行おうとしているように見受けられて、非常に悪質だ。
とはいえ、李登輝は日本における親台湾派がいまだに古い反共主義にあると勘違いしている点は、李登輝の明らかな作戦ミスだろう(やっぱり老いぼれだ)。李登輝が中国が恐ろしい国で、敵対するのは避けるべきだといっているくだりや、馬と謝への評価など重要なくだりには、深田も驚きを表明していて、深田(および諸君の読者)をペテンにかけるには至っていないように見える。
民進党政権の8年間で、国民党が連戦や馬英九など反日の指導者を戴き、民進党が親日政策を進めた結果、日本における親台湾派はかつてのような「反共なら蒋介石とも結ぶ」という「反共親中国(中華民国)路線」から、大中国主義そのものへの不信と嫌悪に変質したことをおそらく李登輝は理解していないのだろう。情報化時代になって思潮や時代の変化は激しくなっている。1990年代までの李登輝が親しんでいた「蒋介石マンセー」式の日本人の反共主義親台湾派は、影を潜めているのが今の日本の実態だ。それには、中国そのものの軍事的台頭、環境汚染の輸出、横暴な態度が根底にあって、いまや日本では右左問わず、「中国」そのものが悪のシンボルになっているのだ。
そして民進党は政権をとってから8年間、日本語ホームページやニュースレターを開設したりして、徐々に日本社会での理解を得られてきた。
ここで李登輝が俄かに「大中国」の馬英九を「実は反共親米」で、謝長廷のほうが親中だと悪質な印象操作を行おうとしても、いまさら騙される日本人はいない。
日本人が李登輝に期待しているのは、すべての中国勢力に抵抗し、批判する親日で独立した李登輝なのであって、いまさら大中国の根っこをもつ国民党を褒める李登輝には、懐疑をもつだけである。
そこまで現在の日本の輿論は、「中国」(中共であろうと国府であろうと)に嫌悪感を持っているのだ。それが李登輝には理解できていない。
もっとも、李登輝がこれで馬英九を支持したともいえない。実は「勝ち馬に乗ろうと状況を見ている」のが実相だろう。今のところ、メディアなどでは馬英九が優勢に見えるから、馬寄りにしているだけで、実際には馬を積極的に支持しているわけでもない。
ただ一つだけいえることは、こういう醜悪な姿からは、どこにも「武士道」などうかがえない。
典型的なオポチュニスト、機会主義者、日和見主義者であって、李登輝は台湾および日本の市民社会の急速な変化によって淘汰されてしまった廃棄物というべきだろう。
私が望むことは、李登輝にはどうかこのまま勘違いしてもらって、できれば馬英九と国民党を支持してもらいたいと思う。
そうすれば、日本人の李登輝信者も目が覚めて、真の親台湾派が誕生するきっかけになるだろうし、李登輝なる老害が徹底して自滅していくことにもなる。それで新たな台湾、健全な日台関係が生まれる。謝長廷も下手に「京大の先輩」のしがらみと恩着せを考慮する必要もなくなる。
李登輝がいみじくも「両党の旧勢力が一掃され、大幅に世代交代が進む可能性があります」と語った旧勢力の最たるものは、まさに李登輝自身なのだ。
台湾でも4日に話題になったが、どうも最初の中央社電の翻訳が間違っていたからか、「謝長廷が落選したら、台湾の民主主義は20年後退する」と報道され、それが一人歩きして、謝長廷陣営が喜び、馬英九が渋い顔をする事態となった。
ところが、原文p43を読めば明らかなように、李登輝は謝長廷について「謝さんがあっさり大差で敗北してしまえば、台湾の民主化は20年遅れてしまうでしょう」といっている。これは裏を返せば(謝長廷が小差で負ければ民主化の後退にならない)といっているに等しい。
その証拠に「しかし、馬さんを僅差で追い上げられれば、両党の旧勢力が一掃され、大幅に世代交代が進む可能性があります」とある。ここで「追い上げる」というのは両方の意味に解釈できるが(これが李登輝のズルイところ)、僅差といっているので、「僅差で負ける」という含意だろう。いずれにしても、李登輝は謝長廷が負けると思っている。しかも「大差で負ける」ことは現実には絶対有り得ないシナリオなので、僅差で負けても台湾の民主主義は守られる、と宣言しているに等しい。
