My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

日本が「グローバル人材大国」を目指すべき理由

2011-12-30 14:20:17 | 1. グローバル化論

2011年は、日本企業のグローバル化が大きく話題になり、多くの人々に浸透した年だったと思う。

「グローバル採用」という言葉が何度も新聞紙面を飾った。新卒採用を、国外や留学生、海外大卒を中心としたグローバル採用に切り替えていくと宣言した、ユニクロなどの企業が話題になった。「グローバル人材育成」も、多くのビジネス雑誌で取り上げられた言葉の一つだった。海外事業で多国籍の人材を扱いながら活躍できるグローバル人材を今後どのように育成していくかは、今年の多くの企業が最も頭を悩ませた話題のひとつだっただろう。震災後は、海外企業のM&Aも加速した。実際、日本に工場の大半が固まっていたために、震災で稼動を落とさざるを得なかった企業は、地理的集中リスクの怖さを実感し、グローバル化の必要性を急に感じたところも多かったと思われる。円高による割安感もあり、日本企業による海外企業のM&Aは2011年に過去最大となったと報じられている。

今後、人口が減少すると考えられる日本では、多くの産業で市場成長が止まる。もし企業が成長し続けることを望むなら、日本国内でシェア争いをするよりも、成長市場である中国や東南アジア、南米などの新興国の売上を上げていくことが重要になる。そして、これらの国でシェアを取るためには、海外での生産や調達を行うことも、今までに増して重要になる。更には、人材すらも、日本以外の国から採用していくことになるだろう。東南アジアなど、国を挙げてグローバル人材の育成に力を入れている新興国は多い。これら新興国に事業展開するなら、日本人を駐在等で活用するよりも、ずっとコストが安く、現地の事情に詳しい、現地生まれのグローバル人材を採用する方が理にかなう。大企業に限らず、中小企業の多くにとっても、売上だけでなく、生産、そして人材や組織の面でも日本市場に偏らないグローバル化が、企業の成長と経営の安定のために必須となりつつある。

このように、成長を模索する日本企業の多くが、売上の多くを海外へ、生産や調達の多くを海外へ、更には社員の多くを海外採用へ・・と移行していくのは時間の問題と思われる。特に製造業は、輸出産業として日本の経常収支を支えているにもかかわらず、TPPやFTAの意思決定は遅くて邪魔ばかりされ、更には年金や医療等のコスト負担を次々に強いられる。ましてや円高に加え、自然災害のリスクまで出てきた。このように考えると、グローバル企業と呼ばれる日本企業の多くにとって、日本にとどまっている意味はあるのだろうか、とふと思ってしまう。実際、グローバルな日本企業の中には、日本以外の国に本社を移す、または第二支社を作ることを本気で検討している企業もあるだろう。企業の意思決定の面でも、人事や財務の面でも有利になると考えられるからだ。

「非国民だ」とののしる人もいるかもしれないが、グローバル企業にとって、市場成長が著しく、優秀な人材を輩出し、事業会社に優しい国や地域に事業の主軸を移していくことは自然なことになるだろう。10年前にハート、ネグリが「帝国」の中でいみじくも指摘したように、グローバル企業にとって国籍はもはや意味を持たなくなりつつあるのだから。そんな時代であっても、グローバル化する日本企業が日本にとどまる意味はあるだろうか。二つの意味で、日本に留まる意義はまだ残されているのではないか、と私は考えている。

ひとつは、現時点でのメリットだ。特に製造業が、現在日本をなかなか出て行けない理由のひとつは、日本は技術開発のインフラやネットワークが整っている「技術大国」であるということだ。イノベーションは、企業単体の努力だけでは起こらない。大学や研究機関が基礎研究を行い、技術に詳しい技術者や研究者が輩出され、中小企業やベンチャー企業が周辺の応用技術を提供し、共同開発などを行える様々な異分野の企業が存在し・・・といった具合に、技術のネットワークがあることが、技術や製品を開発しつづけるために非常に重要である。そして、特に機械産業や素材産業、電機産業といた分野では、日本には最高の技術のネットワークが蓄積されている。日本を離れて活動すると、これらの技術ネットワークを活用することも難しくなる。コマツ会長の坂根氏は、コマツを「日本国籍グローバル企業」として成長させる、そのために日本で技術者を育てると宣言しているが、コマツの建機を支える技術ネットワークは日本でしか得られないことを理由として上げている。

