about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『恋するハニカミ!』(2)-1

2007-08-31 01:04:30 | 恋するハニカミ!
・スタジオゲストは斉藤兄弟の片割れ・慶太くんと吉岡美穂さん。慶太くんは勝地くんとは友達なのだそう。
この時点で勝地くんと斉藤兄弟は共演経験はなかったと思いますが(のちに兄の祥太くんとは『ハケンの品格』で共演)、『Junie』2003年5月号で慶太くんが「勝地とはよく一緒にご飯を食べたり、渋谷をブラブラしたりしてます。(中略)ふたりの間に秘密はないんですよ。」と話してたり(ちなみに4月号の同コーナーのゲストは勝地くんでした)、『HERO VISION』2003年11月発売号で勝地くんが心理テストの中で斉藤兄弟の名前を出したりしていたことからいって、結構以前から親しいようです。
ちなみに祥太くんの方は『ハケンの品格』出演時にブログで、「友達で超仲良い勝地(が一緒で楽しい)」って書いてました。
←P.S. 8月18日放映の『王様のブランチ』(TBSの情報番組)に勝地くんが出演したさいに、スタジオレギュラーの斉藤兄弟との仲良し話をあれこれしていました。
勝地くんが斉藤兄弟について語るのを聞くのは初めてだったので、ちょっと嬉しかったり。 

・しずちゃん登場。ハンディカメラで映す自分の顔が魚眼レンズみたいな超アップになってるのは確信犯的ボケですね。この時のしずちゃんはまだ「お笑い芸人の表情」をしてます。

・勝地くん登場。彼の方もハンディカメラで映す顔が若干魚眼レンズ状態ですが、アップになると改めて肌の綺麗さに目を引かれます。
あとでしずちゃんに歩み寄る場面でも、太陽光の下なのに肌に全然凹凸がない。
この顔合わせの場面、太陽をバックに笑顔で歩いてくる彼は、スタジオの久本さんが言う通り、本当「爽やかやな~」。

・しずちゃんに対する勝地くんの第一声「こんにちはー」。
この日の彼(というか素のトークではだいたいいつも)は全体に低めの落ち着いた声で話してるんですが、ときどきこういったやや空気を含んだ発声をする。
語尾がふわっと前に押し出されるような感じ。それが彼の声に柔らかなふくらみを持たせている。
耳に心地好い、聞いていてホッとする声です。

・「勝地涼と申します」。デートする相手にこの丁寧さ、物堅さなのがいかにも勝地くん。
対するしずちゃんもつられたのか、「南海キャンディーズのしずちゃんと申します」と丁寧な挨拶。「南海キャンディーズの」と付けるあたりが何か天然です。

・まずはお化け屋敷へ。「お化け屋敷は苦手」と尻込みするしずちゃんを「大丈夫、行きましょう!」と頼もしく引っ張っていく勝地くん。怖がって勝地くんの肩にしがみついてるしずちゃんがすごく可愛いです。
そしてお化けが現れると(たぶん。画面にお化けが映らないので「現れた」と言い切っていいのかも一つ自信がない)しずちゃんと一緒に叫んじゃってる勝地くん(笑)。
といっても大きな口開けて笑ってるので、怯えてるわけじゃなくて、びっくりした&面白がってる感じですね。
『nadesico』vol.5(2007年5月発売)で遊園地(でのデート)について、「絶叫系は得意なので任せてください」と語ってましたが、ジェットコースターだけでなくお化け屋敷も「絶叫系」に含んでるのかも。さぞや嬉々として叫びまくるんだろうなあ。

・「どんな男性がタイプですか」との勝地くんの質問に対するしずちゃんの答えは「クリエイティブな人」。
「誠実な人」「優しい人」といった王道の答えでなく、「才能に惚れる方かも」との発言が胸に沁みました。
思えば、「誠実な」「優しい」人が好みという発言の裏には、その方が自分に良くしてくれる、自分にとって都合が良いという打算が働いているともいえる。しずちゃんはそうした打算とは無縁に、純粋に相手の人間性を見つめている。
勝地くんもそれを感じ取って、「なんかそれステキですね」と言ったんじゃないかなあ。

・この日勝地くんは終始、一人称「俺」を使ってます(一ヶ所のみ例外あり、後述)。
日頃、公式の場では基本一人称「僕」、ですます調で話す彼ですが、さすがに「恋人」にそれでは堅苦しいということでしょうね。
彼みたいなタイプだと人前や目上の人に対する場合は丁寧語の方が話しやすいんじゃないかと思うので、「頑張ってるなー」と感じたものでした。
それでも一人称以外は基本的に丁寧なのが(「すげー」「いいっすか」みたいな砕けた表現も交えてましたが)勝地くんらしいなあと微笑ましかったり。

・「お笑いとかやってる女性はどう?」。しずちゃんは大人気の芸人さんなのに、「女」としてはお笑いをやってることがコンプレックスになってしまうのかなあ、とちょっと切なくなりました。
勝地くんは「いや すげー 俺は好きですよ」と答えてますが、どことなく返事の間と声のトーンに「何でそんなこと聞くんだろ?」と言いたげな響きがあった気がしました。
彼にとって、芸人であることは女として何らマイナスポイントではないんでしょうね。
その意味でも勝地くんはしずちゃんにとって、コンプレックスを刺激しない、絶好のデート相手だったんじゃないかな。

・しずちゃんの手作り弁当。一口目を食べる勝地くんの反応をどきどきした表情で見守っているしずちゃんが何とも可愛らしい。
そして大きなおにぎりを頬張った勝地くんが一言、「うめぇ」。ちょっとぞんざいな言葉遣いが、逆に男の子の素の反応という感じで親近感が湧きます。
その爽やかな笑顔もあいまって、本当においしそうに食べてくれるのでお弁当を作った側としては感激しちゃいますよね。
そして多少乱暴な言葉を使ってても乱暴に響かないことに、改めて(いつも以上に)彼の育ちの良さを感じてしまいました。欲目ですかね(笑)。

・「じゃあ俺もするよ」と、今度は勝地くんがしずちゃんにお弁当を食べさせてあげる。
この時口に入れたままで喋ってるにもかかわらず言葉がきっちり聞き取れるのに、さすがに俳優さんだなあと本筋と全然関係ないところで感心してしまいました。

・このデートの中で視聴者最大の反響を呼んだらしい「卵焼きを半分に切って食べさせてあげる」シーン。
女の子が人前で大口を開けるのは抵抗があるだろうとの気遣いが嬉しいです。
しずちゃんも「女性として、すごく、扱ってくれたのが嬉しくて」とコメントしてましたが、卵焼きを頬張るしずちゃんは本当にとても照れくさそうな、幸せそうな笑顔になっていて、見ているこちらまでなんだか胸がきゅんとします。
ところで勝地くんの「卵焼きは半分かな 女の子はね」と言う言葉には、額面通りの意味のほかにもう一つ別のニュアンスもあったんじゃないかという気がします。
この少し前、しずちゃんが「卵 これ一口で」と言いながら、勝地くんに卵焼きを食べさせてあげる場面で、勝地くんは豪快に一口で食べてるんですが、やっぱり心なし食べ辛そうなんですよね。
それもあって、食べやすいように半分に切ってあげよう、でもそうすることで「やっぱり一口じゃ食べにくかったのかなあ」と彼女が気にしたらいけないと、「俺は男だからいいんだよ」という意味合いも含めての言葉だったんじゃないかなーと思っているんですが。

・ハニカミプランのお題は「ポエムで相手に想いを伝えること」。なんとも可愛らしいお題がこの微笑ましいカップルにぴったりです。
勝地くんのポエムが思い切り直球で笑えます。それはポエムじゃなくて感想文だ。
まあここで妙にロマンティックな詩を出してこられてもヒいてしまう気がするので、かえっていいんじゃないかな。
彼独特のヘタクソだけど読みやすい文字にもストレートな文章にも、「上手じゃなくてもいいんだ。気持ちを伝えることが大事なんだ」という人生哲学が感じ取れる、かも。

・ポエムが好きでよく自作してたというだけあって、しずちゃんのポエムはさすがに上手。
技巧的なのでも自分に酔ってる風でもなく、恋する乙女の気持ちを「フワフワ」という言葉で表現した、「ピュアな女の子」な雰囲気が愛らしい。
読みながら恥ずかしげに笑みをこぼすのも何とも初々しくて――このカップルの微笑ましさはこうしたしずちゃんの少女のような感覚に由来する部分も大きいですね。

・ポエムを読むしずちゃんを微笑みながらじっと見守る勝地くん。その包容力溢れる眼差しはとても19歳の男の子のものとは思えない。
実際はしずちゃんの方が8歳も上なのに、照れながらポエムを読むしずちゃんは少女のよう。彼女を見つめる勝地くんは大人の男性のよう。
でもその一方で、時々照れに口元が緩むのを隠すように唇を噛んだり俯いたりしてる(でも目が笑ってる)勝地くんは年相応に初々しくもあって。
本当に、この二人を見ているとこちらがハニかんでしまいます。

(つづく)


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『恋するハニカミ!』(1)

2007-08-27 01:28:08 | 恋するハニカミ!
芸能人の男女をカップリングして一日限り(例外として二日以上に及ぶ前後編企画などもあり)のデートをセッティング、そのデートの様子をスタジオの面々のコメントとともに放映する形式のバラエティー番組。 

この番組(2006年4月14日放映分)に勝地くんが出るという情報を知ったとき、正直言って「嫌だなあ」と思いました。
デート番組というのも、相手が「南海キャンディーズ」のしずちゃんというのも・・・。

