あっという間に公開日となったが、実は、先々週、試写会で観てきたf(^^;)この映画。うん、悪くはない。
18世紀のイギリス。
アメリカのリンカーン、南北戦争、奴隷解放宣言(1863)・・・が起こる、80年も90年も前に、
ある歌が、生まれた。
「おどろくばかりの めぐみなりき
この身のけがれを 知れるわれに・・・」(旧聖歌 #229)
「アメイジング・グレイス Amazing Grace」(ジョン・ニュートン作詞、1772)。(←クリックすると、ややjazzバージョンのこの歌と、歌の由来へ)
この歌は、いろんなバリエーションをもって、様々なところで、歌い継がれている。聞いたことのある人も、少なくはないだろう。
その当時、黒人奴隷は、家畜以下の扱いだった。
ジョン・ニュートンはもともと奴隷貿易船の船長をしており、彼の航海の最中、2万人の奴隷が命を落としたという。あるとき、彼はそれを悔(く)い、牧師となり、そして、この歌が生まれる。
そして、彼を師事した一人、21歳にして下院議員となった政治家ウィリアム・ウィルヴァ-フォース(William Wilberforce、1759-1833)が、この映画の主役。
*************
映画は、37,38歳の、過労で身体を壊した中年男ウィリアム(ヨアン・グリフィズ)が、友人宅で静養を始めるところで幕開けとなる。
21歳で華々しくデビューした若い理想主義者は、その後何度も挫折し、仕事の激務とストレスの中で体を壊していた。
*************
(背景メモ)
当時、大英帝国(イギリス)は、奴隷貿易が盛んだった。
黒人奴隷はアメリカが有名だが、そのアメリカに黒人奴隷を供給していたのはヨーロッパの奴隷商人だった。
西インド諸島はその中継地。
18世紀、イギリスやフランスから銃器等の生産品がアフリカに行き、原住民と交換、そうして得た黒人を
西インド諸島に売却し、砂糖・綿花・タバコなどをヨーロッパに持ち帰る三角貿易が発展した。
奴隷たちは、プランテーションで、鞭(むち)に打たれながら、
サトウキビの収穫から砂糖の精製までの流れ作業のような、各現場に当たっていた。
疲労した奴隷が搾出(さくしゅつ)機に腕をはさんでしまう
という事故がよくおこり、腕を切断するための剣が 機械の脇に常時おかれていたという。
奴隷は、イギリスの港を経由することなくアフリカと西インド諸島の間で運搬されていたので、イギリス人たちは奴隷問題にまったく無頓着 人は、目の前で行われる悪徳には嫌悪するが、見えない悪(罪)については気付かないふりをし、必要悪として許容する。そんなことより、経済のほうが優先、と。
ウィルバーフォースたちの戦いは、この隠れた悪(罪)の実態を表面に出すことにあった。
こうした活動の原動力になったのがウィルバーフォースの信仰であり、
それを象徴するのが 映画のタイトルにもなっている賛美歌『アメイジング・グレイス』でもある。
(監督は『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』のマイケル・アプテッド。2006年イギリス映画)
本当は、先週には備忘録を…と思いつつ。
そのため、『奴隷(どれい)』、『レスタヴェック』…と来て、やっと、これを書けた。
*************
ちなみに、うちの親父殿流に言うなら、この映画はR12指定だ。
「おい、こんなものを子どもに食わせるんじゃない!」
と彼がそう言ったら、それは、とてもとても美味しいものであって、子どもなんかにはあげるなんてもったいない、という意味。
もうひとつの意味は、子どもにはこの良さがわからんのだ(だから、オレが食ううんだ)、ということ。
そんなわけで、新鮮な海の幸(さち)の雲丹(うに)にほや、あわび・・・そんなものが手に入った時は、親父殿からは頂けない。父方の祖母や、母が、子どもらにこそっと分け与えたものだった。
この映画もまた、そう言われるくらい、イイ作品かもしれない。
キャベツとしては、むろん、歌もいいし、内容、舞台設定や背景、裏方も
しっかりしているのだが、それだけではなく、
ウィリアムと、24歳にしてイギリス史上最年少の首相となったウィリアム・ピット(ベネディクト・カンバーバッチ)のやり取り、
議会でのウィットに富んだ駆け引き、
ウィリアムと、彼が出会って10日で求婚したというバーバラ・スプーナー(ロモーラ・ガライ)の2回目のやり取りが、
そして、
目が見えなくなった後のジョン・ニュートン(アルバート・フィニー)
・・・などが、味わい深かった。
そういうわけで、いつかまた、チビたちと観たいものだ。
もちろん、R12指定で。
【参考・引用他】
・東京法令出版編集出版部編集;社会人のための世界史,東京法令,1997
・服部瓦版HP
『アメイジング・グレイス』公式サイト
・『アメイジング・グレイス』予告編(You Tube)
18世紀のイギリス。
