日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

灼熱の近畿を行く - 誤算

2016-08-07 22:48:30 | 近畿
ある程度想定されたこととはいえ、二軒を欲張った結果として、手痛い誤算に見舞われてしまいました。「蔵」に早仕舞いで振られたのですorz
「鬼無里」を出てから脇目も振らずに歩き、店の明かりが見えて一安心と思ったのも束の間、次の瞬間暖簾がしまわれたらしきところが遠くに見えました。見間違いであってほしいと願いつつさらに歩くと、無情にも行灯の明かりが落ちるという、何とも切ない結果です。よく見れば店先には九時半で看板との張り紙がありました。元々その予定だったか、燈花会で予想以上の人が出て品が切れたかはともかく、今日はどのみち一軒しか選べなかったことになります。
そうと分かっていれば、手堅く「蔵」一軒に絞っていたでしょう。とはいえそれは全くの結果論です。「鬼無里」が貸切だったことを考えると、あちらに行くなら今日が絶好の機会だったのは間違いありません。二兎を追って少なくとも一兎を仕留めた以上、このような結果となったことについては納得しています。
実は、「蔵」以外にもそれなりに期待できそうな店がないわけではないのです。しかし、下手にはしごをするよりも、一軒で心行くまで呑み、その余韻を持ち帰りたいと思わせるのが奈良の不思議なところでもあります。今回も代わりを捜してまで呑もうとする意欲は起こりませんでした。ならば地元客御用達の老舗のラーメン屋で締めくくりたいところではありましたが、そのような店がなさそうなのは経験上分かっています。結局天下一品でラーメンをいただき、10時半には宿に戻るというのが今夜の顛末です。

わざわざ宿までとっておきながら、何とも中途半端な結果でした。とはいえ今夜に関する限り、早々と切り上げたことでよかった面もあります。というのも今夜は宿代を奮発したからです。
翌日甲子園へ行くつもりで前泊するのであれば、大阪市街に宿をとるのが最も順当です。それにもかかわらず奈良にしたのは、以前も世話になったホテルフジタに再び格安で泊まれる状況だったからに他なりません。日曜の晩だけに宿泊事情には比較的余裕があり、大阪市内でも五千円前後のビジネスホテルが選べる状況ではありましたが、二千円ほどの違いでホテルフジタのツインルームを一人で使えることが分かり、あえて奈良を選んだという経緯があります。
ツインルームに格安で泊まれたり、宿の好意でツインを融通してもらったりすることはしばしばあります。しかし、それらと比べても格の違いは歴然としています。特段広いというわけではないものの、必要にして十分以上の空間があり、その一角にはそれだけでも寝床になりそうなほど立派なソファが鎮座しています。そのソファの脇と机、ベッドにそれぞれ布製の傘をかぶった照明があって、部屋全体が心地のよい明るさで照らされます。開閉と連動して照明がつくウォークインのクローゼットも、去年泊まった函館国際ホテル以来です。呑み屋から戻った後に寝るだけ寝て、翌朝早々と出発するにはいかにも惜しい宿だけに、ある程度腰を据えて滞在できることについては歓迎すべきでしょう。
明日は8時開始の第1試合に合わせて甲子園に乗り込むつもりでいたわけなのですが、この期に及んで出発を遅らせる可能性が出ています。というのは、チェックインの際にレストランの割引券をもらったため、朝食をいただいてから出るという案が浮上してきたのです。割り引かれてもそれなりの料金はするものの、このクラスの宿で朝食をいただける機会が何度あるかと考えたとき、素泊まりで済ませてしまってはもったいなかろうという考えが、次第に強くなってきたとでも申しましょうか。
朝食を済ませてからということになると、現地に乗り込むのは早くとも10時頃になり、第1試合は見逃す可能性が大です。午後から優勝候補が立て続けに登場することを考えると、去年よりも早い時間帯に球場が埋まってくる可能性も十分に考えられ、かような観点からも出遅れは好ましくありません。ただ、万一満員札止めとなったときには、併設の甲子園歴史館を見学するなどしてやり過ごし、第4試合の終盤だけ外野席から冷やかすという手もあります。聖地巡礼を主題とした今回の活動で、肝心の巡礼が中途半端に終わっては本末転倒も甚だしいところではありますが、去年と違い百周年などという大義名分もないため、今年はそれでも十分という方向に傾いているのが現状です。

長々と綴っているうちに夜が更けてきました。明日に備えて寝ます。おやすみなさいzzz
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灼熱の近畿を行く - 鬼無里

2016-08-07 20:48:05 | 居酒屋
旅先では何かと拡大指向に走りがちです。潔く一軒に絞るつもりが、結局「鬼無里」の暖簾をくぐりました。
「二兎追う者は一兎を得ず」の諺を承知しつつもこのような選択に走ったのは、九時頃になるかと思われた開始時刻が若干早まったことによるところが一つ。毎年足を運んでいながら、「蔵」一辺倒では進歩がないと感じていたのが一つ。もう一つの理由は、宿との位置関係からして「蔵」へ向かう途中に「鬼無里」の前を通る形になり、むざむざ素通りし難かったことにあります。