といってもしずちゃんが嫌いということではないです。そもそも「南海キャンディーズ」自体を知らなかったので(TVあまり見ないもので・・・)悪感情を持ちようもなかったんですが、調べてみれば大分大柄な女性であるらしい。
それが8歳年下、背は10cm近く低く、体の厚みは半分程度の勝地くんと並んだら、「男の方が可愛いじゃん」と視聴者に思われるのはまず必至。
身長180cm以上の30代イケメン俳優とかが相手ならお似合いだったんだろうに、あえて勝地くんと組ませたあたりの、なんだか「逆美女と野獣」路線を狙ってるかのようなキャスティング意図が、すごくしずちゃんに失礼なように感じたのです
(そういう私の発想もずいぶん失礼なんですが)。

彼女はお笑いの人であり、体が大きいのもネタの内なんだろうから、そうした扱いを受けることについても割り切ってるんでしょうけど、やっぱり気分良くはないんじゃないか。
その頃『週刊朝日』(2006年4月21日号、発売は放映日より前)での林真理子さんと「南海キャンディーズ」の鼎談で、「体が大きいのがイヤでコンプレックスやったんです」「高校、短大のころはちょっと病んでた感じです」と語っているのをたまたま読んでしまったこともあり、「これはしずちゃんにとって随分酷な企画なんじゃないか」と製作サイドに腹立ちを覚えたものでした。 

だから勝地くんには、彼女を守ってあげてほしいな、と思った。「キワモノ路線」を想定(期待)してるだろう視聴者の意地悪な目線から。彼女がコンプレックスや居心地悪さを感じなくてすむように。
それができるのはデートの相手である勝地くんしかいない。デートする以上は、しずちゃんには勝地くんのことを嫌な思い出にしてほしくはなかった。 

とはいっても外見的なバランスはどうしようもないし、緊張しいの勝地くんはお題をこなすので精一杯だろうし、何より「彼女を守ってあげてほしい」と言いながら、具体的にどうすれば「守る」ことができるのか私自身わからないしで、
「まあ多くは期待すまい。とりあえず緊張モードでおろおろしてる可愛い勝地くんを見られれば良しとしよう」などと思いつつ、放映日を迎えたわけですが・・・。 

――勝地くん。お見それしました。ごめんなさい。 

『フレンドパーク』でのヘタレっぷりがあまりにも可愛らしく印象深かったがために、彼の男気や共演者を立てる気配りの部分をいつのまにかすっかり見落としてしまっていた。
番組の最初の方での「男としてエスコート、じゃないですけど、できたらいいなあって思ってます」の言葉どおり、終始彼女を優しくリードし、ごく自然にさらっとした気遣いを見せていました。

私が望んだ以上の見事さで、彼は彼女を「守って」いた。
何か特別なことをするわけじゃない、体格差も年齢差も関係なく、一人の「可愛い女の子」として接することで、彼は彼女を輝かせていた。
照れくさそうな、はにかんだ笑顔を見せるしずちゃんは本当に可愛らしかったし、そんな彼女を見つめる勝地くんの眼差しは優しさと包容力に溢れていた。
「女の子を守る」というのはこういうことなのだと、まだ19歳だった彼に教えられた気がします。

そして、しずちゃんのオトメチックな感性と勝地くんの男気を見切った(としか思えない)うえで、一見「逆美女と野獣」なカップリングを仕掛け、実際とのギャップ=意外性で多くの視聴者を感動に導いたキャスティング担当者の慧眼と企画力に脱帽しました。 
次回、デートの内容を具体的に追ってみます。

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『さよなら、小津先生』(2)-6(注・ネタバレしてます)

2007-08-24 01:27:50 | さよなら、小津先生
〈第十回〉

・新人戦への出場決定を「君が伝えろ」とカトケンに言う小津。すでに去ってゆく身としてカトケンを前面に出そうとしているのがうかがえる。

・小津やカトケンの指示を待つのでなく、どこをもっと練習すべきなのか部員たちが自分で考えるようになっている。光蔭高校バスケ部の黄金時代と呼ぶべき時期。
彼らを見つめる小津の笑顔が嬉しそうで、そして彼らと別れねばならない寂しさも滲み出ていて・・・。

・「後輩がいるんだ。若いコーチだ」 よく考えてみれば光蔭高校では、いやそもそも教師としても小津の方が後輩なんだが。

・夜の広場?でバスケに興じるバスケ部5人組。私服なのとリラックスした笑顔のせいで、練習というよりはみんなで楽しく遊んでいるかのよう。
学校での練習を終えたあとでこれなのだから、いまやみんな根っからバスケが好きなのですね。

・生徒たちを見守るカトケンとみゅー先生の会話。
「ちょっと尊敬、かーのこと」と微笑むみゅー先生に、照れ隠しにおちゃらけて、あえて過去の「ダメ」な自分を踏襲するような台詞を言ってみたりして、「軽蔑」なんて言われちゃうカトケンの不器用さは相変わらず。
これ、この二人の黄金パターンの会話の流れですね。でも口では「軽蔑」とか言いながら、みゅー先生はちゃんとカトケンの「照れ」を理解したうえで「可愛い奴」だと思ってるんじゃないかな。

・なんだかんだでみゅー先生はカトケン宅にやってきて二人きりでお酒を飲んだりしてる。初期に比べて二人の距離がぐっと縮まっているのがわかります。
でも乾杯の時の、「僕と君のために」「僕と君の、何?」「僕と君の・・・新人戦のために」「それならよーし!(明るい笑顔)」というやりとりの後、一瞬カトケンが「ちぇっ!(まだ色っぽいネタはダメかー)」という顔をしているあたり、恋人同士になれるのはまだまだ先かな?という感じもします。

・わざとらしく小津が「87年のブランムートンがないな」と言ったときに、カトケンとみゅー先生が居心地悪げに腰をずらすタイミングがぴったりで笑ってしまいました。
反応がツーカーというか・・・こういうシーンを見ると、この二人お似合いだよなあと思います。

・「単に酔っ払うのが好き」「本当は私レモンサワーが好き」。ダンディなイメージを崩す発言を繰り返したあげく「ワイン好きの振りするとさ、女性にもてるじゃないか」。
みゅー先生は「やっぱりただのオヤジだったんだ」と言うけど、むしろこういう女好き(これも「振り」だと思いますが)な発言も、小津という男のダンディズムをより際立たせていて、格好良いと思うんですが。

・遥が井本だけに弁当を作ってきた件で拗ねてみせる小津と井本たちとの会話。「今度の小テストで五点マイナス」「えっ、俺関係ないでしょ」なんてやりとりから、彼らの信頼関係が伝わってくる。
そして小津にシュートを打って見せてくれと繰り返す井本。その表情もちょっと幼い口調も「ねだる」という表現がぴったり。
前回で井本が父に「捨てられた」こと、出会った当時の小津に父親(の悪い面)を重ね合わせていたことが描かれているので、彼が(おそらくは無意識に)小津を父親のように慕っているのが感じ取れます。
校長先生に「子供がね、甘えてきました」と苦笑気味に話す小津の顔もまるで息子のことを語るかのようです。

・体育館で集団で小津を囲む男女バスケ部員とバスケ部関係の先生たち。
険しい表情も含め一見吊るし上げめいて見えますが、それだけ彼らが小津を慕っているのが伝わってくる。新人戦についての説明なんて誰も聞いちゃいないし。
ただ年若い生徒たちはまだしも、カトケンたち先生までも(彼らの方がキャリアは長いのに)小津に依存する気持ちが強すぎるきらいはありますね。
佐野先生に「小津先生にすがろうなんてそんな甘いこと考えてるから」と言われて「違います」と言ってるけども。

・「わかるだろう君たちだって。私が先生に向いてないことは」。確かに型破りではあるかもしれないけれど、ある意味これほど先生にふさわしい人もいない。
でなければ何年も教師をやってる人々が、こないだまで銀行員だった彼を教師として信頼・尊敬したりしないだろうから。

・小津が学校をやめるのを「誰かのためなのかな」と看破する一葉先生。
実際小津の行動は(教師を辞めることで新人戦に出場できるようにする、銀行に戻ることでコモリやワンコのような「銀行の貸し付けの被害者」に償いをする、という二つの理由で)生徒のためだった。
「先生に向いてない」なんて言いながら、まさに先生そのものだと思います。

・「ヒーローになりたいのかよ。俺、あんたのそういうとこ嫌いだよ」。「嫌い」と言っているのに、「好き」だといってるように聞こえてしまう。そのあとの「やめんなよ!泣いちゃうぞ、俺」といういい年した男とも思えない言葉も。
そして「俺も・・・」と言葉を詰まらせる小津。しばらくの沈黙のあと、「飲むか」「高いワインじゃなきゃ許さねえ」。男たちの友情が切ない。

・教室の窓から校庭へと飛ぶ紙飛行機。この映像だけで、それを飛ばしたのが井本であること、彼をはじめとするバスケ部員たちが再び心を閉ざしてしまったことが伝わってくる。第一回を踏まえての、ごく簡素にして見事な演出。

・「あんたは俺たちのさ・・・」 直接小津に向かい合い、そして肝心なことは言えないまま皆の先陣をきって教室を後にしたのは松沢だった。
父親の横暴から助けられた経験のある松沢は、井本同様小津に「あるべき父親の姿」を見る気分が一際強かったのかも。

・「気づいたんだ、ヘタだって」 ストーリーの初期から時折挿入されてきた妙にヘタクソなブラスバンドの演奏には何の意味があるのかと思ってたんですが、ここに来て彼女たちのヘタさ加減ががバスケ部とリンクしていたのに気づかされました。
ちょうどバスケ部員らが小津に対する態度を硬化させてるタイミングでこの短いエピソードが入ることで、彼らの再奮起が遠くないのが示されています。

