旅衣 八重着重ねて 寝ぬれども
なほ肌寒し 妹にしあらねば
=巻20-4351 防人の歌=
旅に出て、旅の衣を幾重にも重ね着して寝るけれども、やはり、肌寒い。妻のようなぬくもりがないのだから。という意味。
天平勝賓7年(755年)2月に、筑紫の国に遣わされた防人の歌で、望陀郡の上丁玉造部国忍の歌とある。
望陀郡(まくだのこおり・もうだぐん)は上総国の小櫃川流域を中心とする地域に存在していた郡で、現在の木更津市馬来田周辺とされている。
古代に望陀郡は調として望陀布を納めていた。この望陀布は上質の麻布で、天皇の皇位継承の儀式や唐への貢物、大嘗祭などに使われていたという。防人の旅の衣は、とても望陀布のようなものではなく、ありったけの粗末な布を重ね着したが、それでも寒さがきつかったのだろう。
この万葉歌碑は木更津市馬来田の「うまくたの路」の「小さな路の駅」に置かれている。
「小さな路の駅」は散策路途中にある休憩処で、花壇の中で歌碑が花に囲まれている。