アメリカのリンカーン、南北戦争、奴隷解放宣言(1863)・・・が起こる、80年も90年も前に、
ある歌が、生まれた。
「おどろくばかりの めぐみなりき
この身のけがれを 知れるわれに・・・」(旧聖歌 #229)
「アメイジング・グレイス Amazing Grace」(ジョン・ニュートン作詞、1772)。(←クリックすると、ややjazzバージョンのこの歌と、歌の由来へ)
この歌は、いろんなバリエーションをもって、様々なところで、歌い継がれている。聞いたことのある人も、少なくはないだろう。
その当時、黒人奴隷は、家畜以下の扱いだった。
ジョン・ニュートンはもともと奴隷貿易船の船長をしており、彼の航海の最中、2万人の奴隷が命を落としたという。あるとき、彼はそれを悔(く)い、牧師となり、そして、この歌が生まれる。
そして、彼を師事した一人、21歳にして下院議員となった政治家ウィリアム・ウィルヴァ-フォース(William Wilberforce、1759-1833)が、この映画の主役。
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映画は、37,38歳の、過労で身体を壊した中年男ウィリアム(ヨアン・グリフィズ)が、友人宅で静養を始めるところで幕開けとなる。
21歳で華々しくデビューした若い理想主義者は、その後何度も挫折し、仕事の激務とストレスの中で体を壊していた。
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(背景メモ)
当時、大英帝国(イギリス)は、奴隷貿易が盛んだった。
黒人奴隷はアメリカが有名だが、そのアメリカに黒人奴隷を供給していたのはヨーロッパの奴隷商人だった。
西インド諸島はその中継地。
18世紀、イギリスやフランスから銃器等の生産品がアフリカに行き、原住民と交換、そうして得た黒人を
西インド諸島に売却し、砂糖・綿花・タバコなどをヨーロッパに持ち帰る三角貿易が発展した。
奴隷たちは、プランテーションで、鞭(むち)に打たれながら、
サトウキビの収穫から砂糖の精製までの流れ作業のような、各現場に当たっていた。
疲労した奴隷が搾出(さくしゅつ)機に腕をはさんでしまう
という事故がよくおこり、腕を切断するための剣が 機械の脇に常時おかれていたという。
奴隷は、イギリスの港を経由することなくアフリカと西インド諸島の間で運搬されていたので、イギリス人たちは奴隷問題にまったく無頓着 人は、目の前で行われる悪徳には嫌悪するが、見えない悪(罪)については気付かないふりをし、必要悪として許容する。そんなことより、経済のほうが優先、と。
ウィルバーフォースたちの戦いは、この隠れた悪(罪)の実態を表面に出すことにあった。
こうした活動の原動力になったのがウィルバーフォースの信仰であり、
それを象徴するのが 映画のタイトルにもなっている賛美歌『アメイジング・グレイス』でもある。
(監督は『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』のマイケル・アプテッド。2006年イギリス映画)
本当は、先週には備忘録を…と思いつつ。
そのため、『奴隷(どれい)』、『レスタヴェック』…と来て、やっと、これを書けた。
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ちなみに、うちの親父殿流に言うなら、この映画はR12指定だ。
「おい、こんなものを子どもに食わせるんじゃない!」
と彼がそう言ったら、それは、とてもとても美味しいものであって、子どもなんかにはあげるなんてもったいない、という意味。
もうひとつの意味は、子どもにはこの良さがわからんのだ(だから、オレが食ううんだ)、ということ。
そんなわけで、新鮮な海の幸(さち)の雲丹(うに)にほや、あわび・・・そんなものが手に入った時は、親父殿からは頂けない。父方の祖母や、母が、子どもらにこそっと分け与えたものだった。
この映画もまた、そう言われるくらい、イイ作品かもしれない。
キャベツとしては、むろん、歌もいいし、内容、舞台設定や背景、裏方も
しっかりしているのだが、それだけではなく、
ウィリアムと、24歳にしてイギリス史上最年少の首相となったウィリアム・ピット(ベネディクト・カンバーバッチ)のやり取り、
議会でのウィットに富んだ駆け引き、
ウィリアムと、彼が出会って10日で求婚したというバーバラ・スプーナー(ロモーラ・ガライ)の2回目のやり取りが、
そして、
目が見えなくなった後のジョン・ニュートン(アルバート・フィニー)
・・・などが、味わい深かった。
そういうわけで、いつかまた、チビたちと観たいものだ。
もちろん、R12指定で。
【参考・引用他】
・東京法令出版編集出版部編集;社会人のための世界史,東京法令,1997
・服部瓦版HP
『アメイジング・グレイス』公式サイト
・『アメイジング・グレイス』予告編(You Tube)