菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

生きるための本能があなたを求める。    『欲望の翼』

2009年10月01日 00時01分53秒 | オレは好きなんだよ!

【俺は好きなんだよ】第174回

 

『欲望の翼』(1990)
  
 
原題は『阿飛正傅』。『阿Q正傅』と絡めてあるのかな?
英語題は『DAYS OF BEING WILD』。
未完成の完成とは、こういう作品のこと言うのだ。


スタッフ。
監督:ウォン・カーウァイ(王家衛)
製作:ローヴァー・タン
製作総指揮:アラン・タン
脚本:ウォン・カーウァイ
撮影:クリストファー・ドイル
美術:ウィリアム・チャン
 
 
出演。
レスリー・チャン
カリーナ・ラウ
マギー・チャン
ジャッキー・チュン
トニー・レオン
アンディ・ラウ
  
 
物語。 
ヨデイは養母レベッカに育てられ、自己の複雑な内面を持て余す青年、自分を足のない鳥にたとえ、飛び続ける人生を夢みる。
プレイボーイのヨデイに惑わされる身持ちの堅いサッカー競技場の売り子スーは警官タイドにも愛されるようになる。
船乗りに憧れるタイドはやがて異国の地でヨデイと出会うだろう。
ミミはレベッカの店のダンサーでヨデイに惚れぬいていたが、その親友で彼女に恋するサブにあてがわれる・・・。
 
 
6人の主要登場人物それぞれの視点が混在し、物語よりも感情の絡み合いと離反を描くことに主眼を置いた幻惑的な文体は、ギリギリの所で劇的に機能するのにも驚く。


その相対的かつ、主観的な時間感覚、けだるいラテンのムード、扇情的かつ抑制のきいた映像、酔うような会話・・・。



ウォン・カーウァイ第2作目にして、最高傑作。
彼はこれ以上の作品をつくることができるのだろうか。
言葉で表現するのが難しい映画ではないかと思う。
香港の湿気、60年代の空気、熱帯雨林の青みをおびた映像、ヨディーの母親の部屋の映像美、母親探しに破れたヨディーの後姿のスローモーション、若者しか持ち得ない情熱、やり場のない気持ち、
亜熱帯である香港、フィリピンを描いたこの作品にラテン音楽のもの哀しいムードが実によく合う。
この作品に出演している俳優は、その後、いずれも大スターとなるが、この頃はまだまだアイドルの域に過ぎない。
その彼らが、この監督2作目で映画史に残るような演技をみせていることに、香港芸能界の懐の深さを感じずにはいられない。


恋愛渇望の描写において、映画での最高峰をぜひ堪能していただきたい。








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