photo:プラド美術館・ベラスケス像
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2014年5月2日
マドリッドで過ごす最後の日は、早起きして出かけます。
朝一番で向かう先は、アトーチャ駅前のホテルから王立植物園の横を通る大通りを進んだ先にある“あの美術館”。
スペインを、いやヨーロッパを代表する超弩級美術館、プラド美術館です!
…実は、今回のスペイン旅行の主目的の一つが、プラド美術館での絵画鑑賞でした。
一度、実際にこの目で実物を観たいと願っていた作品が、ここには幾つも収蔵されているのです。
という訳で、開館1時間前の朝9時からプラド美術館の正門前に並んで、開門と同時に一番乗りで館内へ…
と考えていたのですが、甘かった!
さすが世界に名だたるプラド美術館、開館1時間前には既に見学者が押し寄せていて、この長蛇の列!
プラド大通りに沿って、本館(ビリャヌエバ館)の端から端まで数百メートルに及ぶ行列が出来ています。
「何なんだ…まさか、毎日徹夜組がいるんじゃないだろうな!?」
大行列に並んで、どうにか入場券売場のある本館入り口まで辿り着いたのは約1時間半後。
入館する前から既に並び疲れて、すっかりくたびれてしまいましたが、それでもプラド美術館の館内に足を踏み入れると心が踊ります。
憧れの作品たちが、迷宮のような巨大な回廊のそこかしこで待っているのですから…!
僕が観たかった名作たち、
ゴヤが、ベラスケスが、エル・グレコが、これでもかと押し寄せてきました。
(でも、残念ながらプラド美術館の館内では写真撮影が一切禁止でした。名画の洪水をご紹介できないのが残念ですが…
読者の皆さんも是非いつか、ご自身でプラド美術館を訪れて確かめてみて下さいませ!)
そして、一番のお目当てであるヒエロニムス・ボスの「快楽の園」。
「この人…僕の見た悪夢をそのまま鮮彩に描いてるんじゃないか!?」と驚き慄いて、そして好奇心を感じずにはいられなかった恐るべき作品の「実物」をじっくりと観ることが出来たのです。
間近で見る本物の「快楽の園」は、想像以上に薄気味悪くてグロテスクで、でもどこかユーモラスで皮肉っぽくて、そして夢のように美しい絵でした。
…もちろん、それは「悪夢」なのですが(笑)
「ああ、やっと本当の『快楽の園』を観ることが出来た。やっぱり怖かった(笑)
スペインに来てよかった!」
プラド美術館で半日を過ごして、夕刻までにはまだ少し時間があるので、次なる美術館をはしごしましょう。
大小様々な美術館群が並び立つマドリッドの街はさながら“美術館の大連合艦隊都市”です。
中でも旗艦であるプラド美術館と共に圧倒的な存在感を放つのが、規模ではプラドには及ばないものの収蔵作品の質の高さでは他の追随を許さないティッセン=ボルネミッサ美術館。
ちょうどプラド美術館の斜向かいに位置し、歩いて数分で行くことが出来るので、プラドの次はティッセン=ボルネミッサをはしごしない手はありません。
ティッセン=ボルネミッサ美術館は、大富豪の貴族の個人的コレクションを収めた、こじんまりとした邸宅美術館です。
でも、人気の高さではプラド美術館と互角なので、この大混雑ぶり…
プラドに続いてティッセン=ボルネミッサでも入場するまでに並び疲れましたが、館内は誰もが美術の教科書で一度は目にしたことのある超有名作品ばかり。
中でも印象派の作品が充実していて、ドガの「緑の服の踊り子」を見つけた時には思わず興奮しました(この作品、僕の母のお気に入りの絵で、うちの玄関にはずっとこの絵の複製画が飾られていて、毎日目にしていたのです)。
また、20世紀以降の近代・モダンアート作品も有名作が数多く、
ご存知スペインが生んだ天才サルバドール・ダリの「目覚めの直前、柘榴のまわりを一匹の蜜蜂が飛んで生じた夢」に出会えたのは幸運でした。描かれた内容が凄まじく壮大なのに、サイズはずいぶん小さい絵だったのも驚きでしたが。
…そう、実は今日はプラド美術館だけで1日を使い果たすだろうと思っていたので、ティッセン=ボルネミッサ美術館にも行くことになるとは考えておらず、全く予習をして来なかったのです。
まさか、こんなにも名作揃いだったとは…
これは嬉しい想定外でした。
でも、ティッセン=ボルネミッサも館内では写真撮影が出来なかったので、読者の皆さんはプラドと共にここにもいずれご自身で訪れてみることをお薦めします。
美術館都市マドリッドが誇る二つの美術館を満喫しました。
もう、思い残すことはありません。旅の終わりが近づいたようです。
ホテルに戻って、預けておいた荷物を受け取ってから、アトーチャ駅から地下鉄に乗って郊外の空港近くへと向かいます。
明日は早朝便でスペインを離れるので、今夜は空港ホテル泊です。
→40:El Capricho 夕暮れマドリッドに続く
マドリッドおまけ写真
ホテルへ帰る途中、プラド美術館隣の王立植物園入り口で出会ったマドリッドねこ。
画家のモデルも務められそうな綺麗な白黒ねこ。
あの頃は美術館に入るのにこんな大行列はなかったような。
最近はどこの有名美術館も入るだけで大変ですね。
それだけ旅行者が増えたと言うことなのでしょうが。
僕もまた観に行きたい、実に魅力的で恐ろしい絵でした(笑)
以前はプラドもそんなに混んでなかったんですね。
ちょうど時期的に行楽シーズンだったのかもですが、余りにも混んでると疲れるんですよね…
それでなくても名画を幾つも見ると「魂抜かれるように」疲れ果てると言うのに。
ホント、美術館めぐりはハードなスポーツ並みに体力勝負です。