飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
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万葉アルバム~草、たけ

2010年05月27日 | 万葉アルバム(自然編)

我がやどの いささ群竹(むらたけ) 吹く風の
音のかそけき この夕(ゆうべ)かも  
   =巻19-4291 大伴家持=


 わが家の庭の清らかな笹竹に吹く風の音がかすかに聞こえる、この夕暮れよ。という意味。

「いささ」は、いささかの、わずかな。「音のかそけき」は、吹き過ぎて行く風の音の薄れゆくこと、かすかになってゆくこと。

音がかすかに聞こえその後遠ざかってゆく、そこに静寂がある。かすかな音を歌ったというより、静寂そのものを歌ったともいえる。

 天平勝宝5年(753年)2月、家持はこの2年前に少納言に任ぜられ、越中から帰京した。しかし、政治の実権は藤原仲麻呂に握られ、家持の不満は日増しに募るばかりであり、ここの歌はそうした時期に詠まれたものである。

 タケはイネ科。米や麦と竹が親戚とはどうも理解できないが、植物学上ではそうなっているのである。

『万葉集』には「たけ」は十八首詠まれている。

この万葉歌碑は名古屋の東山植物園の万葉の散歩道にあるもの(2010/12/24写す)。