むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

日台学生会議で垣間見られた現代台湾・日本の学生の意識

2006-08-09 02:18:52 | 台湾その他の話題
第一回台湾・日本学生会議(日本側からすれば日本・台湾学生会議)が8月5日から10日までの日程で、台北市で開かれている。
台湾側のHPは http://homepage.ntu.edu.tw/~b94701203/tjsc.htm
日本側は http://www.jt-sc.com/

私も「文化認識」をテーマにした講演を頼まれて出席、その後の分科会討論も傍聴してきた。
実はこれは私自身も懐かしい。というのも、こうした日本・**学生会議の類は老舗の米国をはじめ、韓国、中国、フランス、インド、中東、イスラエル・パレスチナ、ロシア、トルコなど次々とできているが(なんとキルギスの話も出ているらしい)、米国に次ぐ歴史を誇る日韓学生会議は、実は私が学生時代に始めたものだからである(私だけで始めたわけではないが、少なくとも創立メンバーで、86年の第一回と87年の第二回は参加した)。
日米は宮沢喜一やキッシンジャーがOBということで非常に有名だが、私が創立時に参加した日韓はその後途切れることなく今年で21回目だという。私も歳をとってしまった(^^;)。
台湾側参加者は台湾大学が一番多いが、日本側はなんと秋田にある新設の公立で中島嶺雄学長の下ユニークな課程を採用している国際教養大学が一番多い。

まあそういう意味では「勉強のできる学生層」なので、すべての学生や若者に一般化することはできないが、それでも最近の若者の中の典型的な歴史認識とか対中観などがわかって面白かった。

対中認識を議論する分科会もあって、事前に双方で大学生にアンケート調査したものがあった。台湾は台湾大学、政治大学、淡江大学、長庚大学で回答数は80前後、日本は東京女子大学(でも参加者はいない)、ICU、一橋大学、国際教養大学(AIU)、立教大学が対象で回答数は140弱。まあ標本数が少ないのだが、こちらの想像したイメージもしくは実感として感じていることと結果はそんなに大きな狂いはないので参考になる。

中国への好感については、台湾が好感を持たないのが、「やや」と「非常に」をあわせて6割で、好感の38%を上回った。日本は好感持たないのが42%、持つが43%とほぼ拮抗でやや意外だが、どうも文化や歴史的なイメージも加味されているようだ。
また、台湾側は、中国が脅威かどうかについては、脅威と思うのが圧倒的で7割近く、中国の独裁政治を変えるべきかについては、圧倒的に「変えるべき」が多くて75%、靖国問題での中国の干渉についても「干渉すべきでない」が6割強と多く、理由としては「自分の国内をちゃんとするのが先決で他人のことに構っている資格などない」という手厳しいものが多い。
ただ、日本側は脅威と思うかについては5割ちょっと、独裁政治の変更については5割が「しょせん外国のことだから必要ない」と台湾よりも厳しくはないが、靖国の干渉については5割以上が反対で、賛成は3割弱だった。
面白いのは、台湾側は中国政治に厳しい見方をする一方で、対中ビジネスについて興味がある、ないがそれぞれ4割ずつと拮抗、文化的な関心があると答えたのは、6割強と多かった。日本側はビジネスに関心が7割以上で、文化も6割を超えた。
ただ、台湾側は中国の反日デモや日中の資源衝突については「他人事」であまり関心がないが、日本側では反日デモへの関心や反発は多かった。
ただ不思議なのは、「両岸危機への関心」は、台湾側は当事者なのに「関心がない」が4割強、「関心がある」が4割強にとどまった。理由は「どうせ関心を持っても変わるわけではない」という。日本人は心配性なのか関心があるのが5割を超えた。
今の学生の意識にとって鍵となる「台湾と中国を同じ国と思うか」については、台湾側は「同じ」がわずか5%だったのに対して、「違う」が87%を占めた。これは政治大学が同大学生1000人以上を対象に実施した調査でも9割前後で、今の台湾人の若い世代の傾向だといえる。
一方日本側では「違う」が70%だったが、「同じ」も18%にのぼった。

ここから総合的に考えられることは、台湾人も日本人も、中国に対しては政治的には警戒を持っているが、日本人については思ったほど強くもなく、かといってべったりでもなく、意外に醒めた目で見ているということだ(いわゆる有名大学生だからかもしれないが)。
台湾の若者の間で、中国への政治的な意味での反感が強まっていることは大方の調査と合致する。これは、「中国とは違う国」が9割前後に上ったこととあわせて見て、やはり台湾の若者の間では、台湾本土・主体意識が支配的になったことを示すものである。


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