しかし、技術大国であることは現時点でのメリットに過ぎない。韓国や台湾、中国、そして追随する新興国が「技術大国」として成長し、技術ネットワークが育っていけば、徐々にメリットを失っていくだろう。日本に企業が集まる、残された理由は「人材」となる。企業のグローバル化を支える人材を日本から次々に輩出する「グローバル人材大国」になること、これがグローバル化する日本企業を日本にとどまらせる理由となるだろう。日本に来れば、グローバル化を進められる優秀な人材がたくさんいる、というようになること。グローバルな人材が育つ教育環境が日本に整っているから、近隣の新興国から世界で活躍したい優秀な人材が集まってくる。日本にいるだけで、これらの優秀なグローバル人材を採用できる、となること。そうなってくれば、日本に経営の中心をおきたい企業が自然と増えるだろう。日本が法人税を引き下げるなどより、ずっと効果的で、継続的な施策である。

米国には、売上の多くを米国以外の国で上げ、社員の多くが米国人ではないにもかかわらず、米国に本社を置き続けているグローバル企業が多く存在する。AppleやAmazonのような近年拡大したグローバル企業でもそうだ。これは米国が成長市場だからではなく、グローバルに活躍でき、将来は経営の中心を担える優秀な人材が米国に集まっており、次々と人材が出てくることである。Apple StoreやAmazon流通センターの人材は、それぞれの国の人材でよい。しかし彼らを統括し、各国で事業を展開する幹部人材は、米国に経営の中心を置いているほうが得られる。だから本社を米国に置き続ける。

日本企業がグローバル化することは避けられない。だから、日本が「グローバル人材大国」となって、グローバルに活躍できる優秀な人材を集め、輩出し、これらのグローバル企業を惹き続けること。これが、グローバル化を進める日本企業やそれ以外のグローバル企業の恩恵を、日本が受け続けるために唯一の施策になるのではないか、と最近つねづね思うのである。

2011年は日本企業が改めてグローバル化の必要性を認識し、採用や人材育成面でも動き始めた年になった。来年は、加速するグローバル化の動きを支え、日本という国を、日本発グローバル企業を惹き続ける「グローバル人材大国」にするための議論が始まる年になれば、と思う。



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16 Comments

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Unknown (大手町)
2011-12-30 15:57:03
日本人がグローバル人材大国になれるチャンスは相当薄いと思っています。理由は2つ。
1. 人材を育てるのはその分野で既に栄えていないといけない
2. 日本人は日本コミュニティの中で最も成果を出してきた。現地化して華僑・印僑のような成果を出してきた実績はまれ。

1. 日本が経済大国に成れたのは製造のおかげです。指摘のように、素材などでは未だに強いですが、今後もどこまで踏ん張れるでしょうか。日本が人材輩出国となった典型的な分野は半導体でしょう。韓国メーカーが日本人エンジニアをごっそり引き抜いていき、数年でキャッチアップした後に、引きぬかれたエンジニアの大半は不遇の時期を過ごすことになりました。最近の製造業での"人材価値"というのは陳腐化が激しいです。分野にもよりますが、もって十年でしょう。

2. 私が人材輩出国と聞いて思うのはフィリピンです。人口9千万人の国のため華僑・印僑ほど目立たないですが、特に英語圏でフィリピン人労働者を見かけることは少なくないです。海外労働するフィリピン人の大半はメイドのような単純労働に従事しますが、英語を母国語とする強みの中で高等教育をおさめた中には多国籍企業の管理職などの高度人材として活躍する者もいます。また優秀な人間は、フィリピンに留まらず米国などにどんどん出ていきます。そういう現地で溶け込んで働く生活様式は日本人は相当苦手です。どの国でも特に駐在員は日本人コミュニティを作って仕事も生活もその中に収まっています。総合商社のリージョナル人事部長(外国籍)が「日本人は他の日本人との人間関係で仕事をする」と発言した事が印象的でした。
これまでは日本経済が強く、日本経済圏から外に出るメリットが相対的に小さかったのも理由でしょう。しかし、海外進出の際には船団を組んで皆で出ていくこれまでの方式では、ピンで活躍できる人材を排出するのは難しいでしょう。

