雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

五色は人を惑わす ・ ちょっぴり『老子』 ( 17 )

2015-06-19 14:52:40 | ちょっぴり『老子』
          ちょっぴり『老子』 ( 17 )

               五色は人を惑わす
 
質実の勧め

「 五色令人目盲。五音令人耳聾。五味令人口爽。馳騁伝猟令人心発狂。難得之貨令人行妨。是以聖人為腹不為目。故去彼取此。 」
以上は、『老子』第十二章の全文です。
読みは、「五色(ゴシキ)は人の目を盲(モウ)ならしむ。五音(ゴイン)は人の耳を聾(ロウ)ならしむ。五味(ゴミ)は人の口を爽(ソウ)ならしむ。馳騁田猟(チテイデンリョウ)は人の心を発狂せしむ。得難き貨(カ)は人の行いを妨(サマタ)げしむ。是を以って聖人は腹の為にして目の為にせず。故に彼を去りて此を取る」といった感じです。
この章は、質実な生活を勧めているようです。

「五色」とは、本来、青・黄・赤・白・黒を指しますが、ここでは、美しく彩色された衣服や調度を指すのでしょう。
同じように、「五音」は美しい音楽に耽溺することを指すのでしょうが、耳に心地よい言葉も指すかもしれません。「五味」はご馳走を指すのでしょうが、「爽ならしむ」というのは、ご馳走に慣れて素朴な味を忘れるという意味のようです。
「馳騁田猟」というのは、馬を走らせ狩りを楽しむことのようです。

腹の為にして、目の為にしない

この部分は、なかなか面白い文章だと思います。
つまり、『道』を修得した聖人と言われるような人は、生きていくため最低限必要なものを食べ、目を楽しませるための贅沢はしないというのでしょう。

古来、「質素倹約」とか「質実剛健」などという言葉があるように、質実な生活を勧める教えは数多くありますが、地位や富を得れば、なかなか守り難い教えのようです。
『老子』の時代もそうだったようですが、せっかくの教えにかかわらず、今も何ら変わりがないように思われるのですが・・。

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