さらにp41-42には、馬英九が「反日親中」という「短絡的見方は間違い」と断言し、むしろ馬英九は親米だといい、謝長廷のほうが胡錦涛にとって望ましいかのように指摘している。
馬英九は大中国主義者であるが、古いタイプの反共主義者で、中国共産党と直接のパイプは思われているほどはなく、米国とのパイプが太いというのは、馬英九が米国のグリーンカードを所持し、英語が中国語以上に流暢なことからも明らかだし、無能な馬よりも策士の謝長廷のほうが中国にとっては「やりがいがある」ことも事実だが、ここで「諸君」という反共主義の雑誌において、しかも反共主義者の深田にこういう指摘をしている点で、「謝長廷はむしろ親中で、馬英九のほうが親米で親日だ」という印象操作を行おうとしているように見受けられて、非常に悪質だ。
とはいえ、李登輝は日本における親台湾派がいまだに古い反共主義にあると勘違いしている点は、李登輝の明らかな作戦ミスだろう(やっぱり老いぼれだ)。李登輝が中国が恐ろしい国で、敵対するのは避けるべきだといっているくだりや、馬と謝への評価など重要なくだりには、深田も驚きを表明していて、深田(および諸君の読者)をペテンにかけるには至っていないように見える。
民進党政権の8年間で、国民党が連戦や馬英九など反日の指導者を戴き、民進党が親日政策を進めた結果、日本における親台湾派はかつてのような「反共なら蒋介石とも結ぶ」という「反共親中国(中華民国)路線」から、大中国主義そのものへの不信と嫌悪に変質したことをおそらく李登輝は理解していないのだろう。情報化時代になって思潮や時代の変化は激しくなっている。1990年代までの李登輝が親しんでいた「蒋介石マンセー」式の日本人の反共主義親台湾派は、影を潜めているのが今の日本の実態だ。それには、中国そのものの軍事的台頭、環境汚染の輸出、横暴な態度が根底にあって、いまや日本では右左問わず、「中国」そのものが悪のシンボルになっているのだ。
そして民進党は政権をとってから8年間、日本語ホームページやニュースレターを開設したりして、徐々に日本社会での理解を得られてきた。
ここで李登輝が俄かに「大中国」の馬英九を「実は反共親米」で、謝長廷のほうが親中だと悪質な印象操作を行おうとしても、いまさら騙される日本人はいない。
日本人が李登輝に期待しているのは、すべての中国勢力に抵抗し、批判する親日で独立した李登輝なのであって、いまさら大中国の根っこをもつ国民党を褒める李登輝には、懐疑をもつだけである。
そこまで現在の日本の輿論は、「中国」(中共であろうと国府であろうと)に嫌悪感を持っているのだ。それが李登輝には理解できていない。
もっとも、李登輝がこれで馬英九を支持したともいえない。実は「勝ち馬に乗ろうと状況を見ている」のが実相だろう。今のところ、メディアなどでは馬英九が優勢に見えるから、馬寄りにしているだけで、実際には馬を積極的に支持しているわけでもない。
ただ一つだけいえることは、こういう醜悪な姿からは、どこにも「武士道」などうかがえない。
典型的なオポチュニスト、機会主義者、日和見主義者であって、李登輝は台湾および日本の市民社会の急速な変化によって淘汰されてしまった廃棄物というべきだろう。
私が望むことは、李登輝にはどうかこのまま勘違いしてもらって、できれば馬英九と国民党を支持してもらいたいと思う。
そうすれば、日本人の李登輝信者も目が覚めて、真の親台湾派が誕生するきっかけになるだろうし、李登輝なる老害が徹底して自滅していくことにもなる。それで新たな台湾、健全な日台関係が生まれる。謝長廷も下手に「京大の先輩」のしがらみと恩着せを考慮する必要もなくなる。
李登輝がいみじくも「両党の旧勢力が一掃され、大幅に世代交代が進む可能性があります」と語った旧勢力の最たるものは、まさに李登輝自身なのだ。