私は日本はギリシャ・イタリアのように、独特の文化大国として緩やかに衰退していくのが、日本に残されたソフトランディングというのが私の考えです。独自の文化圏を維持するために、移民などの対外要素の取り入れは制限し、緻密なコントロールが必要と思っています。
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日本復活の処方箋 (harappa5)
2011-12-31 02:51:33
 大手町さんのように悲観論を書いても仕方がないので、どうやれば「グローバル人材大国」になれるのか?を論じたいと思います。
 
 一言で言えば、「生態系」を築き上げる事です。ハリウッド映画で例えれば、映画産業が繁栄しているから外国から優秀な人材が押し寄せてくる。優秀な人材がいるから映画産業が繁栄する。さらに、優秀な人材が来日するという、循環を作り出す事です。
 
 それには、官民一体となった政策が必要です。例えば、大阪の橋下市長が中心となり、「経済特区」を作る。「特区」繁栄のために、法人税などの税制の緩和、容積率の緩和などの規制の撤廃、高度なビジネスパーソンの奨励を進める。産学共同の推進、技術開発投資減税や技術開発投資の減価償却の短縮を認める

このような成功例を作り、各地に「横浜経済特区」「博多経済特区」「福島経済特区」を作り広めれば良い。
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グロ-バルの危険 (freedom)
2011-12-31 03:44:26
グローバル人材の育成が人類に幸福をもたらすかは、はなはだ疑問なことが現実の世界では起きていますね。
懐中電灯を作っていたA社は阪神大震災の時はすぐに増産し、多くの被災者を助けることができましたが、その後のグローバル化により国内の生産設備が休止されていて東日本大震災では対応できませんでした。グローバル化は即応性に問題があることに気づきB社はパソコンの組み立てを4倍の人件費がかかるにもかかわらず国内に移し、数社が追随し、国内組み立てを宣伝していますよね。
製造業が輸出産業として経常収支を支えていたのは過去のこと、日本は既に貿易収支は赤字、経常収支の黒字は海外投資によるものです。この前まで160円だったユーロは今日ついに100円、既に1~2%に下がっている関税をTPPやFTAでなくしたところでいったいどんなメリットがあるのでしょうか。本当にやるべきことがどちらにあるかは明らかですよね。TPPを締結しても貿易面では全体でみればほとんど影響はないのです。日本の貿易依存度は170国中164位であり、現実は世界的にみれば日本は貿易立国ではなく内需国なのです。貿易依存度の高い韓国やドイツと同列に考えるのは危険です。TPPで貿易外で譲歩することの方がどれだけ影響が大きいでしょうか。TPPが大騒ぎになる本当の理由はウルグアイラウンド対策で6兆円も手にした農水省が夢を再びと騒いでいるだけですよ。成功して予算を手に入れたとしても農業強化よりも、また全国に温泉入浴施設が増えるだけですけどね。優秀な彼らにはその素晴らしい能力を省益ではなく国益のために生かしていただければ日本はもっといい国になることは間違いないのですが残念なことです。
オリンパスは、ゴーン氏やストリンガー氏を見てグローバル人材を安易に社長にしてしまったがために、減損処理もきちんと行い税金を払っていたのにとんでもないことになりましたよね。日本が会計制度をグローバルとされている時価会計にした時にその時点での損失を内部保留したことが今になって表面化し、日本的企業内経営者が本業の経営に成功して近年大きな利益を出していたので早めに処理しようとしたことがあだとなり大失敗でした。オリンパスは年間700億円ももうけているのに税金を払わなくてもよくなり、日本国は100億円単位の税金を失うことになり、東日本大震災の復興に投入できたはずだったのに大きく国益を損ねてしまいました。本当にオリンパスに問題があったのなら少なくとも某金融会社に2兆円の特金があったことはわかっているのだからその内の1400億円のオリンパスだけで済むわけがないでしょう。たった一人のグローバル人材で日本は税金による所得再分配機能を失い、あずさから仕事をとった新日本は信用を失い、国を支える世界的な企業に育て上げた経営者は職を失い、結局これで利益を得たのは140億円を手にしたコンサルタントだけです。
グローバル化した企業はどんなことをしているでしょう。先日、昨年140億ドルの利益を上げているGEは1ドルも税金を払っていないし、グーグルもほとんど税金を払ってなく、2004年グローバル企業の7000億ドルの利益の内160億ドルしか税金を払っていないことがニュースになっていましたね。アメリカに本社を置き続けているグローバル企業が多く存在しているのは、どんなに利益を上げてもダッチ・サンドイッチで2.3%しか税金を払わないからですよ。視点を変えれば税率40%の日本に営々と税金を払い続けていたオリンパスがいかに素晴らしい企業だったかということです。
グローバル人材が増えると人類に害悪をもたらしかねないということが現実には起こっているということを考えないといけないでしょう。税金を払わないグローバル人材よりも、税金を納め災害時に略奪を行わない倫理観のある人材を育てていることが日本の誇りなのではないでしょうか。
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Unknown (amazedkoumei)
2012-01-02 09:30:05
世界展開部隊の本営や将軍のポジションを担える人間が
東京に集まるようにしようず!って話ですね。

