photo:Estación de Atocha アトーチャ駅植物園
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2014年4月27日
スペインで過ごす最初の日の朝です。おはようございます、Buenas dias!
今日は朝8時にホテルをチェックアウトしたら、そのままホテルの送迎バスで空港まで送ってもらいます。
昨夜降り立ったばかりのマドリッド・バラハス国際空港の、国際長距離路線が発着する一番大きな第4ターミナルまで行くとスペイン国鉄renfe のセルカニアス(マドリッド近郊線)の空港駅があるので、先ずはここで日本で手配しておいたヨーロッパ鉄道乗り放題きっぷ「ユーレイルパス」をバリデード(使用開始手続き)します。天下御免の乗り放題きっぷも、公式な使用開始の手続きを取らないと無効のただの紙切れなので、ユーレイルパスのバリデードは旅の始まりの大事な“儀式”です。
空港にある近郊線駅でのユーレイルパスのバリデードと言えば、以前ウィーンのシュヴェヒャート国際空港にあるオーストリア連邦鉄道の駅でバリデードを試みたところ何と空港駅は無人駅で、結局いったん自腹で近郊線のきっぷを買ってから市内の大きな駅まで行って、改めて窓口でバリデードしてもらうといった事がありましたが(→Muses Europa Eisenbahn 2012-2013中欧鉄道音楽紀行 3:Wien Westbahnhof ウィーン西駅からの旅立ち)、幸いにもバラハス国際空港の空港駅はちゃんと英語も通じる職員が常駐している窓口があり、無記入のユーレイルパスとパスポートを手渡すと問題なくバリデード完了。
これで僕のユーレイルパス、ユーレイルスペインパス(フレキシー) は今日から3回分使えるようになりました!
…しかし、バリデードが済んでも安心してはいけません。
最近ユーレイルパスは利用規定が厳しくなり、何と乗車する列車の区間を一々パスホルダーにレポートとして記入しなくてはいけなくなっているのです。もしレポートを未記入のまま乗っていることが乗務員に見つかれば、例えバリデードしてあろうがお構いなしに「罰金」として幾らかの現金をその場で巻き上げられ…もとい徴収されてしまうというから恐ろしい!
という訳で、空港駅の窓口で返してもらったユーレイルパスのホルダーにその場でこれから乗車する予定のマドリッド発セビリア行き高速列車AVEのレポートを記入。同時に、今日の日付も記入します(以前、これを忘れて痛い目にあった事がありますからね…同じ失敗は繰り返せない(笑)→Muses Europa Eisenbahn 2012-2013中欧鉄道音楽紀行 8:Hungaria Express 国際列車ハンガリア号の旅)。
「あっ、そうだ。僕、今からセルカニアス(近郊線)に乗って市内のアトーチャ駅まで行くんだけど、それもレポートに書かなくちゃいけないの?」と窓口のお兄さんに聞くと「セルカニアスは書かなくていいよ。はい、これ自動改札通るためのきっぷ」と、市内駅までの近郊線のきっぷもくれました。なかなか手際が良くて親切なスペイン国鉄の駅員さんです。ついでに、5月1日のマドリッド―バレンシア間往復のAVE指定席券(ユーレイルパス所持者特典の割引きっぷ)も購入して、これで鉄道旅行の準備は完了!
ただでもらったきっぷで空港駅の自動改札を通ってセルカニアスの乗り場まで行くと、すぐに市内方面行きの近郊電車がプラットホームにやって来ました。
流線型のデザインで、近郊電車とはいえカッコいいですね!
ちなみにセルカニアスの隣にはメトロ(地下鉄)の駅もあります。
メトロの車輌も流線型ですね、スペインの鉄道は流線型が好きなのかな?
セルカニアスの車内はまだ朝早いせいかガラ空きでした。スペインの公共交通機関は治安が良くないと聞いていたので、「誰も乗っていないなら、悪い奴に襲われようもないよな!」 と一安心。
空港駅から市内までは、郊外の工業地帯や操車場などが続く素っ気ない風景の中を走ります。
せっかくの流線型車輌なのに、走る速度はのんびりです。
空港から10分ちょっとで、マドリッド市内の中央駅の一つであるチャマルティン駅に到着。
マドリッド市内の北側にあり、かつてはフランス方面へと向かう国際列車が発着してマドリッドの表玄関として華やいでいた駅だそうですが、その後開通した高速鉄道のメインターミナル機能が市内南側にあるアトーチャ駅に移ってしまったので、現在は国内線ローカル列車が主に発着しているそうです。
そしてチャマルティン駅から約10分ちょっとで、マドリッドの現在の表玄関であるアトーチャ駅に到着!