・職員室で小津に「ずっとそばにいてくれると思ったから!見てくれると思ったから!」と気持ちをぶつけるみゅー先生。
ほとんど愛の告白のような台詞ですが、続く言葉は「お父さんの代わりに」。いまだ恋愛よりも父親に対する想いの方が彼女の中では大きいみたい。カトケンが報われる日はまだ遠いようです。
小津が彼女を突き放したのはその「ファザコン」気質に冷水を浴びせる意味もあったんでしょうね。

・「コートを広く使え」と言う小津の指示を受けて、カトケンは「ディフェンスの練習」と別の指示を出す。それが自分の後を引き継がせようとする小津の意思に叶うことだと信じて。
この時、小津はカトケンに向けて目配せどころか目を合わせもしない。そういったわかりやすい合図は全く出さなくてもカトケンには通じると思っている。
そして皆がカトケンに従って動いた後で、はじめてカトケンの視線に頷いてみせる。二人の信頼関係がよくわかる場面です。

・小津の悪口雑言に「あんたが今まで言ってきたこと何だったんだよ!」と食ってかかったのは井本だった。
やはり彼がバスケ部メンバー中でも小津に対する想いが一番深いのでしょうね。井本を止めるカトケンの表情が何とも言えず切ない。

・「あんたなんかいらない!」「俺がこいつら勝たしてやるよ!」 小津に向かって怒鳴るカトケンもそれを聞く小津も密かに涙目。
小津の真意を何も知らされていない佐野先生が「あなたはやることがいちいちひねくれてる」と彼をちゃんと理解してくれていたのが何だか嬉しい。
この場面、二人とも後ろからのアングルで顔は映らないのに、声のトーンでちょっと苦笑してみせてる佐野先生の表情が自然と浮かんでくる。小日向さん、さすがの名演です。このあとの「やっとスリッパが似合ってきたのに」の泣き笑い顔も。

・小津の志、ダンディズムに敬意を払えばこそあえて彼を引き止めなかった校長先生。
生徒のみならず、先生たちからも深く信頼され、一葉先生や佐野先生のように何も言わずとも本心をわかってくれる理解者もいる(むしろ小津に精神的に寄りかかるところの多い先生―カトケンやみゅー先生、まなび先生―ほど、他人から聞かされるまで小津先生の「本心」を察することができなかった)。
第一回の時点では問題教師の集まりと見えた彼らが小津との関わりを通して一つ成長していればこそ。

・「殴るんなら腹にしてくれ。顔は私の命だ」 こんな気障な台詞が嫌味なく決まってしまうのはさすが小津。むしろ田村さんがさすが、というべきだろうか。

・小津に渡されたファイルをめくったみゅー先生は、はっとした顔で校門の方を見つめる。これだけ詳細なデータを残してゆく人がバスケ部をどうでもいいと思っているはずがないと気づいたのだろう。

・井本の、ひいてはバスケ部の生徒たちの思い出の品ともいうべき紙飛行機を手に、タクシーの中で静かに嗚咽する。彼が泣くのは第一回で銀行員としての再起を断念し教師になる決意をして以来。
あの時の涙は古巣の銀行や銀行の仕事への愛着よりも、再起が叶わなかった自分の無力さ、挫折感に対するもののように思えたが、今度の涙は光蔭高校とそこの先生、生徒たちとの別れを惜しむがゆえ。
最初は根っからの銀行員と見えた小津がいつかすっかり教師になりきっていた。だからこそ全てが片付いた後、彼は銀行ではなく学校を選んで戻ってくるのですね。

 

〈最終回〉

・不良債権の処理を行うにあたって、債務者を最優先にすると宣言する小津。
小津が銀行に戻ったのは、バスケ部を新人戦に出場させるために教職を引いたから、というだけでなく、コモリ(父親経由でワンコも)の人生を揺るがした「銀行屋」として、彼らのような犠牲者をこれ以上作るまいと思えばこそだったのが改めて伝わってきます。

・小津が残したノートを破れとカトケンが迫られたさい、まなび先生が泣き出す。
「あんたも何か知ってんだな!」といつになく興奮気味にせまる佐野先生。小津先生を本当に好きになってたんですね。ほかの先生たちとの息も実にぴったり。
まなび先生の「自白します」がいかに良心の痛みを覚えていたかを表していて絶妙。

・小津先生の真意を知らされたバスケ部員たち。
「引っ掛かったか」と例のニヒルな笑みを見せる三上と「汚いよな、あいつ」と一見罵倒めいた言葉を口にする松沢。その乱暴な言い方を咎めないどころか「本当よね」と肯定するみゅー先生。皆小津先生を慕っていればこそ。

・バスケ部一同を先導して興洋銀行に乗り込むみゅー先生。いざ入る段になると彼女が一番気後れしてるのが可笑しい。
受付でも「小津先生・・・」と言いかけて松沢につっこまれ、「社会見学ですね」との受付嬢の言葉にも一人反応が遅れてるし。
そしてこの時真っ先に「ぼくたち光蔭高校の・・・」と切り出したのがワンコだった。絵理を連れ戻しに地下クラブ?に乗り込んだときといい、案外度胸のいい一面がある。
そして終始三上がニコニコと機嫌が良い。受付嬢が美人だったからかな?ピースまでしてるし。

・いきなり銀行まで訪ねてきたバスケ部員たちに対して小津は嫌な顔をしない。また訪ねてくるからには自分の真意がバレたのもわかったろうに動揺も見せない。
バカ正直なカトケンがいつまでも自分を悪者にしておけるはずはない、知れるのは時間の問題だと思ってたんでしょう。

・役員専用のレストランで食事するバスケ部員たちが、意外にもマナーがよさそう。

・小津に問いかけ、また思いを口にするバスケ部一同。
「そうなんでしょ?」と言ったあとのワンコの目には、静かな中にじっと訴えかけるような強い光があって思わず引き込まれてしまった。

・「新人戦見に来て」と繰り返す井本。少し幼い言葉つきの中にすがるような真剣な響きがある。表面はクールなようで、一番小津先生を求めているのは彼なんでしょうね。

・「サボッたことを問題にしてるんじゃない。会いに行ったことだ。小津先生は銀行に戻った。いつまでもすがってちゃいけない。自分たちで新人戦を戦いなさい」。 
授業をサボッたこと自体は無問題と言い切るのは「学校組織の一員としての教師」にはあるまじき発言ですが、後半部分は「生徒を教え導く人生の指南役としての教師」にふさわしい言葉でした。
当初は前者のタイプの教師の典型として登場した佐野先生が、本来の意味での「教師」に変化していった(元々の彼の在り方に返った)のがこの台詞に集約されているようで、なんだか嬉しくなりました。

・荷造りする小津先生の台詞「カトケン、君さ、恋人と同棲解消するわけじゃないんだからさ」に対して、「似たようなもんだ」と素で返すカトケンに驚く。
小津先生をあれだけ迷惑がっていたカトケンなのに、今やすっかり彼なしの生活は考えられなくなってるんだなあ。

・「みゅー先生の弱点教えようか」の言葉に「知りたい」とにやけ声で応じるカトケン。
「耳の後ろに息吹きかけるんだよ。みゅーはそこに弱い」というスケベチックな小津発言に「なんでそんなこと知ってんだよ」とツッコむのはいつものノリだが、口調に笑いが含まれていて、別れを前にいつも通りのしょうもない掛け合いの一つ一つを大切に、愛おしさをもって噛み締めているのが感じられる。
そのあとのやりとりもすべて口調に鋭さはなく、いつまでもこうやってくだらない言い合いをしていたい、小津先生と過ごす時間を少しでも長引かせたいというしみじみした思いが伝わってくる。切ない場面。

・「あいつらにコートに忘れ物させるな」 シンプルな中に感慨の詰まった名台詞。

・銀行で不良債権処理に取り組む小津とバスケ部の練習の様子(カトケンの頑張る姿を主軸に)が交互に描かれる。
小津は仕事の合間にボードにフォーメーションの図を書いてみたり紙飛行機をもてあそんでみたりしているし、生徒もカトケンも小津を思いながら練習に励んでいる。
離れて別々のことをしていても彼らの心はちゃんと繋がってるのですね。

・試合を前にカトケンの言葉を表面は淡々と―おそらく内心ではプレッシャーにつぶされそうになりながら―聞いていた部員たちが「小津先生からみんなにメッセージ」と聞いたとたんはっと顔を上げる。
小津本人はその場にいなくても彼の言葉は部員たちにもカトケンにも圧倒的な影響力をもっている。

・以前は井本と三上を中心として攻める試合運びをしていたが、この試合では、やはり二人の間でパスが行き交うことが一番多いものの、ワンコや松沢にボールが渡る場面も結構あって、全員一丸になって戦っている、それができるほどに全員に実力がついてきたのが示されている。
個人的には初めてワンコがシュートを入れる場面があったのにちょっと感激。

・久々のコモリ登場。髪もすっきりと短くなって、荒っぽい現場での肉体労働を「教室で座ってるよりは楽です」と(強がりであろうとも)さらっと言う彼は以前とは別人のように精神的に逞しくなっている。
そして「親父が応援してこいって」との言葉に、かつて倒産・夜逃げの危機に瀕してもなお体面ばかり気にして、息子の気持ちなど考えていなかった(ように見えた)父親との間も上手くいっていることがうかがえます。

・島谷(大杉漣さん)の「生徒か?」という問いに小津は「いや」と答える。それは続けて説明するようにコモリが正確には「元生徒」だからという意味も勿論あるだろうが、自分はもう「教師」ではない、「銀行屋」としてコモリのような子供の不幸に対し責任を取るのだ、と言っているように思えました。
島谷がコモリに「先生今行くから」と言うのも、小津の言葉を受けたうえで「おまえは銀行屋じゃなくて教師だ」というニュアンスを含んでいたのでは。