卵が先か鶏が先か。

説得力ある海外戦略と求める人材像を煮込んだうえで、
社長はMIT帰りですがなにか?という但し書がついた
人柱企業が東京で起ち上がる様を無責任にも妄想しましたw
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日本にこそできること (Heineken)
2012-01-03 08:30:32
私はグローバル化のマイナス面も沢山感じておりますので、できることならば再び「鎖国」して、江戸時代的経済システムを現代風に改良した「日本モデル」を目指したいくらいだったのですが、現実的には不可能な話でしょうから、仕方なく(笑)、抗いがたい急速なグローバル化の流れの中で、日本から世界に伝えられそうなものは何だろう、とずっと考えてきまして、今の所、次の考えに至りました。

それは、これまでLilacさんはじめ多く方も色々な所で指摘しておられる、「日本のサービス産業の質の高さ」と、根底でそれを支えている個々の働く人々の意識「どんな仕事でも、自分の仕事に誇りと責任を持って真摯に取り組む労働観」及び、「そう考える方が実は楽しく働けるということ」だと思っております。

日本以外のほとんどの国々では、低賃金単純労働はもとより、マネージメントクラス以外の殆どの人々の労働観は、「自分の時間の切り売りと考えて、指示されてないことは一切やらない。改善点等を見つけてボトムアップの流れにのせるなどということは、まずありえない」と聞きますが、どの程度本当なのでしょうか?

もし、ある程度以上本当であるなら、私は、日本から次のことを伝えられないかと思うのです。

① どんな仕事でも、イヤイヤやっていては得られるものは殆どなく、本当に安い時給で自分の時間と人生を切り売りするだけになってしまう。「自己は主人と同じく、また組合の一員たりとの念を有せざるべからず。雇人根性に始終する者は大事をなす能わざるべし。たとい身は小使に過ぎずとも、われはこの店の主人なり、と常に心がくべし。」と戦前の日本の文学作品にもあるように、「お金をもらいながら勉強をしている」と考えることで、次のステップを目指すことは、少なくとも不可能ではないという事(ただし簡単でもないのでしょう。特に現代は。後述。)

② 鶏と卵の関係だと思いますが、サービス産業という、メンタル面が非常に大きい分野では、イヤイヤ働きながら良い接客などできる訳がなく、相手(顧客、上司、同僚、後輩、部下)もそれに合わせた反応をするし、そうするとますます仕事がつまらなくなるという悪循環になります。逆に、顧客が感心するほどの接客ができる人には、好循環の流れができます。(Lilacさんにこんな事申し上げるのは、まさに釈迦に説法でしょうけれど。。。)