教祖の偉大さの一つとして、余所者がまず足を踏み入れないであろう雑居ビルの中からでも、さすがと感心させられる名店を発掘してくる点が挙げられます。この店についても然りで、薄汚れた雑居ビルの二階には、事前情報さえなければ近寄ることさえないでしょう。外観からしてただならぬ雰囲気を放つ店ならともかく、ここの場合店構え自体に特段閃くものは感じられません。よい店に出会える確率は四分の一であるというのが教祖の見解ですが、このような場所にまで対象を広げていれば、その程度の確率になることは想像に難くありません。
教祖が事あるごとに推してきた、聖地というべき名店と違い、この店が紹介されたのは比較的最近のことです。それだけに、事前情報だけでおおよその想像ができてしまう超有名店とは異なる面があります。情報から判明していたのは、大皿の家庭料理が中心であることと、店主が一癖ある人物だということでした。呑み屋を経営しておきながら、酒呑みは嫌いだと公言して憚らないことからしても、酔いが回った状態でいきなり行くのはためらわれます。かような観点からは、行くなら一軒目しかなかろうという考えはありました。

暖簾をくぐるやいなや、店主の独特さがいきなり発揮されました。先客が全くいない店内で、店主がテーブル席に腰掛け休憩しており、そろそろ閉めるつもりだったと、暗に断るような第一声が発せられたのです。そうですかと引き下がればそれまでのところ、あまりの唐突さでこちらが呆気にとられていると、幸いにして入店を許されるという経過です。
カウンターには分厚い一枚板が奢られ、それに沿ってざっと二十種以上もの大皿が並んでいました。品数の豊富さと、見れば一目で分かる家庭料理を中心にしたところは、長崎の「こいそ」と同じです。酒も肴も品書きは一切なく、酒はビールと清酒がせいぜい、肴は目の前の大皿を見て選ぶというのがここでの流儀なのでしょう。カウンターの背面には、今は使われている気配のない黒板があります。開店当初はおすすめの品などを記していたのが、常連客が増えるにつれてそれさえ行われなくなり、今のような形になったのだと推察しました。
自分と同じボストン眼鏡をかけ、白髪交じりの頭を後ろで束ねた店主は、風貌通りの一風変わった人物でした。無駄に愛想を振りまくこともなく、一見客の自分に対してもいわゆる「タメ口」です。とはいえ無愛想でぶっきらぼうなわけではなく、飄々として捕らえ所がないというのが適切な評価のような気がします。教祖の推奨店の中では、横浜の「麺房亭」の店主にも通ずる独特さではありますが、饒舌なあちらの店主とは一味も二味も異なります。自身知る中でいうなら、釧路の「鳥善」の店主に最も近いという印象です。

酒は駒を逆さにしたような変わった形の徳利に注がれてきました。おそらく二合はあるでしょう。この徳利を含め、素焼きを中心にした器の一つ一つが凝っています。唯一残念なのは、惣菜を電子レンジで温める結果、いかにもそれらしき不自然な温かさになってしまっていることです。煮魚などはともかく、最初に頼んだ茄子の煮付けなどはそのままいただいても十分いけそうなだけに、そのような惣菜については加熱無用でお願いする手はありかもしれません。
徳利一本と惣菜三品でお愛想は二千円也。酒も肴も一品五百円見当という、大衆酒場と変わらぬ手頃さです。しかも価格なりの分量というわけではなく、酒は上記の通り大徳利で、惣菜についても一人客には十分な量があり、最後にいただいたグラタンなどはかなりの物量感がありました。高価な刺身も流行の地酒もなく、万人受けという点では若干の疑問符がつくものの、日参するにはこのような店こそ理想的ではないでしょうか。今回もさすがと感服した次第です。

鬼無里
奈良市角振新屋町10 パーキング奈良2F
0742-22-5787
1700PM-2200PM
不定休
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灼熱の近畿を行く - 燈花会

2016-08-07 20:22:39 | 近畿
奈良に着きました。空には三日月が出ています。
電車の中でも宿まで歩く間も、浴衣姿が目立ちました。「なら燈花会」なるものが開かれているそうで、近くの寺でも燈籠が灯されていました。とはいえ適度な人出なのは幸いです。
奈良といえば教祖おすすめの「蔵」ですが、その一方で同じく教祖が推す「鬼無里」にも一度行ってみたいという考えは常々持っています。宿泊する今回は絶好の機会だったわけなのですが、京都に日中いっぱい滞在したことにより、二軒はしごするのは時間的に少々厳しくなってきました。手短に切り上げればどうにか掛け持ちできる状況とはいえ、時間を気にしながら呑むようでは本末転倒です。今回も潔く「蔵」一軒限りとし、浮いた時間で燈花会を冷やかす程度に見物していこうかと思っています。
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灼熱の近畿を行く - 禾多重力