・第一回から一貫して銀行側の勝手な都合の代弁者として小津の人生を左右しつづけてきた島谷。ここで初めて彼は「自分の責任」によって行動し、小津を教師に戻してやる。
興洋銀行の一員としても個人的友人としても小津を必要としているはずの彼があえて小津の背中を押すところに静かな感慨があります。

・相手側のファウルで松沢が失神・退場して光蔭高校は4名になってしまう。ここでコモリが参戦する!と思ってしまったのは私だけでしょうか。
ところで意識を失ってる松沢に皆が呼び掛けるシーンで「ベースケ」と言ってるように聞こえるんですが・・・ニックネーム?ひょっとして「スケベ」のもじり?
一葉先生に色っぽく迫ってた?前科があるだけに、そんな仇名が付いてても不思議じゃないような。

・コートに颯爽と入ってきて、松沢を揺り起こすコモリの挙措にも言葉にも表情にもかつてない自信が満ち溢れている。
それは若くして自力で生計を立てているという自負心と、何より一度は帰りかけた小津先生を試合場に連れて来た(帰りかけた事情はよくわかってないでしょうが)ことへの誇らしさゆえだったんじゃないか。皆を促すように観客席の小津先生を見上げたコモリの晴れやかな笑顔を見ていると、そんな気がしてきます。
そして松沢を抱き起こすさい「ちょっとどいてくれ」と三上を突きのけている。抱き起こそうとすれば位置的に三上をどかすことになるのは自然なんですが、それが他ならぬ三上―コモリが抜けた後に入った新メンバー―であるだけに、この時瞬間的にコモリが光蔭高校バスケ部一員としての立ち位置を回復したことが暗示されているのかな、と思えます。

・「銀行改革のための草案」を発表する島谷。新体制づくりはいいとして、「皆様経営陣の抜本的刷新」の言葉に驚いた。
たしかに大幅な改革を行おうというのだから体制の大幅刷新が図られるのは当然なんですが、首のかかっている経営陣から相当な反発が出るのは必至。
それを容易に予測できたはずの島谷が、あえて一人で反発の矢面に立つ選択をした(「抜本的」という発声の力の篭め方に彼の覚悟のほどがうかがえる)ことに改めて小津に対する彼の友情を感じました。

・観客席の佐野先生がカトケンの采配に「何やってんだよー」といらいらしたりしているのに、彼が前の高校でバスケ部顧問だったことを思い出しました。
バスケ部員に刺されたのがトラウマになり生徒に真剣に向き合う気力を失っていた彼が、今やバスケ部の戦いぶりに一喜一憂している。小津先生を媒介に心の痛手を乗り越えられたのですね。

・「これで満足だよな」と言う井本を見る光蔭高校のメンバー(コモリ含む)はそれぞれにいい顔で笑っている。対して勝ったはずの浅倉側のほうがすっかり負け犬の表情。
彼らもそれがわかっていたからこそ光蔭に自分たちだけの試合を挑む。「やろうぜ、俺たちだけで」と井本が言ったときの浅倉キャプテンの笑顔が印象的です。

・「教えることはない。教わったのは私だ」。会議の席での島谷の「小津くんが学校で教わったことだそうです」と対応する台詞。
先生が生徒に一方的に教えるのではなく、彼らからも教わり成長してゆく。成長してゆかねばならない。それがこの作品のテーマなのでしょう。

・自分たちでタイムをとり作品を決める部員たちの晴れやかな顔を離れた場所から見つめる柳沼先生。彼らのこんな顔見たことなかったんでしょうね。思わず熱く指示をとばす彼が竹刀を放り捨てる場面が象徴的。

・勝利に躍り上がって喜ぶバスケ部員+先生たち。佐野先生まで文字通り飛び上がってる。ピカとワンコが抱き合う姿。この二人本当仲良いんだな。
そして皆が喜びにひたる中、井本が相手キャプテンに握手を求める。真っ先に冷静かつスマートに動けるあたり、やはり彼がキャプテンなんだな、と感じさせます。
そしてもちろんダンディが身上?の小津先生ははしゃぎまわったりはしない。さすがです。

・いかにもやる気なさげな新入部員たちの傍若無人ぶりを微苦笑で見守るバスケ部五人衆。
バスケットボールでサッカーする新入生たちを直接叱らないのは、小津の「一つだけ教えてもいいか」を待ってたんだな、というのがラストシーンで明かされる。
この新入生たちも小津や先輩達に感化されて立派に成長してゆくのでしょうね。
そして翌年先輩たちが卒業したあとは、必然的にワンコが一人でこの後輩たちを束ねていくわけだ・・・ちょっと不安が(笑)。


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21歳

2007-08-20 00:11:34 | その他
正直去年のこの日は、素直に喜べなかったのです。
当時私がリアルタイムで知っていたのはほぼ19歳の彼だけ、その19歳―少年以上青年未満の彼があまりに「綺麗」であったがゆえに、20歳という大人の年齢になってしまうのが、とてももったいないような悔しいような心地さえ覚えたものでした。

実際には20歳になっても幼さの残る面差しも透明感も相変わらず(大人びたかなと思ってもすぐに揺り返しがくる)だったので、最近はそうした胸苦しさを感じることもなくなっていたのですが、8月20日が近付いてくるにしたがって、彼がまた一つ年を重ねる―大人になってゆくことに、一抹の寂しさがよぎるように。

そんな折読んだインタビューで、衝撃を受けたのが次の一言。

「早くシワができてほしいんですよ。年を取って、味のある役者さんになりたい」(「escala cafe」参照。)

インタビュー記事やトーク番組などを見聞していると、彼の発言に胸をつかれることがしばしばあるのですが、これは相当ガツンときました。
一般人でもアンチエイジングに精を出す昨今、20歳前後でもう「劣化」したの何のと言われてしまう若手俳優・女優さんたちは、容姿を保つことへのプレッシャーも相当なはず。
なのに彼は、女性も羨むような滑らかな肌と端整な目鼻立ちを持っていながら、こんな言葉をあっさりと口にする。
「年を取って、味のある役者さんになりたい」というのは他のインタビューでも言ってましたが、普通なら「老化」「劣化」と見なしてしまうだろう皺を、成長の徴、人間的な味として捉えていることに驚愕しました。
若さにしがみつくどころか年を重ねることを楽しんでいる。
時に現状に満足してしまいそうになる自分を叱咤しながら、未来はより輝かしいものだと真っ直ぐに信じて、いつも前を見つめ続けている。
こんな彼はきっと40になっても50になっても、「老化」ではなく「成長」しつづけてゆくのでしょうね。伸びやかな肢体や肌の色艶を失う代わりに、もっと大切なものを身に付けながら。
今の彼よりさらにずっと素敵な、渋い大人になった彼に出会える日が楽しみです
(本当言うと今より素敵な状態というのが想像つきませんが。私にとってはとっくに最高値です)。
ゆっくりと理想の自分へ向かって歩いていってください。今日はその長い旅路の里程標。


お誕生日おめでとう。

 


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『さよなら、小津先生』(2)-5(注・ネタバレしてます)

2007-08-17 00:34:41 | さよなら、小津先生
〈第九回〉

・現在はチームを抜けたコモリが起こした暴力沙汰が今ごろ響いてくる。
このエピソードがあるから、コモリが最終回で再登場し皆を鼓舞するのが、「過去の自分の行為に対する落とし前」(本人に自覚はありませんが)の意味合いを帯びる。

・出場停止を生徒たちに知らせるにあたり、小津もカトケンも彼らに殴られるのを前提にしている。
「だらだらしてた」頃の彼ら自身に原因があるのだから、本来先生たちが殴られる理由がない
(実際事情を聞き知った彼らは「俺らの態度が悪かったから・・・」と小津たちを責めなかった)。
生徒たちが受けるショックを慮って、出場停止になった本当の理由は伏せておくつもりだったのでしょうね。小津やカトケンの生徒への思いやりに胸がじんとします。

・「(カトケンの)あの背中見て何も感じないの?」という一葉に対し「華奢ねえー」と返すみゅー先生。
一見一葉先生の意味したところを無視したような言い草ですが、その後嬉々として?カトケンを追いかけ同行してるところをみると、「頼りないからあたしが守ってあげる」というニュアンスだったのかも。

・銀行に戻ることを拒否し、自分がやったことの責任は、俺は俺のすべき場所=学校で果たすと宣言した小津を見送る絵理の顔には笑顔がある。
小津との和解のエピソードを見ても、彼女が「銀行員小津」より「小津先生」の方が好きなのは明らかですね。

・柳沼先生(渡辺いっけいさん)の竹刀を見咎めるみゅー先生。
子供は力で押さえつける必要がある、と語った柳沼に「そうかな」と言ったときのちょっと見下すような笑みは、かつての自分を客観視できるほどに彼女が「成長した」証なのでしょう。

・わざわざ金髪を黒く染めてマナーの良さをアピールするピカ。しかしその隣で井本が金髪のままなのはいいんですかね(笑)。

・人のチームのマナー違反、スポーツマンらしさを問題にする柳沼先生が、そう言ったそばからキャプテンに「挑発しろ。何をやってもいい」なんて指示を出す。
この時キャプテンは「軽くショックを受けたが大して驚いてはいない」という表情をしてる。
こうした指示が出るのに彼(チーム)が慣れていること、けれどそれを快く思っていないことをこの時点で示して、最終回での彼の「造反」の伏線としている。

・「頭悪くてバスケ出来んの?」と言葉で挑発された松沢は一瞬顔を強張らせるが、ちょっと間があったあと「バカでーす」と軽く受け流す。
この「間」のとき、彼はあさっての方を見て実にいい顔で微笑んでいるのだが、何を見ていたのだろう。小津先生?それとも一葉先生?