③ これも鶏と卵なのでしょうけれど、経営側(資本)と働き手の関係にも、「言われたことしかできないつまらない連中」では決してないことが示されれば、労使関係も違ったものになっていくのではないでしょうか。

④ 結局、お互い、「give が先にくる、 give and take の関係」であれば、良い方に回っていくのではないでしょうか。

今日のグローバル化がオキュパイ・ウォールストリート運動のような反発を受けるのは、経営側の方が目先の利益だけを目指して、徹底的に(労働者からだけでなく、環境も天然資源も未来のための社会的インフラからも全てから)まず take しようとしている事が、人々の直感レベルで感じられるからではないかと思うのです。労働者側も、日本でも、私の実感では45才あたりの世代を境に、指示されたこと以外はできない、或いは余分に働くことは自分にとって純粋に損であると考える人の割合が一気に高まるように思われます。 少数の例外の人々を除いて、お互い先に take しようとするマイナススパイラルに、世界的に陥っているように思われます。世界各地での銃乱射事件や通り魔事件、日本や韓国等で自殺者が多いことなどは、この悪しき流れの産物に思えてなりません。今のグローバル競争圧力は、それを分かっていても、まず先に take しないと競争に負けると焦ってしまうくらい余裕をなくさせるものなのでしょうか?(たとえば将棋のような頭脳ゲームでは、あせって指した手は大体ロクなものでなく、少し落ち着いて冷静に考えることのできた側が勝ちます。グローバル競争も同様ではないかと思うのですが…)

⑤ 上記①に引用しました「自己は主人と同じく…」は、実は、山本有三著「路傍の石(第二部)」の中で紹介せれているカーネギーの言葉です。カーネギーというと、グローバル資本主義の始祖のような印象がありますが、実は上記のような言葉も遺されていたのですね。サミュエル・スマイルズの「自助論」(Self-help) などでも、欧米の産業革命黎明期に、働きながら何かを学んでいき、大きな仕事を成し遂げた人々が沢山出てきます。20世紀のアメリカ、イギリスでも、高等教育は受け(られ)ず、技師見習いや製図工などから始め、スピットファイアやスカイレーダー、スカイホークといった傑作機の設計者となったレジナルド・ミッチェルhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%B8%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%BB%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%ABやエド・ハイネマンhttp://dic.nicovideo.jp/a/%E3%82%A8%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%8D%E3%83%9E%E3%83%B3という人達もいます(軍用機ですが…)。

以上のような、人間の持つ可能性をプラスに考え、民族や人種の違いを超えて共感をよべるもの、そういったものを日本発で世界にアピールし、グローバルに共有することが前向きな解決の道になるのではないかと思っております。


最後に、心に留め置くべきこととして、環境や資源の有限さが今ほど切迫していなかった時代と同じようには、明るく楽天的に考えられないかもしれないこと、それでも、方向性だけは明るく楽天的に考えた方がよいこと、は考えに入れなければならないと思います。例えば、欧米諸国による「世界分割」がほぼ終了して有限の資源の取り合いになったから、2度の世界大戦になったのだと思いますが、幸か不幸か、核兵器の出現によって、もうこの次は絶滅戦になるであろうことが多くの人々に共感されるようになり、大規模戦争はできない時代になっていることは、良い方に考えることも可能だと思うのです。

仕事については、18、19世紀や20世紀前半と違い、自動化やマニュアル化、高度技術化の進展によって、低賃金単純労働が、今以上にほとんど工夫や改善の余地もない、或いは高度なブラックボックス状態の、工夫や改善が専門家でもない限り不可能なものになっているのかもしれません。私自身は、そうなってしまっていること自体を人類に突きつけられた課題と考えて闘志を燃やす方なのですが(エヴァンゲリオン「あんたまだ生きてるんでしょ!なら、しっかり生きて、それから死になさい!」 by Katsuragi Misato)、そして産業革命黎明期の、劣悪な環境で1日18時間労働を多くの人が強いられた時代よりは(少なくとも日本等では)遥かに環境は良くなっているはずですので搾取されてすぎているから何もできない、などということは絶対にないと思っています。(ただしもう一方で、産業革命黎明期以上に酷い環境で、今この瞬間も働いている人々がいることはもっと認識が共有されるべきだと思います。経済成長や健全な競争は、それをなくす為にこそ必要という認識自体を、日本から世界に発信すべきだと思います。)
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追伸 (Heineken)
2012-01-03 19:40:00
補足です。