2016-08-07 19:22:41 | 近畿
山頂へ戻る最終のバスまで粘り、ロープウェイとケーブルカーを乗り継いで下山しました。さらに京阪電車、近鉄電車を乗り継いで、本日の投宿地となる奈良へ向かいます。京都と違って奈良の店仕舞いは早いだけに、今回も「蔵」でしか呑めない可能性はありますが、明日は8時開始の第一試合に合わせて甲子園に乗り込むため、かなり早起きしなければなりません。今日については早めに切り上げた方がむしろ好都合なのです。

★八瀬比叡山口1813/208レ/1826出町柳1839/B1807A/1853丹波橋1858/1875レ/1909大久保1919/1921レ/1946近鉄奈良
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灼熱の近畿を行く - 延暦寺駅

2016-08-07 15:11:31 | 近畿
ケーブルカー、ロープウェイとシャトルバスを乗り継いで、昨日も訪ねた坂本ケーブルの延暦寺駅にやってきました。山頂からの眺望が今一つだったこともあり、それならこちらを再訪しようと思い立った次第です。空と湖面の青さは今日の方が優っています。昨日の今日で再訪したのは全く無駄ではありませんでした。
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灼熱の近畿を行く - 八瀬比叡山口駅

2016-08-07 12:33:14 | 近畿
昨日乗った坂本ケーブルと同様、八瀬からのケーブルカーとロープウェイも遠い昔に一度乗っただけです。乗った年代もほぼ同じでした。これは、全国の鉄道路線にあらかた乗り尽くした後、次なる対象としてケーブルカー、ロープウェイを集中的に回っていた時期があったためです。
このように、当時は乗ることに主たる関心があり、駅の造りに対しては今ほど凝ってはいませんでした。そのような事情もあり、八瀬の駅についてもほとんど印象に残っていなかったのが実情ではありますが、改めて眺めるとこれが非常によい駅です。
構造としてはホームと屋根しかないため、正確には「駅舎」とはいえないのかもしれません。しかし、巨大な切妻屋根で2面2線の頭端式ホームの全体を覆い、さらにそれぞれのホームに沿って庇を造り、片側のホームから車寄せを張り出させるという構造をとることにより、全体として駅舎のように見えるという仕掛けになっています。しかもその屋根と庇は美しい幾何学模様とアーチで構成された鉄骨で支えられており、屋根と庇の間に格子状をした明かり取りの窓を連続させるといった細部の意匠も秀逸です。
そのホームで折しも「地ビール祭り」なるものが開かれています。ホームに露店と客席を並べ、地元の醸造所が造ったビールをいただけるという催し物で、片側のホームには電車が据え付けられており、車内でいただくこともできるようです。もともと車内での飲み食いは好まない性分であり、それ以前の問題として取り付く島もないほどの賑わいではありますが、帰り際に多少なりとも落ち着いていれば、ビール一杯だけいただくという手はありかもしれません。
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灼熱の近畿を行く - 二日目

2016-08-07 11:09:59 | 近畿
おはようございます。二日目の記録は叡山電車の八瀬比叡山口駅から始まります。
本日の行動としては、大別して三通りの選択肢がありました。そのうち二つは出発前から構想していたもので、一つは甲子園歴史館の見学、もう一つは和歌山まで足を延ばすというものでした。それに対し、昨日急遽浮上したのが、比叡山に京都側から登るというものです。昨日登った山頂が、耐え難い平地の暑さとは全く別世界の涼しさだったことから、叡山電車、ケーブルカー、ロープウェイの乗車も兼ねて再訪しようと考えたのでした。
そもそも甲子園歴史館へ行こうという考えも、屋内で暑さを避けるという目的があってのことでした。しかし今朝方目覚めると、大きな白い雲が浮かんだ、いかにも夏らしい空が広がっていました。これほどの晴天下で、終日屋内に籠もっているのはあまりにもったいなく、その時点で甲子園歴史館はなくなりました。ならば和歌山かというと、こちらについても本日行くべき必然性が特段感じられませんでした。その結果、昨日の今日で比叡山へ行くという選択に落ち着いた次第です。
京阪電車、叡山電車と山頂までのケーブルカーにロープウェイ、さらはバスにも乗れる渡りに船のフリーパスがあったため、本日はこちらを利用しています。山頂はもちろんのこと、昨日訪ねた滋賀県側にも行けるため、場合によっては終日滞在することになるかもしれません。

★祇園四条1021/D900Z/1028出町柳1037/83レ/1051八瀬比叡山口
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