・三上が体をぶつけられたのを見て「ファウルだろ今のは!」と激昂するカトケンを、「落ち着けカトケン」と当の三上が諭す。
絵理を助けに怪しげなクラブ?に乗り込んだ時といい、最終回で小津を興洋銀行に訪ねる時といい、いざとなると先生より生徒たちの方が冷静なのが面白い。

・「挑発に乗ったふりをして相手を掻き回せ」と指示する小津。誰に対してどのように動け、と具体的に言うのでなく、彼らの自主判断に任せている。
ゲームの細かい展開など読みきれるはずがないので具体的に指示しようがないのも確かですが、相手チームを「偏差値の高い奴ら」(相対的に光蔭高校バスケ部員たちは「偏差値の低い奴ら」ということになる)と言いながら、生徒たちの「頭の良さ」を信じているのがわかる場面。

・殴りかかる振りをしながら左手で相手のボールを叩き落とすピカ。「キレやすい」キャラクター的にもこの役回りにピカはぴったり。
しかしたまたま相手がピカを挑発にかかってきたからよかったものの、例えばワンコが同じ事をやられてたら・・・。

・ぎりぎりで得点を入れ、無事「勝利」したさいに、ワンコが井本に抱きついている。
基本的に受け身のワンコが自分から他人に抱きつくというのはかなり珍しい。皆で絵理を「救出」したさいの、「クラブ行きたい!」に通じるはしゃぎっぷり。
両者を考え合わせると、彼がはしゃぐのは「嬉しいとき」というより「達成感を感じたとき」なんじゃないかなと思います。

・和気藹々と体育館を出て行く光蔭高校チームを浅倉学園の面々が呆然たる面持ちで見送る。
このとき三上がカトケンの肩に手を回しているが、教師(コーチ)と生徒がこんなふうに接している姿は、浅倉学園の連中には考えもつかないものだろう。
ところで光蔭高校バスケ部員たちはカトケンに対するほど小津には馴れ馴れしいスキンシップを行わない。
呼びかけもカトケンのことは仇名で呼ぶのに小津は常に「先生」。彼らの中でカトケンは仲間、小津は先生、という線引きが出来てるのでしょうね。

・試合が終わった後なのに、公園?でバスケをする一同。無事新人戦に出場できるのが嬉しくて、エネルギーをもてあましてる感じなんでしょう。
すっかりバスケ部の一員になりきっている三上を見る未句は、醒めたようなちょっと複雑な顔をしている。
以前のクールさはどこへやら、すっかり男の子の顔をしている三上が可愛くもあり、自分が入れない世界に行ってしまったようで寂しくもあり、という心境なのでしょう。
そのへんの心情をしっかり捉えてバスケ部マネージャーに勧誘する小津はさすが。
しかしこれまでいろんな女の子をマネージャーにと口説いてきた小津、未句をマネージャーにする案を今まで思いつかなかったんですかね。

・「あなた一番マナー悪いんじゃないのー」と言う佐野先生が微妙に楽しそう。いつのまにか小津先生大好きになってるんだなあ。

・「(お昼ごはん)作ってきたのに食べてくれないんです」。
井本と遥ってどの程度の仲なんだろう。実は第一回の段階ですでに付き合ってたりして。

・「幽霊みたいな顔してた。あのときのあんたみたいにね」。今の小津はそうじゃない、と暗に言っている。

・井本の回想シーン。幼い井本の傍らで、家を出てゆく直前の「幽霊みたいな」父親がいくつもいくつも紙飛行機を折っている。
その一つを井本に手渡したことからすると、これはお父さんなりに「捨てて行く」子どもに対する精一杯の愛情を示した行為だったんでしょうが(普段からよく紙飛行機を折ってあげてたのかも)、井本にとっては紙飛行機は父との楽しかった日々に繋がるものではなく、むしろ「幽霊」の象徴的アイテムになっているように思われます。
第一回で授業中に紙飛行機を飛ばしていた時の気だるげな様子からいっても。
「親父のようになりたくない」と言いつつ、当時の彼もいわば「幽霊みたい」なものだったのでしょう。
小津に「あんた、幽霊みたいだな」と言ったのも、一種の同族嫌悪だったのかもしれません。

・自分にはバスケしかないと語る井本。彼がある意味バスケに自己の存在理由を見出してると知ったことが、小津に去就を決めさせることになる・・・。

・マネージャー姿の未句を見て、「三上と付き合ってなかったら口説きたい」と実に彼らしい誉め方をする小津。三上と付き合ってなくても生徒ですから(笑)。

・「俺は犬か」「三秒ルールとは?」 いつのまにかすっかりカップルな雰囲気のカトケンとみゅー先生。
しかしカトケン、バスケ部顧問をやりながら、これまで三秒ルールを知りませんでしたか。

・今もってちゃっかりベッドを占拠している小津に笑う。しかし「フォーメーション覚えたか」と確認をする小津の心情を思うと・・・。

・「子供はいつか大人になるんです。彼らはちゃんとそれを知ってるんです。だから私を許せなかった」 
こう語る小津の脳裏には第一に先の井本との会話があるのでしょう。
最初は「教師は腰かけ」と言い切っていた小津が短期間ですっかり教師の顔になっている。

(つづく)


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『さよなら、小津先生』(2)-4(注・ネタバレしてます)

2007-08-13 01:31:38 | さよなら、小津先生
〈第八回〉

・バスケ部員一同(ワンコ除く)の「勝つまで言うこと聞いてやる!」 
いつのまにかすっかり三上まで息が合っているのに心なごむ。

・ワンコの怪我のことで松沢に話しかける一葉先生。ツーショットまずいんじゃ、と一瞬ドキッとしたがピカもいたのでホッ。
「学校でやられたんなら俺たちに言うよね」という台詞から、彼ら五人の心が通じ合ってるのが伝わってくる。

・絵理が井本と遥に小津がバスケの選手だったこと、バスケを止めたときの辛さを語る。
それを絵理が知っているのは、おそらく母親経由ではなく直接小津が話したからだろう。
カトケンたちが絵理を取り戻したあと、親子の間に腹を割った対話が行われたのだなあ、となんか嬉しくなった。

・「応えてほしくて伝えてるんじゃない」とみゅー先生に言い切るカトケン。
それも先にはみゅー先生が小津先生の話ばかりするのに嫉妬していた彼が、自分自身小津先生に感化されるところが大きかったことを今は正面から認めている。
本当にこのところのカトケンの人間的成長は目ざましい・・・と思ったところで「何で二人でいるのに小津先生の話をしてんだよ!」と一人ツッコミ。悟りきれないあたりがやはりカトケンらしい(笑)。

・ピカの家を訪ねてゆくワンコ。母一人子一人の井本のところには泊めてもらいにくいだろうし、あの父親のいる松沢の家は論外、三上はまだ馴染みが薄い、ということでピカなのか。
ピカの家の場所は知っているのに警官が表に立っていることは(政治家の息子だということも?)知らないんだなあ。

・ワンコの事で彼の両親に会いたいと言い募る一葉先生。
彼女自身が虐待経験があるゆえだが、本来ならまずワンコのクラスの担任を口説くべきでは。一葉先生が担任なのかな?

・「教員として呼んだんじゃないからな。仕事に熱心になったわけじゃないからな。おまえらなんか愛してないからな。」 
何を言っているのかこの人は(笑)。素直じゃないんだよなあ。

・ワンコの父親の目の座り方と赤らんだ顔に、彼が昼間から酒を食らってたろうことが推せられる。

・「俺、先生の顔になってないか」と鏡を見つつカトケンに問う小津。
人一倍「先生らしい」くせにそれを認めない。本当に素直じゃない(笑)。

・小津の家庭訪問の件で学校に怒鳴り込んでくる長瀬父。その場で抗議せずに後から怒鳴り込むあたりが今どきの親らしい。

・小津が長瀬家を訪れたと知って問題になってるにもかかわらず、一葉もみゅーもまなびも嬉しそう。
それに対し微笑む小津。確かに「先生の顔になっている」。

・一人屋上で弁当を食べる佐野先生。職員室での彼の孤立が見えるような気もする。でも愛妻弁当ですよね?
佐野先生の奥さんはかつての熱血教師な彼と比べて現在の彼をどう思ってるんだろう・・・?

