公演名 坂東玉三郎特別舞踊公演
劇場 大阪松竹座
観劇日 2008年2月10日(日)3階4列
一、連獅子
狂言師右近後に親獅子の精:海老蔵
狂言師左近後に仔獅子の精:尾上右近
法華の僧 蓮念:竹三郎 浄土の僧 遍念:薪車
前半は白と赤の手獅子を持った狂言師二人の踊り。文殊菩薩が住むといわれる
天竺清涼山とそこに掛かる石橋。親獅子が仔獅子を谷に蹴落として鍛えるとい
う故事をもとに二人が舞を見せた後、姿を消す。
前半と後半の合間に登場するのが、法華の僧と浄土の僧。獅子の出る恐ろしい
谷で旅の道連れができたと喜ぶが、宗派の違いから言い争いになる。このとき
一陣の風が吹き、獅子の気配に恐れをなし、二人はその場を去る。
後半は、二人揃っての勇壮な獅子の舞。能衣裳に隈を取り、白と赤の毛をつけ
た親子の獅子の精が花道から登場。様々に毛を振り分ける獅子の狂いを演じる。
連獅子をナマで観るのは初めて。
親子を演じる二人、とにかくエネルギッシュ! 海老蔵さんと15歳の右近さん
の舞は、あふれる若さと華やかさをしっかり見せつけてくれた。
前半では親獅子が子を蹴落とすあたりから俄然面白くなる。
本舞台が崖の上、花道が谷底。
子を突き落とした後、心配そうに下を覗き込む親獅子。海老蔵さんが眉を下げ、
大きな目を細めている。一方の仔獅子は3階後方席からだと見えないのだが、
谷底でもがいていたのだろうか? と、その時。
親獅子が子供を見つけて、オッ!
仔獅子が水鏡に映った父親の姿に、アッ!
二人の反応がピタッと合っているのが見えて、私がおお~。
父を目指して一心に崖を駆け上がる子。それを迎えて喜ぶ父。
海老蔵さんの親獅子は・・・若さゆえだろうか、距離を取りながら深く子を想
う親の情よりも、這い上がって来た仔獅子と共に、体いっぱい喜びを表現する
姿のほうが強く印象づけられた。
子供といっしょにキャッチボールをしちゃうタイプの親では、連獅子じゃない
のだよね、きっと。でも、微笑ましくてニコニコしてしまった。
(ハイ、いつまでたっても成長しない客でございます。)
法華の僧と浄土の僧が現れると、舞台の空気がなごむ。
二人が狂言風に名乗りをあげるのは松羽目物ならではの趣向だ。
別々に天竺清涼山までやって来た二人が、これから旅の道連れになろうとする
が、法門で言い合いとなり、続いて太鼓と鐘の違いでも言い争いになる。
とはいえ、竹三郎さんと薪車さんの師弟コンビ。踊りも台詞も呼吸が合ってい
て、見ていて安心。言い争う様子もユーモラスで、どこかあったかい。
優し気な竹三郎さんと、男前の薪車さんに頬がゆるんでしまうのだった。
舞台に紅白の牡丹の花が置かれた。
はらり、はらり・・・牡丹の花びらが落ちる音。
ぽとぽとぽとぽと・・・花の滴が落ちる音。
お囃子の音が効果音となり、静けさと同時に緊張感を高めてゆく。
花道からいよいよ獅子の精が登場。
会場は大拍手。精悍で美しい親子獅子に盛り上がった。
獅子は最初、牡丹の花の間を回りながらその露を体につけてゆっくりと舞う。
その獅子を感じて咲き乱れる牡丹。それを見てまた猛り狂う親子獅子。
お囃子の音がいつしか激しくなり、踊りも次第にスピードを増してゆく。
髪洗い、巴、菖蒲叩き・・・二人並んでの毛振りも、お互いを気遣うというよ
りも若さの競演という感じ。見得も大きく決まって、声もかかる~。
最後に台座にストンとおさまるまで、力強さと勢いで乗り切った二人だった。
(写真左は、番付表紙の部分アップ。)
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