Robert Mondavi。
ワイン好きなら、その名を聞いたことがあるはず。
数々の葡萄生産技術やワイン醸造技術を開発し、マーケティング技法を駆使し、カリフォルニアのワインを世界中で名声を高めた、第一人者といっても過言ではない。
名前から分かるように、元はイタリアからの移民。
大学を卒業した後、カリフォルニアで一番古い、と言われるブドウ畑、チャールズ・クリュッグを父と弟と共に手に入れ(現在は弟のPeter Mondaviの所有)、ワイナリービジネスを始める。
その後、フランス、ボルドーの五大シャトーのひとつ、シャトー・ムートン・ロートシルトのオーナー、ロスチャイルド家(ロートシルトはロスチャイルドのフランス読み)に見込まれ、カリフォルニアに合弁のワイナリーを作る。
それが、カリフォルニアで一番高価なワイン、オーパス・ワンだ。(一番美味しいかどうかは別として)
ワイナリー見学は、25ドルとお高かった。
が、ガイドの好意によって(というかMariaと私が質問魔だったため長引いて)、1時間半に及ぶ充実したものだった。
カリフォルニアのワイナリーを見学したのは初めてだったので、驚く発見がたくさんあった。
ロバート・モンタヴィのワイナリーの門は、まるで修道院のようだ。
これは、この地の守護神である、St. Fransiscanという守護神を祭るためのものと言う。
St. Fransiscanは、San Fransisco(サンフランシスコ)の名前の元になった守護神である。
関係ないけど、ナパにはFransiscan(フランシスカン)という名のワイナリーもあるよね。確かこのあたりだったはず...
Mariaによると、スペインでは守護神ごとにミッション(宗派みたいなもの)があり、St. Fransiscanもその一人だと言う。
ミッションごとに、建築様式とかも違うらしい。
ちなみに、この前行ったCarmel MissionもSt. Carlosという別の守護神を祭るためのものだそうな。
カベルネ・ソーヴィニオンの畑。
美しいバイラテラル(葡萄の樹の枝を二手に分ける技術)にうーんと唸る。
こんな綺麗でも、ここらの畑は最高級のワイン用ではないらしい。
「何か質問は?」とガイドが問うので、「どうやって収穫時期を決めているのか?」と聞いてみた。
すると、超高級ワインを作る畑では、ブルゴーニュのように、一つ一つの樹を見て、収穫時期を決めるらしいが、普通のレンジのワインを作る畑では違うらしい。
畑の中の4箇所からサンプルを取り、その平均をみて、収穫時期を決めるのだそうな。
えぇっー!!
そんな統計的なやり方で意思決定してるんだー。
じゃあDMDじゃん、と言って、Mariaと二人で笑う。
(DMD=スローンの1年生が受ける、確率統計・意思決定の授業)
広大な畑。
いったいどのくらいあるのか、とガイドに聞くと、ここだけで500エーカー以上あると言う。
Mariaのi-Phoneによると、1エーカー=0.4ヘクタール。
つまり、200ヘクタール以上あるのだ。
えぇっー!!
それってボルドーで一番大きいシャトー・タルボの2倍じゃん。
と驚いて、ガイドに告げると、
「Welcome to the U.S !」
と言われた。
「ここはアメリカなのよ。」と言わんばかりに。
畑を見た後は醸造施設へ。
すごい数の木桶がならぶ。
しかもここも、ステンレス桶じゃなく、木桶だ。
シャトー・ムートン・ロートシルトに行ったが、あそこも全て木桶だった。
「木桶は温度調整が難しい、と言われるのに、何故ステンレスではなく、木桶を使っているのか?」
と問うと、ガイドが
「ステンレス樽は外界の温度変化の影響を受けやすいからだ。木桶は外気温度の変化を余り受けず、安定している」
と言うので、
「いや、そうじゃなくて、発酵中に桶内の温度がかなり上がるはずで、その温度調整は木桶だと難しいんじゃないか、と思うが」
と更につっこむ。
するとガイドが、にやっとして、ちょっと待ってて、と木桶の中を見せてくれた。
中を見ると、ステンレスの温度調節器がついていた。
「発酵が進むと、華氏90度近く(摂氏40度)まで上がってしまうことがある。それ以上になると菌が死んでしまうので、そうならないように、温度を下げるの」
と説明。
樽は全て最新のコンピューター制御の温度管理が出来るようになっていて、超近代的、って感じだった。
なんか伝統を重んじるボルドーのシャトーとは違うなー。
ワインを貯蔵する貯蔵庫へ。
ここにおいてあるのはすべて高級ワインだけだという。
でも、すごい数。
シャトー・ムートンの2倍くらいの広さはあるのでは?と思った。
突然、「しゅっーー」っというすごい音がして、あちこちから霧状の水が出てきた。
湿度を自動的に管理していて、ある一定以上湿度が下がると、自動的にスプリンクラーのようにきりがまかれるらしい。
すごいなー、モンダヴィ。
全部自動なんだ。
ボルドーの伝統的なシャトーを去年訪れた後だけに、カリフォルニアのこの近代的な施設に圧倒された。
ただ、意外と「自動樽回し機」みたいな、ボルドーのミッシェル・ロランとかがコンサルに入ってるシャトーで良く見る装置は入ってない。
あれは、やっぱり金がかかるだけで無駄なんじゃないか、と思った。
最後にボトリングルームへ。
ボルドーでは、ボトリング業者が来て、ボトリングをしてくれるのが普通だったが、ここはやっぱり生産量が圧倒的に多いので、自社でボトリングも持ってるのだ。
ボトリングの機械は、全てヨーロッパ製。
ボトリングはドイツ製。
コルク挿しはイタリア製。
キャップシールはスペイン製。
「スペイン製もあるんだ!」とMariaが嬉しそうにしている。
いやぁ、毎回Lilac様の文章&写真はいちいち私の興味のツボをとらえすぎてて困りますw
これからも楽しみに読んでください~