・自分の虐待経験に照らしてワンコが親に殴られてるのを悟った一葉先生。
ワンコの父親の暴力はリストラ後からのようだけど、ワンコが小さい頃にも躾と称した体罰(みゅー先生がお父さんにされたような愛情を感じさせるものではなく)が行われてたのかも。
日頃からのどこかおどおどした態度にはそうした背景があるのかもしれないと思いました。

・「お母さんをやらないで」。シンプルな言葉のなかに気弱な彼の、母を思う気持ちがこもっている。
父親に向ける表情も、大げさではないのに彼の脅えが伝わってくる。

・カトケンとみゅー先生の会話。先生たちはみなワンコを心配しつつも、彼を見捨てる方向性の佐野先生を非難するのでなく、そうせざるを得ない彼の心情を思いやっている。第一回の頃と比べ先生たちの精神的成長がわかる。

・小さく嗚咽しながら我が身を抱くようにして街中を歩くワンコ。
鼻血を拭う余裕もなく、ダッフルコートだけをつかんで飛び出してきたのだろう状況が想像されます・・・。
先の父親に脅えるシーンもそうですが、勝地くんは体格もそう小さくなく(高一のときに171cmなので中三時点では170弱くらい?)、本来顔立ちもわりと大人っぽいのに、表情は小学生か?というくらいに幼く心許ない感じが出てるのがすごい。

・カトケンの家のチャイムを鳴らすワンコ。今度はピカでなくカトケン、というか小津先生を頼ったのは、先に松沢の父親に敢然と立ち向かい松沢を救った小津に期待するものがあったからでしょう。
ピカの家に泊めてもらったところで、それは単なる一時の逃避にすぎない。根本的な解決は子供だけではどうにもならない。社会的に力を持った大人でなくては、と思ってのことだったのでは。
当初は大人など信じようとしなかった生徒たちが、信ずるに足る大人もいるのだと認めつつある。彼らの心情の変化が、ワンコの行動に代表されているように思えます。

・「小津先生と話して、今の私は幽霊のようかもしれないと思った」。
生徒たちのダメさ加減を見ていると足が震え出すという佐野先生。昔の彼は生き生きしていたのだろうこと、本当は小津先生のようでありたいと思っているのがよくわかる。
同時にかつて娘と井本に幽霊呼ばわりされた小津が完全に幽霊状態を脱していることも描かれています。

・佐野先生が体育館でワンコを発見するシーン。
懐中電灯の光に浮かび上がる脅えた表情。「せんせ・・・」とつぶやく弱弱しい声。そして涙目で佐野先生を見上げ微かに嗚咽する。
何て顔をするのだ。これで見捨てたら一生後悔に苛まれそうな、まさに捨てられた子犬の風情。
壁に頭を持たせかける角度や最低限の表情の動きに、ワンコの辛さ、恐怖、甘え、寄る辺なさなどが集約されている。その表現力に改めて驚かされました。

・およその事情はわかっていながら、「閉めるから帰りなさい」「家のことは相談にのれない」ときっぱり言う佐野先生。
けれどその表情はとても痛ましげで、立場上ワンコを突き放さざるを得ない彼の辛さが滲み出ている。
それでもワンコの姿から目をそらそうとしないのは、生徒を救えないなりにせめてその痛みと向き合おう、自分の無力から逃げまい、としている佐野先生の誠実さの表れではないかと思います。
長瀬家に電話したさい、皆に口々に責められてもあえて「自分だって辛いんだ」という顔をしてみせなかったのも。

・小津先生と佐野先生を部屋に呼んだ校長先生が二人にお茶を入れる。その腰の低さに驚いた。
けれども先生たちに媚びてるのではなく、語り口調は堂々と、話の内容も理路整然としている。
偉ぶらず、先生たちの気持ちも理解し、かつ現実もしっかり見つめている校長先生の人格者ぶりがこの短い場面から伝わってくる。
他の学校にいられなくなった生徒や先生を積極的に受け入れているのも、先に言われていた単なる経営上の妥協だけでは決してないんでしょう。

・「ごめんなさい、心配かけて」。一音ずつ区切るような発声に、ワンコがつとめて冷静に言葉を押し出しているのがうかがえる。家庭の事情を語る口調もしっかりしている。
けれど「だから、いいんです」あたりからだんだん声が湿っていって「「今日はおまえを殴れるな」って笑いかけてくるから・・・」でついに涙声になり鼻をすする。
この場面、右眉のわずかな動きとやや伏せぎみの目、声のトーンで感情の起伏を繊細に表現してるのがさすがです。

・職員室でも校門前でもワンコは父をかばうような発言をしている。
「虐待されている子は親をかばうもの」という『永遠の仔』の中の台詞(概要)を彷彿とさせます。
前の学校でも光蔭高校でもクラスメートにいじめられ、自分とさして体格も変わらない父親に殴られるままのワンコの弱弱しさを思うに、やはり小さい頃にも父親からの暴力を経験してるのかもしれません。

・ワンコの話を聞く先生たちはそれぞれに痛ましげな、あるいは重々しい表情を浮かべているが、小津先生だけはその表情にはっきりした怒りがあるように見えた。
すぐ後の長瀬父との衝突の基盤がここに示されている。

・力づくで引っ張る父親に「やめてよ、やだ!」と抵抗するワンコ。
ずっと内に溜めていた「家庭の事情」を先生たちに話したこと、小津に対する父の失礼な態度への怒りが、微弱ながらも彼に抵抗の気力を与えたのでしょう。
それにしても「やだ!」という口調も声のトーンもまるで幼い子供のよう。
まだ変声期途中の声(『永遠の仔』の時ほどじゃないですが、叫ぶシーンになるとやはり若干割れぎみになる)の不安定さも、ワンコの弱弱しさをいっそう際立たせている。
ちなみに父親がワンコを無理やり連れ出そうとする姿は画面には映らず、カメラは彼らの争う声を背景に先生たち(特に佐野先生)の表情を追っている。
この回のメインテーマが「親の暴力に苦しむ生徒」ではなく、「家庭内暴力に先生たちがいかに立ち向かうべきか」と、「かつては「教職は銀行に戻るまでの腰掛け」と言ってはばからなかった小津先生の立ち位置が「教師」として定まる経過」であることの象徴。

・「警察呼ぶぞこの野郎!」 先には生徒に向けられた(しかもヒステリックに裏返った声で)台詞が今度は生徒を守るために力強い口調で発せられる。
そしてこれまで反目していた、教師として認めていなかった小津先生を「銀行屋じゃない、教員だ」と断言する。彼らの「和解」が胸を打つ名シーン。

・ワンコを送って校門まで歩く一同。その中にピカと松沢が混ざっている。
今回の件でワンコを一番案じていた二人は、事情を聞いて(誰が知らせたのか?)駆けつけてきたらしい。彼らの結束の固さにじんとする。

・「お父さんとこ、帰ります。家に帰ります」というワンコは、静かながらも今までになく晴れやかな表情をしている。
父親が今後暴力をふるわない保障はないし(職が見つからない限り、結局彼の苛立ちは解消されない。見つかったら見つかったで「前より給料が下がった」とか新たな不満が出てくるだろう)、失業保険に頼ってる状態なので財政的にも次第に逼迫してゆくはず。
実質的には何も解決してないようなものだが、それでも彼が「家に帰る」ことを選んだのは、先生たちが彼の状況を理解し彼を守ろうとしてくれたことで、家の外に「信頼できる大人」を持つことができたからでしょう。
どうにも辛くなったら逃げ込める場所を確保した彼は、そのことによってかえって逃げることなく問題に立ち向かえるようになった。少し強くなったワンコの笑顔が眩しいです。
クラスメートのいじめにも、きっと少しずつ立ち向かっていけるようになるんではないでしょうか。

・歩きながらピカがワンコの肩に手を回して抱き込むようにする。
第一回でも同じような構図があったが、ワンコの「やめてください~」の台詞ともあいまって、先輩が後輩をなかば恫喝してるようにしか見えなかった。
それがここでは後輩への思いやりと暖かな連帯を感じさせるのは、これまでのストーリーの中で、一見荒っぽく無神経な彼ら(とくにピカ)の、存外センチで仲間思いの部分が視聴者にしっかり印象づけられてきたからでしょう。

・「調子にのって、あんまり熱血先生にならないでよね」。
「教員として呼んだんじゃないからな」とか「先生の顔になってないか」とか、教員らしさを否定しようとする小津の台詞がたびたび登場したり、その一方で小津にずっと反発してきた佐野先生が小津を「教員だ」と言い切ったり、小津が教員であるまいとしながらその実すっかり「教師」になっていってる姿を描くのが、この回の肝だったのだと思います。
そしてここで「教師」小津がきっちり周囲に(小津自身にも?)認知されたところで、次回以降小津が教師を辞めざるをえないような事態を描いてゆく。このへんの構成はさすがによく出来てるなあと思います。

 (つづく)


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『さよなら、小津先生』(2)-3(注・ネタバレしてます)

2007-08-10 01:32:59 | さよなら、小津先生
〈第六回〉

・練習のたびにコモリのタオルを椅子に結びつけるピカ。
彼のみならず一見ドライな現代っ子たちが内面は存外センチだったりするのが何となし嬉しい。

・本を逆さに読むみゅー先生。それ自体はベタなギャグだが「下から読むのが好きなの」という開き直りは新しいかも。

・小津先生の「時代劇が好きなんでね」に笑ってしまいました(田村さんの代表作に「眠狂四郎」があります)。

・カトケンの思いをよそに小津先生の話ばかりするみゅー先生。なのにあえて気づかぬふりで彼女を明るく励ますカトケン・・・切ない。
小津先生に「みゅー先生の相談にのってやれ」と詰め寄るシーンにも、ちゃんと彼女の内面を見て細やかに気遣ってるのがわかります。
このへんからどんどんカトケンの株があがってゆく。

・小津先生と娘の不和を知ったまなび先生の笑い方が・・・。なぜそんなに嬉しそうなんだ(笑)。

・柔軟体操するバスケ部員たち。井本=森山くんの体の柔らかさに驚く。さすがダンサー。

・「大久保先輩喜んでくれるかな。こんなんで勝ったって」というワンコ。三上にすごまれても、引かずに毅然と言い返している。
基本気弱ないじめられっ子だけれど、存外芯の強い一面がある。先輩たちが一緒の時だけかもしれませんが。

・三上がタオルを投げ捨てたのに真っ先に怒ったのはピカだった。彼の気短さは情の深さでもあるのですね。

・いつも皮肉っぽいクールな態度を取ってきた三上が初めて正面から怒鳴り出す。
彼がバスケ部に染み付いている「コモリの影」に苛立ち続けていたのが明らかになる場面。
自分を本当には受け入れようとしない部員たち(松沢の「俺たちは大久保と5人でバスケやってんだ」はあまりにも残酷な言葉)に怒るのも、先にバスケそのものに妙に反発していたのも、『スラムダンク』の三井みたいな、「本当は人一倍バスケがしたい」気持ちの裏返しなんでしょうね。