「日本のサービス産業の質の高さ」は、「自分だけサービス残業しなかったら、他の人から何を言われるか…」というような、日本社会の不条理で過剰な同調圧力による部分も大きいと思われますので、それは大幅に改められるべきだと考えています。

ただし、チームで行う仕事の切り分けなど完璧にできるものではないでしょうから、一定の限界はあると思うのですが。労働条件の契約に皆が厳格に従い、グレーゾーンの仕事が見落とされた時に、経営全体レベルでの非効率や大事故が起こるのではないかと思います。

日本組織には、宋文洲さんのおっしゃる所の「トップのバカの壁」があるのではないかと思います。昭和の旧日本軍や(明治の日本軍はトップも現場も十分機能していたと思います。見方によれば、欧米列強同様、帝国主義の殺人・略奪チームだったとしても)、東京電力などが典型でしょうか。トップは実は既得権を貪るだけのお飾りで、実際にトップの役割として機能していないから、現場が報酬以上の仕事をして支える、というのがこれまでの日本組織の(ガラパゴス的?)特徴だったのかもしれませんが、宋さんのような実力も実績もある海外の方、或いは実際に海外で仕事をしている日本人の方々から、日本の中だけで内を向いていては気づき意にくい、或いは気づいていても言い出しにくい日本社会の問題点・改善点がバンバン指摘されるようになり、逆に「グローバルスタンダード」とやら(※)の問題点・改善点を、日本から指摘できるような人材が大量に育っていく時代になっていくといいですね。

(※ 世界中で多くの方がそう思っているのではと思いますが、グローバルスタンダードって、実はただのアメリカンスタンダードなことも多いのでは?困ったことに、アメリカの人達って、悪気なしでそれを世界スタンダードと思ってないでしょうか?ただ、先日Twitterでアメリカで仕事をされているある方が「(レターサイズが標準のアメリカでは)A4サイズは「international size」に入っていて、アメリカがinternationalではないという自覚があるのが嬉しい」と書かれていたのを拝読し、私も大変嬉しく思い、アメリカのことをよく知らないくせに決め付けてしまっていないか気をつけようとは思ったのですが。)
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グローバル人材の定義は? (@pcaffeine)
2012-01-04 01:29:11
そもそも論で悪いんですけど、グローバル人材の定義って何か共通認識があるものなんですか?私が知らないだけかもしれないですけど。そこが明確になってないと、文章の内容がぼやけるような。

で、定義が曖昧なままなんとなく言いたいことをつかむと、ここで言ってるグローバル人材ってマーケティングとか企画とかそっち系の人のことかなぁと思ったけど違いますか?エンジニアはあんま関係無いような(分野によって違うでしょうけど)。

あと、たまに思うんですけどエントリの冒頭にサマリーがあるといいなー、と思います。
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日本はグローバル化に向いているか (Lilac)
2012-01-05 02:20:23
コメントの返事が遅くなりました。

@大手町さん
>日本人がグローバル人材大国になれるチャンスは相当薄いと思っています。理由は2つ。
1. 人材を育てるのはその分野で既に栄えていないといけない
2. 日本人は日本コミュニティの中で最も成果を出してきた。現地化して華僑・印僑のような成果を出してきた実績はまれ。

1ですが、日本が人材輩出してきたのは別に半導体だけではないです。大手町さんはそういう分野にいらっしゃるから、そう思うのかもしれませんが、半導体以外の電子電気分野、機械工業なども、日本が圧倒的に強い分野です。素材もそうですが。こういう分野では圧倒的に優位に立てるでしょう

