ボストンに帰ってきて、いろんな友人と会ったり話したり。
皆最後の一週間は旅行に行くらしいが、私はボストンに居残り。
「学校始まるまであと1週間もあるのに、いったいボストンで何するの?」とか言われてしまう。
あるんだよ、いろいろと。
2年目は研究に専念することはどこかに書いたが、
来週、指導教官のUtterback先生との秋学期最初のミーティングがある。
それまでに夏休みの課題図書・論文を読み終えないとならない。
ところが、夏休みの3ヶ月間、インターンで忙しくて何の勉強もしていなかったので、
・英語を読むスピードがめちゃくちゃ落ちてる
・春学期に読み進めた本の内容を忘れている
ということが判明。
課題図書どころではない。
まずは春学期に読み終わったつもりだった、本や論文を一生懸命読んでるところ。
今年春までMITの教授だったレベッカ・ヘンダーソンと、HBSのキム・クラークが1992年に執筆した"Architectural Innovation" (アーキテクチャーレベルのイノベーション)を読み返す。
さまざまなイノベーション組織論のよりどころになっている論文だ。
あの有名なクリステンセンの「イノベーションのジレンマ」の中でも取り上げられてる。
一言で言うと、こういう内容。
「一般的には企業ではコンポーネントレベルのイノベーションしか起こらず、アーキテクチャを変えるようなイノベーションは難しい。
なぜなら、企業の組織体系は、通常製品のアーキテクチャに沿ってサブグループ化されており、イノベーションはそのサブグループの中でしか起こらないからだ」
おそらく日本の大手メーカーに勤めてる人なら、きっと「なるほど」と思うんじゃないか。
私も、コンサルタント時代、クライアント企業のメーカーでこういう事例を色々見てきた。
メーカーだと、例えば「第一設計部」「第二設計部」などのように、製品のアーキテクチャに即する形で、組織が分けられてることが多いんじゃなかろうか。
で、新しい技術の開発は、その「第○設計部」が担っている役割の中でしか起こらないため、そもそも「第一」「第二」を分けているような製品のアーキテクチャが必要なくなるような、新しいイノベーションまでは起こらない、という単純な話である。
そんなことわかってるんだったら、それを超えるようなイノベーションを技術者が意識して生めばよいじゃないか、と言うかもしれない。
それは国を問わず難しいのだ、というのがこの論文の趣旨。
例えば、すでに「第一設計部」「第二設計部」と組織がある場合は、その既得権益を守ろうとする、組織の人たちがいる。
だから、壊そうと思って壊すのは難しい。
その結果、本当は第一・第二で分ける必要の無いのコストがかかり続けたりする。
また、それぞれの組織の中では、会社全体ではなく、各部で個別最適化されるような評価のされ方をする。
そうすると、枠組みを超えるようなイノベーションを起こすのは、部の利害に反するのできわめて難しかったりする。
たまに異端者がいて、組織の枠を超えるイノベーションが生まれたりするが、そういう人が常に評価されるとは限らない。
そういう組織の枠組みを超えるために、企業は「中央研究所」というものを持っていたりするが、
こう分けられてしまうと、「中央研究所」では、どの製品にも幅広く関係があり(関係が無い)、基礎的な技術を研究しがちである。
結局製品に近いところで、製品に対する開発責任がないと、製品のアーキテクチャを変えてイノベーションを起こす、という話はなかなか起こらない。
また、仮にイノベーティブな製品アイディアや技術が生まれても、組織の協力を得て製品化できるとは限らない。
更に、たとえ、製品化までこぎつけたとしても、営業・マーケティング含めた社内の協力が得られるとは限らず、不発で終わったりする。
クリステンセンが「イノベーションのジレンマ」で述べているように、イノベーティブな製品は、得てして既存製品と異なる売り方・顧客セグメントを狙うことになり、それが社内に受け入れられるとは限らないからだ。
繰り返すと、イノベーションの枠組みは、組織の枠組みに依存する。
そして、企業でその枠組みをぶっ壊すのはきわめて難しい。
したがって、アーキテクチャの変更を迫るような大きなイノベーションは、企業では行うのが一般的に難しい、と言うことになる。
これは、当たり前のように思えて、なかなか深い。
もちろん、反例は常にある。
でもそれは重力や水の流れに逆らうような、ものすごい努力と苦しみが必要。
ちなみにLebecca Hendersonの上記の論文には、「どうやってこれを解決するのか」については書いていない。
結局は、どんなに難しくても、古い枠組みをぶっ壊していくしかないと思うんだけどね。
そして、組織の枠組みを超えるイノベーションを奨励する、報奨制度や会計制度などの仕組みを設けるしかない。
具体的な解決方法は、組織によって全く異なるので、「一般論」は無い。
しかし「イノベーションは古い枠組みの中では、その枠組みに添った形でしか一般的には生まれない」と企業のマネジメントが意識しておくこと、
そして、いざと言うときに、マネジメントが率先して状況を変えていくのが大切ではないか、と思う。












そういえばこの前そう言ってましたね。
私は今日ハーバードの授業にもぐって、クリステンセンに会ってきました☆ (←ただのミーハー?)
また今度書きますね