・バスケ部全員煙草をやらないという意外性。そしていかにも優等生な遥(一戸奈未さん)が密かに煙草を吸ってるという意外性。
人もあろうにピカが「体のこと考えろよ」などと説教してるのが笑えます。いきなりモラリストだなあ。

・コモリのタオルを燃やす井本。
この時タオルを火から引き上げようとするピカを羽交い絞めにし、「三上と5人でやんだよ!」と叫ぶように言ったのは松沢だった。
先に三上を否定するようなことを言った彼が井本に続いて三上を受け入れた。
井本がタオルを火にくべる前の場面で驚いたような松沢の顔がアップになるのは、彼の決意の前振りなのでしょう。

・コモリの名を叫ぶピカの声の悲痛さ。まるでコモリ自身を燃やされてるかのように。
目を伏せ痛みに堪える井本、暴れるピカの後ろで泣き出しそうな顔のワンコ、静かな感動を表情に湛えている三上。
小津やみゅー先生も含め全員の表情が実に良い。

・井本にパスを回し彼をキャプテンと認めた三上。
小津の言ったとおり生徒たちは自分自身で問題を解決し、先生に影響を及ぼしさえした。
それを小津が素直に喜ばないあたりの大人げなさと、呆れつつそんな小津先生を受け入れる生徒たち。今回は彼らの方が大人かな。

 

〈第七回〉

・同級生にたかられるワンコを助けるバスケ部の面々。三人だけどゴレンジャー(笑)。

・階段を降りつつ自分の「格好いい先生」ぶりににやける口元を押さえるカトケン。
こういう格好よくなりきれないところがさすがカトケン。

・女先生たちのそれなりに荒れてた十代の日々。
先生たちが聖人君子でももろヤンキーあがりでもない、適度にダメだったりワルだったりするのが、生徒と先生がともに成長してゆくこのドラマにはぴったり。

・小津先生が自分が責任をとると言い出したのは、カトケンのため、という以上に、一刻も早く事態を収拾して絵理のもとに行きたかったからのように思える。
絵理の知るよしもない場所で示されたせいいっぱいの父の愛情。

・絵理の恋人がいかにもなチンピラ風・・・。お母さんが一目見て不安でたまらなくなるわけです。

・「彼は私のこと見てくれるの」という絵理。彼を好きだから、ではなく自分を気にかけてくれるから、というだけでついていってしまうところに絵理の孤独の深さがうかがえる。
コミュニケーションの重要性がここでもまた示されている。

・父兄に頭を下げるバスケ部一同。真っ先に行動したのはやはり井本だった。
そして最後に頭を下げるのが三上。彼はあの場にいなかったので完全なとばっちりですよね。「俺も下げるの?」って顔してるわけです。

・「昔ちょっとこのへんでやってたときに・・・」 何をやっていたんだ三上。

・「俺に何ができる?」 カトケンの顔がアップになる。今までにない男らしい表情に彼の決意のほどが見える。

・キャプテンを筆頭に、一種嬉々としてカトケンに同行するバスケ部の面々。
最後に皮肉っぽい笑いを浮かべつつも結構楽しげに三上がくっついてゆく。
バスケ以外で彼が部員たちと自主的に集団行動を取るのはこれが初めてですよね(ワンコがカツアゲされた時も彼は助けに行っていない)。
いよいよ三上が本当の仲間になった感があって、なんだか嬉しくなってしまいました。

・ドアを引っ張っても引っ張っても開けられないカトケンに、「押すんじゃないですか」と冷静にツッコむワンコ。
本当、先輩たちが一緒だと怖いもの知らずになれるんだなあ。

・小津先生を処分せずカトケンを一週間停職にすると告げる佐野先生。「あんたの思い通りにはさせない」って・・・意地っぱりである。
この決定が小津への好意から出てるわけじゃないのが物語が甘くなりすぎてなくて上手い。

・体育館での小津と佐野先生の会話と、クラブ?でのカトケンたちの奮闘を交互に出し、「外から見た小津」(絵理目線の過去の小津、カトケンたち目線の現在の小津)と「小津自身の自分評」とを積み重ね、小津の人間性の変化を描いている。
絵理が家に帰ると決めたのも、小津のためにここまで必死になれるカトケンたちの姿に「父の変化」を感じたからでしょう。

・傷だらけの顔で小津に事情(の一部)を話す面々は皆どこか誇らしげな顔をしている。とりわけカトケン。
絵理に「お父さんと、話しなさい」と穏やかだけど命令口調で言い切った彼に今までにない自信を感じました。

・体育館で怪我の手当てをしあうカトケンたち。
「痛いー!!」と目だって大騒ぎしてるのは声からしてワンコですね?かと思えば「クラブ行きたい!」とひときわ陽気な声を(手まで元気に)あげてみたり。日頃大人しい彼の珍しいハイテンション。
彼に限らず、この場面のバスケ部員らの明るさには、チンピラまがいの連中を相手に一歩も引かず、しかも非暴力を貫き小津先生との約束も守りきった充実感が満ちている。

・「風俗行こう風俗!」と言いだすピカに、「風俗には絶対行かないって決めたんだよ!」とむきになって叫ぶカトケン。教師としては「高校生が行くところじゃない!」と叱るべきところだろうに。
彼らの関係が先生と生徒というより、ともに困難を乗り越えた同志のものになっているのがわかります。
しかしバスケ部の連中、本当に風俗行ったことあったりするんだろうか。たぶん口だけでしょうけど。

(つづく)

 

 


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『さよなら、小津先生』(2)-2(注・ネタバレしてます)

2007-08-07 01:22:52 | さよなら、小津先生
〈第四回〉

・女子のスカート丈が短すぎる件を語り合う小津とカトケン。
「注意すればいいでしょ」と言うカトケンに「もったいない」と言う小津。「いや先生として言ってるんだ」。全然理屈が通ってないし(笑)。

・「警察呼ぶぞこの野郎!」 声の裏返りっぷりに佐野先生(小日向文世さん)の異様なまでの怯えが見える。過去の事件についての伏線。

・「はい光陰高校。うちの生徒がまた何かしました?」 
台詞といい声の明るさといい、「生徒が何かする」のがどれだけ日常茶飯事なんだ。

・小津先生とみゅー先生の会話。小津の台詞の全てが口説き文句のごとくだ。
なのに結局言いたいことは、「バスケの試合を組んでくれ」という色気のなさが可笑しい。

・コモリのメールの相手はお母さんだと言う。明らかに授業中のはずの時間にメールが来ることをお母さんは何とも思わなかったんだろうか。

・カトケンの怪我をめぐって、佐野先生が「被害者いるじゃないですか」といきなりカトケンの椅子を小津先生に向けて押しだす。
その後も、佐野先生と小津の争点として物のように扱われるカトケンが哀れ。

・コモリの「ドッジボール」に付き合うカトケン。いつのまにか二人ともすっかり本気になっている。歯をむいたコモリの顔が印象的。
内に籠りがちだった彼が小津先生の教えを媒介にだんだん感情を出せるようになっていくのが、見ていて心地好いです。

・「(勝つには)どうしたらいい?」と口々に聞くメンバー。
真っ先に小津の元に走るワンコと初めてピカに(仲間に)怒鳴るコモリ。
バスケ部の中で一番大人しめの彼らがいち早く小津を受け入れる柔軟性、「大人」を信じる勇気を示している。

・「もうおまえらには騙されない」と佐野先生は言うけれど、この「おまえら」は目の前のバスケ部員たちではなく、彼らの背後に幻視した自分を刺した子に向けた言葉ですね。
過去の傷にとらわれて今目の前にいる教え子たちを見ることが出来ずにいる。何かにつけ小津を教師として失格と見なす佐野先生もこの時点では教師失格というべきでしょう。
そんな彼の「成長」もこの先おいおいに描かれていくことになります。

・「そんなふうに言わないで」と言うまなび先生(西田尚美さん)が母の顔になっていた。
いつも頼りなくて、特に授業でのおどおどっぷりは子供のような彼女だけに、この変化にカタルシスがある。
帰りぎわに用具室に間違えて入っちゃうあたりでいつものまなび先生らしさを出すのもメリハリが効いている。

・無言で受話器を握り締めて涙を流すコモリ。台詞はなく表情もあまり変わらないのに画面に引き付けられる。
コモリが去ってゆくからこそ後の展開があるわけですが、小津に心を開きはじめてからの演技力を見るにつけ、池田くんの退場が惜しまれます。

・井本の「勝ちたかったんだよな」という台詞。涙は見せないものの声に湿りがあって、感情をあまりストレートに出さない彼なりの感慨が表れています。

・一番小津に対し反抗的だったピカが真っ先に「先生」と呼び掛け、「俺らに勝ち方教えてくれ」と訴える。
これまでがこれまでだけに、彼(彼ら)の変心(それも友達のために)が感動を呼びこむ場面。

 

〈第五回〉

・理由も言わず背の高い男子生徒を連れ込みボールをぶつける・・・ひどいテストだ(笑)。

・子供が夜帰らなくても放置してる親にも責任はあるはずなのだが・・・まるで反省せず学校だけを責めるところが現代のリアルという感がある。

・わざとシュートを外して下手なふりをする三上(EITA=瑛太くん)。部活動がかったるい、とかいう以前にバスケに対する強い反感を感じさせる。
経験者、それも本格的にやっていたのは間違いないので、過去(以前の高校の)バスケ部で何かあったのだろうか。