2は、二つの意味で間違っているように思います。まず、華僑も印僑もそれぞれのコミュニティを活用して成果を出しています。決してピンで、海外に出て戦ってるわけではなく、華僑コミュニティを使ってるわけです。また、日本は豊かな国であり、外に出る機会は少なかったものの、今までもペルーやブラジルに存在する、圧倒的に強い日本人コミュニティなどがあります。大統領を輩出するくらいなわけですから。

この反論に加えて、私が日本がグローバル化に向いていると思う理由を二つ挙げます。
1.日本は明治初期から、グローバル化を迫られて、実際に短期間で成し遂げている。生糸や絹製品の直輸出しかり、海外生産しかり。その対応速度は、米国より速いです。ヨーロッパ以外の国で言うと、日本は最も最初にグローバル化の問題に迫られ、それを短期間でといてきた国と言えると思います
2.これは私の仮説ですが、今までのアングロサクソン主導による「プッシュ型」のグローバル化は新興国中心に発展する世界では成立しないのではないかと思います。そこにおいては、日本人のような「プル型」のコミュニケーションによるグローバル化が向いてるのではないか、よって日本人もグローバル人材として活躍できる余地が大きいのでは?なんて思っています

@harappa5さん
>大手町さんのように悲観論を書いても仕方がないので、どうやれば「グローバル人材大国」になれるのか?を論じたいと思います。一言で言えば、「生態系」を築き上げる事です。ハリウッド映画で例えれば、映画産業が繁栄しているから外国から優秀な人材が押し寄せてくる。優秀な人材がいるから映画産業が繁栄する。さらに、優秀な人材が来日するという、循環を作り出す事です。

そうですね。私も人材の生態系を作り上げることが大切だと思います。シリコンバレー然りですね。
ところで「福島経済特区」は非常に面白いと思います。実現させたいですね・・・

@Freedomさん
>グローバル人材が増えると人類に害悪をもたらしかねないということが現実には起こっているということを考えないといけないでしょう。税金を払わないグローバル人材よりも、税金を納め災害時に略奪を行わない倫理観のある人材を育てていることが日本の誇りなのではないでしょうか。

この前までは良かったのに、最後のこの部分で論理が飛びましたよね(笑)。
おそらく反論のために敢えて書いてらっしゃるのでしょうけれど。
最後の部分ですが、こういう価値観を持ちながら、グローバルな視野を持つ人材を育てていくのが大切なのかなと私は思っています。

>グローバル化した企業はどんなことをしているでしょう。先日、昨年140億ドルの利益を上げているGEは1ドルも税金を払っていないし、グーグルもほとんど税金を払ってなく、2004年グローバル企業の7000億ドルの利益の内160億ドルしか税金を払っていないことがニュースになっていましたね。アメリカに本社を置き続けているグローバル企業が多く存在しているのは、どんなに利益を上げてもダッチ・サンドイッチで2.3%しか税金を払わないからですよ。

グーグルもGEも、法人税以上のメリットを米国にもたらしていると思いますよ。国外で稼いだ富を、米国人である従業員に支払っているわけですから。彼らは所得税を国に納めてくれます。Appleは中国のFoxconnの他にも各国のApple Storeで、雇用を生み出していますが、Googleにせよ、Appleにせよ、国どおしの交渉のカードとして活用できるほどに大きくなったのは、貢献していると言えるのではないかと思います。

@amazedkoumeiさん
>世界展開部隊の本営や将軍のポジションを担える人間が東京に集まるようにしようず!って話ですね。
説得力ある海外戦略と求める人材像を煮込んだうえで、社長はMIT帰りですがなにか?という但し書がついた人柱企業が東京で起ち上がる様を無責任にも妄想しましたw

有難うございます。すでに私は人柱として、日本企業のグローバル化をやってると思いますよ。自分が起業してやる、というのもひとつの方法かもしれませんが。

@Heinekenさん
長いコメントを有難うございます。ひとつの論点だけお答えすると、私は日本人が得意な資質を活かしながらのグローバル化こそが、今後必要となるものだし、やることが出来るものだと思ってますよ。それが先ほど大手町さんへの御回答で一部書かれていますが・・。