僕も今日は、このアトーチャ駅から高速列車AVEに乗って出発します。旅が始まる駅です。
アトーチャ駅の近郊線発着プラットホームは長距離列車も共用しているようで、近郊線以外にも長距離運転の優等列車の姿を見かけます。
僕が空港から乗ってきたセルカニアスの流線型電車の隣に、なんだか見覚えのあるゴツイ列車を発見!
先頭車の前面がゴムのダンパーで覆われたこの異様な風貌の車輌…
北欧デンマーク製の高速気動車特急「IC3」のそっくりさんです!
スペインでは地元でライセンス生産された同型が非電化のローカル線を走る快速列車用に投入されており、振り子機能やフリーゲージトレインの機能まで追加された高性能ディーゼルカーとして活躍している模様。
何だかこのままスペインのIC3に乗って地方の非電化区間まで行きたくなってしまいましたが、今日これから乗る列車は駅上層階の高速鉄道乗り場で待っています。
個性的なスペインの列車たちに別れを告げて、近郊線改札口の先へと進んでいきます…
おっと!もう周辺は結構な人だかりです。治安が悪いというスペインの駅、所持品を奪われないように気を引き締めて、気合を入れて行きましょう!!
…と気合を入れてアトーチャ駅の近郊線改札口を出て歩いていたら、何故かそのまま駅の外に出てしまいました(笑)
我ながら気合入ってんだかボケっとしてるんだか分かりませんが、まだ時間はあるしせっかくなのでアトーチャ駅の建物を外から眺めてみることにします。
アトーチャ駅は小さな窪地に埋もれるように建てられていて、小高い丘の上に登って行くと駅舎の全景を見下ろして眺めることが出来ました。
「うわ~、アトーチャ駅ってカッコいいなぁ!!」
巨大なドーム天井を重厚なファサードが支える、ヨーロッパのターミナル駅らしい様式を備えた荘厳で素晴らしい駅舎です!
そして、駅舎の正面玄関をくぐってドーム内に入ると、さらに素晴らしい光景が…!
大ドームの下にあるのはプラットホームではなく、何と生い茂る熱帯植物!!
アトーチャ駅は駅構内に、熱帯植物園があるのです。何という贅沢な駅でしょう!
鉄道紀行作家の宮脇俊三先生は今からちょうど19年前の1995年5月にこのアトーチャ駅を訪れ、
「真新しいガラス張りの大ドームの下には、さまざまな木や草が植えられ、花も咲いて熱帯植物園のようだ。なぜ駅にこんなものをと思うが、あの陰鬱だったアトーチャ駅を回想すれば、祝福したい気持になる。」 と書かれています(ヨーロッパ鉄道紀行/新潮文庫より引用)。
かつて、高速鉄道が開業する以前のアトーチャ駅はスペイン南部の各地方都市からの国内列車が発着する鄙びたターミナル駅で、宮脇先生によると「スペイン南部の貧しさが伝わってくる」 ような陰惨な雰囲気漂う駅だったそうなのですが、1992年にスペイン南部アンダルシア地方の中心都市セビリアで開催された万国博覧会に合わせて開業したスペインの高速鉄道AVEが乗り入れる大ターミナルとして大改造され、陰鬱だったという旧駅舎の大ドームも熱帯の花咲く大植物園へと大胆華麗に生まれ変わったのです。
それにしても、アンダルシアといえば煌めく陽光と薫る地中海の風、そしてカルメンの情熱と壮麗なる王城アルカサル…といったやたら明るいイメージを抱いていたのですが、つい数十年前までスペインは独裁者フランコ将軍に支配された暗く貧しい軍事独裁時代があったのですね…
さて現在、独裁者は死に、民主化を成し遂げ、万博とオリンピックも開催し国際社会で飛躍する現代のスペインの南部アンダルシアはどんなところなんだろう。
宮脇先生も嘆くほど貧しかったというスペイン南部は、今はどうなっているのでしょうか。
今から、高速鉄道に乗ってそれを見に行きます。さぁ、そろそろチェックインの時間です。
ラ・マンチャの乾いた大地を砂塵を巻き上げながら時速300キロで疾走する超高速列車AVEに乗って、セビリアを目指しスペインを一路南下する鉄路の旅が始まります!
→06:高速鉄道でイベリア半島縦断!超特急AVEの旅に続く
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