星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

観劇前感想文。

2013-05-19 | 演劇・ダンス・映画・音楽・古典・TV
「できれば観劇前にこの本は読んできてほしい。」
舞台『あかいくらやみ』の出演者3人の鼎談であるひとがそん
なふうに話していたので急きょ読み終えた。



魔群の通過 (広済堂文庫―山田風太郎傑作大全)


その前に、長塚圭史さんがこの作品を上演するにあたり敦賀
を訪れたことを知った。
え! 水戸の天狗党と関係があるの?
敦賀といえば、いま原発の再稼働をめぐって注目を集めてい
る真っ最中。その敦賀に私は学生時代の毎夏、縁あって長期
宿泊(合宿)をしていたのだった。
ネットで調べてみて驚いた。
当時、毎日通って長時間過ごしていたエリアの一角で、まさ
かそのような歴史が秘められていたとは・・・。

そんな思いもあって読み始めたけれど、初めはとっつきにく
い感じがした。が、10ページほど読み進むうちに面白くなり、
やがて高揚感、動悸、嗚咽。そして、自分が宿泊していたお
寺の名前が出てきた時には寒気と吐き気に襲われた。
今まで知らずにいたおのれの無知を恥じつつ、当時もし知っ
ていたら、その寺にいられただろうかとも思った。

舞台はまだ観ていないけれど、天狗党の残党の呼称として
「さいみ」の名前はこの本の終わりのほうに登場する。
話のおもな舞台は水戸、横浜、東京。
ちなみに『魔群の通過』によれば、「さいみ」とは、布目
のあらい麻のことで「細布」と書いてサイミと読むらしい。
全員が細布で作ったおそろいの陣羽織を着たことから、
「さいみの羽織が来た!」などと言われたそうだ。
戯曲ではいったいどんなふうに料理されているのだろうか。

それにしても幕末という時代。
官か賊か、吹く風が変われば一気に立場が入れ替わるオソ
ロシサをつねに秘めている。
つき動かすものは志か。復讐心か。個人の保身か。
あるいは女か。男か。

昨年、金福寺を訪れた後で舟橋聖一著『花の生涯』を読んだ。
彦根側から見る幕末の風景は、当然ながら水戸藩天狗党を描
いた『魔群の通過』とは全く違うものだった。



花の生涯〈上〉 (祥伝社文庫)
花の生涯〈下〉 (祥伝社文庫)
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