@pcaffeineさん
グローバル人材は、色んなところで論じられてますからね。確かに定義があいまいな部分も大きいと思います。
ただ、技術者も含まれると思いますよ。これからの研究開発は、市場である新興国のニーズを取り入れていく、それこそGEのイメルトの言う「リバース・イノベーション」はひとつの主流になると思います。
返信する
グローバル人材を育てるためにも (d)
2012-01-05 17:41:07
少子化対策が先決ですね・・・w
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Unknown (Vaccaj)
2012-01-05 20:57:38
楽観は意思の力ともいいますが、過度の楽観視も禁物でしょう。これから相当に厳しい運営を余儀なくされる日本という国家や日本企業の運営において、ただただ楽観的な未来の予想を掲げても、それは不幸を招くだけだと思います。自らを過大にも過少にも評価しないことが大事です。

日本がグローバル人材大国になる為には超えなくてはいけない数々のハードルが存在しています。Lilacさんがおっしゃるような、グローバルに重用されえる人材としての日本人ならではの良さもありますが、それと表裏一体の日本人ならではの欠点もまたあります。

Heinekenさんが挙げていらっしゃるような、日本人のモラルの高さと日本社会の同調化圧力の高さなどは、その表裏一体の最たる例でしょう。おそらくこれらは不可分です。

明治維新以来、紆余曲折を経ながら一時期世界第二の経済大国に登りつめた日本人の勤労意欲の高さ、作る製品の品質の高さは確かに誇るべきですが、それは今は上司に言われたように働く企業の兵隊ばかりを大企業に残してしまい自由な発想を阻害し、品質の高いものさえ作れば売れるはずという誤った思い込みのもとに、日本の製造業はイノベーションの時代に随分そぐわないものを沢山作っては失敗する結果となってしまいました。

まだトップが優秀ならばいいのですが、日本の大企業のトップの大部分は未だに産業の情報化という大きなイノベーションの流れの意味すら分かっていないように思えてなりません。そして今は日本でもイノベーションを起こそうという機運が高まっていますが、国がかかげる「グリーンイノベーション」や「ライフイノベーション」などには誰も期待をしていないでしょう。

そして、日本がグローバル競争において勝つのが難しい一番の理由は、いくら経済的な大国になろうとも、グローバル競争において、ルールを決めるのはアングロサクソンを代表とする欧米であり、日本はそのルールの中で努力をするだけ。あまりにも日本やその他の非欧米諸国の力が強くなりすぎるようになれば、欧米は共通の危機感をもってそのルールを都合のよいように変えることができる。という厳然たる現実を受け止めなければならないと思います。

結局、欧米の基準でグローバルで勝てるか?という論旨でものごとを論じている限りは日本はお釈迦様の手の上で転がされている孫悟空のようなもので、そこである程度の成果は上げられても、世界に余裕がなくなればあっという間に食い物にされるという構造は、欧米列強が植民地支配をやっていた時代から、ましになったとしても、根本的には変えることができていない訳です。

しかし、Lilacさんもおっしゃるように、堂々と日系の名前を名乗りながら他の国の大統領になったり、軍や議会の中枢にいて、それで大きな影響力を行使できるぐらいに他国に溶け込める人材という意味でのグローバルな人材の供給源になることは、現実にそうなっていますし、それならばできるでしょう。

いまだにミドルネームを堂々と名乗れないアメリカの現大統領のことを考えれば、それは本当に凄いことだと思います。

しかし、それは欧米諸国の手足になる人材を提供するという意味でしかなくて、
日本という国や日本の企業がグローバルに通用し続けるのかという問題とは基本的に別の問題な訳で、今実際に陥っている危機を無事に切り抜けられる保証にはなりません。むしろこれらについては、太平洋戦争と同様の敗戦になることを覚悟しつつ今はそこからいかに立ち直っていくのかを考える時期である。というのが個人的な見解です。
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