・「もしもし淳だけど」という台詞がすでに恋人っぽい。実際、松沢は単純に親に甘えたい気持ちを一葉先生に投影してただけなんだろうか。
一葉先生の方も、松沢の似顔絵だけ妙に丁寧なあたり大いに意識してそうなのだが。単に生徒に言い寄られるというシチュエーションに幻惑されただけ?
この二人の間に流れるちょっと艶っぽい緊張感はこの回以降すっかり消えてしまうので、やはり一時期のもたれあいだったんですかね。

・マネージャー候補の女子を口説く小津が、柱に手をつくポーズがもう・・・(笑)。無自覚のタラシなのか自覚あるタラシなのかが問題です。

・被虐待経験があるゆえに自己表現にひどく臆病になってしまう一葉先生。
両親からの抑圧(その後母は子供放置に転じる)に追い詰められていた松沢。
「愛されること」に飢えていた二人が自然に引き合ったようにも思えます。

・松沢と一葉先生の件で三上を責める未句(中川愛海さん)。いつものように「剛」でなく「三上」と呼んだところに彼女の怒りがうかがえる。
彼といちゃつくことしか頭にないように見えた彼女の、意外な正義感やクラスメートへの思いやりが示される場面。

・井本の「俺はお父さんいないから」。「お父さん」という呼び方がなんか可愛い。
バスケ部の三人(もともと大人しめのコモリとワンコ除く)は結構悪っぽいだけに、言葉や態度のはしばしに時折表れるこうした幼さ、優等生ぽさにはっとさせられる。

・父親に散々言われても一切言い返さず静かに泣く松沢。
これまではえらく大人っぽく高校生離れした色香まで感じさせた彼(忍成くんは当時すでに20歳だったので当然かもしれませんが)が、本質はとても傷つきやすい脆い少年なのだとわかる。
強がりの膜がすべて剥がれ落ちたような彼の姿がとても痛々しい。

・他の社員が聞かないふりで仕事続けてるのが・・・こりゃあ居心地悪いよなあ。

・「あんたは幽霊だ」と松沢父に言う小津。
自分が娘や井本に言われた言葉を他人に向かって発する。それは小津が自分のどこがなぜ「幽霊」なのかに気づきつつあるからこそ。小津の変化が決定的に描かれるシーンです。

・「(決めるのは)僕だよ」。はじめて父親に抵抗する松沢。
ちゃんと父親を見て、けれど決して強い口調じゃない、むしろ弱弱しい声なのが、今の彼にはこれがやっとであること、けれど確実に第一歩を踏み出したことを感じさせて思わず応援したい気持ちになる。ここからだよ!

・「謝らないでしょ小津先生は」。この一言に校長(谷啓さん)が最初から小津先生に「期待」していたことがわかる。

・「生徒を傷つけようとした人がいて、小津先生が身をもって守りました」と言う一葉先生の声が詰まりぎみで、彼女の心の震えが端的に伝わってきます。
松沢父を「生徒を傷つけようとした人」と表現するのに、彼女が松沢父の言動を人の親としてあるまじきことと見なしていること、小津の行為にかつて親に虐待された自身の心の傷も救われたように感じているのがわかります。

・「(小津のことを)もっと知りたくなりました。」という一葉先生の言葉は、子供のことを知ろうとしなかった松沢父の姿が示されたあとだけに、相手に関心を持つこと、コミュニケーションの重要さを伝えてくる。
周りの教師たちに心を閉ざしていた生徒たち、生徒一人一人に向き合おうとしなかった先生たちが次第に互いを理解しあう、理解しようとする過程を描いたこの作品の核というべき台詞かもしれません。

・体育館へ入ってきて、何も説明せず一緒に走り始める松沢。何も聞こうとしない井本。べたつかない無言の友情が清清しい。

・二本スリーポイントシュートを決める三上に瞠目する先生+バスケ部の面々。
みな控えめなりに驚きを顔に表しているのだが、ワンコはほとんど表情が動かないまま。「おいおい(笑)」と思ってたら、動いた・・・喉が。
確かに驚きを表現するのは顔面筋の動きだけとは限らない。こういう手(固唾を呑む)もあったか!と思わず唸ってしまいました。
これが15歳の子の芝居なんですよねえ。驚愕。

・三上と彼を見つめるバスケ部メンバー。
三上もバスケ部員もそれぞれに挑戦的な表情をしているが、ワンコの表情には幾分感嘆の思いが滲んでいるような気がする。
まあキャラ的に他人に敵愾心を燃やすようなタイプじゃないですしね。


(つづく)


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『さよなら、小津先生』(2)-1(注・ネタバレしてます)

2007-08-04 01:49:13 | さよなら、小津先生
〈第一回〉

・校舎の窓から放たれ、校庭に落ちる紙飛行機。鮮烈であると同時に後への伏線となるシーン。

・問題児揃いのバスケ部員のうち4名が一クラスに集中(のちにバスケ部に加わる三上も同じクラス)。このクラスは「落ちこぼれ組」なんだろうか。
ところでワンコ=勝地くんは、バスケ部唯一の一年生のためクラス内の場面には登場しない。『六番目の小夜子』といい、そんなポジションが多いような気が。

・辣腕銀行員が逮捕を経て高校教師へ転身、という驚きの展開を、アメリカを舞台にゴージャスに見せる。
第一話の半ばを費やして銀行員時代を描くことで、小津先生の教師離れした洒落たキャラクターと、この作品が普通の「教師が生徒を教え導く」ドラマではないことを視聴者に提示している。

・同じフレーズを繰り返し畳み掛けるような小津の口調は、どこまで脚本でどこからが田村さんのアドリブなのかわかりませんが、小津というキャラを端的かつ見事に成立させていると思えます。

・酔ってたとはいえ、たまたま遭遇した小津に向かって「刑務所入った人」と大騒ぎするカトケン(ユースケ・サンタマリアさん)。この時点では彼も他の先生もほとんど印象最悪。
学内のシーンより先にまずプライベートでの(ダメダメな)先生たちを描き、普通の弱い人間としての彼らの姿を見せる。
小津先生の赴任前のいわば前日談を長々見せたのと同様、このドラマの方向性を示しているシーン。

・失職、離婚の危機、娘・絵理(水川あさみさん)の反逆にも涙を見せなかった小津が、教員になることを承知したとき初めて号泣する。
これまで再起を、自分自身を信じていた小津が、ついに現実の前に膝を屈した場面。
彼の「転落」がじっくりと描かれたことに、この先の「生徒を教え導く」というより「ともにどん底から這い上がってゆく」物語のスタンスが表されているように思います。

・井本(森山未來くん)の口から発せられる「あんた幽霊みたいだな」という言葉。
絵理と同じ台詞を発したこととキャプテンという立場が、バスケ部メンバーの中でも彼を一際特別な役柄へ押し上げている。

・「子分かよ!」「しかもうちに来るかよ!」といったカトケンのツッコミの連続。二人の関係が早くも確立している。
そして勝手に眠り込む小津の「疲れた・・・」という呟きが、さんざん我が儘したあとだからこそ痛々しく響く。

・激昂して小津に掴みかかり携帯を取り戻すコモリ(池田貴尉くん)。「僕のです」と口調が丁寧なのが逆にヤバい感じ。

 

〈第二回〉

・それぞれのクラスの授業風景。各先生のキャラクターをわかりやすく見せている。

・バスケ部5人の停学問題をめぐっての先生たちのぶつかり合い。門外漢ならではの小津先生の倫理観が生きる。
第一回での銀行時代の描写から、企業利益のためには倫理など構わない人物と見えていただけに、その真っ当さが意外かつインパクトあるものになっている。

・みんなが廃部を喜ぶなかで一人わけありげな表情の井本。
目線と表情で、小津が井本の内心を見抜いているのがわかるようになっています。

・松沢(忍成修吾くん)と一葉先生(京野ことみさん)のロマンス(?)。忍成くんの顔立ちは、こういうちょっと妖しく色っぽい雰囲気にはまるなあ。

・カトケンがみゅー先生(瀬戸朝香さん)の服を単純に誉めるのに対し、小津はもっと派手な方が彼女にはふさわしいと言う。女心のツボの突き方が絶妙。
このタラシ的言動からしたら銀行時代に愛人の一人や二人いても不思議じゃありませんが、意外に奥さん一筋だったりしそうな気が。

 

〈第三回〉

・「いじめられるのは君の問題だ」と言われて小津を見つめるワンコ。いじめられっ子としては強すぎるくらいの目の光は、のちのち垣間見えてくる彼の意外な芯の強さを思わせる。
こういう強い眼差しを見ると「やはり勝地くんだなあ」と感じます。

・ひきこもり経験があり、小津から携帯を取り戻したシーンでも自閉的な印象だったコモリが父の倒産を機に?少なくとも小津には結構口を聞くようになっていく。
働かねばならない状況に陥って、否応なく外の世界と関わらざるを得なくなったためもあるでしょうか。

・「二学期だけでも(バスケを)やらないか」と言われてコモリは泣き出しそうな顔になる。
彼がまず小津に心を開いていったことがバスケ部と小津の間に絆を生み出してゆく。前半のキーパーソンですね。

・「俺を見るな」と小津を睨むピカ(脇知弘くん)の顔に一種の甘えと悲しみがうかがえる。

・大人しいワンコでさえカトケンには結構ズバズバものを言う(一応敬語だけれど)。カトケン生徒に舐められまくってます。

・コモリとの会話をきっかけに小津が辣腕銀行員としての自分のやり方を振り返る。小津もまた生徒によって変えられていっているのですね。

・体育館で小津の前に現れた5人の中でコモリだけが微笑んでいる。彼と小津先生との距離がぐっと縮まっているのがわかる。

 

(つづく) 


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