以前に書いた記事「どの事業に参入すべきかを超簡単に見極める方法」で、Utterback先生のドミナント・デザインの考え方を紹介しました。
ひとつの製品・サービスが産業になり始めてしばらくすると、その製品・サービスの基本的なデザインや期待されるスペックがだんだん決まってくる。
これを「ドミナント・デザイン」と呼ぶ。
ドミナント・デザインが決まる前は、製品そのもののユニークなデザインや機能などが勝負どころになるので、いろんな企業がその産業に参入。
色々なデザインや機能の製品が市場にあふれる。
しかし、だんだんデザインやスペックが収束してくる。
一度ドミナント・デザインが決まってしまうと、後は製品の質や価格、付随するサービスやマーケティングといったものしか勝負どこがなくなってくるので、新しく参入して勝つのが非常に難しくなる。
このあたりから、価格競争に負けて市場を去るプレーヤーが続出。
だから、新規事業に参入するなら、ドミナントデザインが決まる前に参入すべし。
と言う話。
この法則は驚くほどいろんな産業で当てはまることが、1990年代のUtterback先生周りの研究者によって実証されている。
実際「勝負が決まる前に参入すべきだよね」というのはわかりやすい。
ところが、1970年代から80年代にかけ、この法則を破り、さまざまな産業でドミナント・デザインが決まった後に参入して成功し、他企業からシェアを奪ってきた国がある。
それは日本です。
日本企業は、自動車にせよ、半導体にせよ、ディスクドライブにせよ、テレビにせよ、産業のドミナント・デザインがあらかた決まった後に参入し、米国企業からシェアを奪ってきた。
例えば自動車。
自動車のドミナントデザインである「鉄鋼で閉じられた車体に4つの車輪、前後左右に窓ガラス、エンジン駆動、ブレーキシステム・・・」という、
誰もが自動車といえば思うデザインが固まってきたのは1920年代後半。
以後、基本的にはこのデザインにのっとった形の製品しか市場に出てきていないし、このころをピークに業界の企業数はどんどん減ってきている。
ここに日本企業が参入したのは1950年代。
その後の躍進は皆さんご存知の通り。
同じことがブラウン管テレビでも。
ドミナントデザインは規制で決められたので早く、1950年代前半だったが、
この後に参入した日本企業は、1980年代後半には、世界シェアの上位3位までを独占していた。
何故、デザインが「がちっと」決まって、品質と価格しか勝負どころがなくなったところで参入した企業が勝つのか。
Utterback先生なんかは、1990年代にはこのあたりの日本企業の謎に興味を持って、相当研究をしたらしい。
今でも、先生の部屋に行くと、一角に「日本企業本コーナー」みたいなところがあって、そこには驚くほどいろんな種類の日本企業研究や、MITI(通産省)などについて書かれた本がある。
先生は今でも、本質を理解した気にはなれないそうなのだが、一応の結論はこう。
「ドミナント・デザイン」とは製品そのものに限ったイノベーションの話。
実際には、製品のドミナント・デザインが決まってくると、製品を作る生産プロセスでのイノベーションが盛んになってくる。
日本企業は、この生産プロセスに非常に興味が強く、さまざまなプロセス・イノベーションによって圧倒的にな品質向上を生み出してきたのが、
日本企業がこの法則を破って勝ってきた強さの源泉ではないか、とのこと。
ところが最近は、日本企業だけが後発で参入する、ということはもう少なくなっているし、
それから製品市場自体が最初からグローバル化されてきているので、
こういう「日本企業は何故強いか」みたいな議論をする意味が薄れてきていると思う。
例えば、薄型テレビ、電子マネープラットフォーム、デジタルカメラ、音楽プレーヤー。
Utterback先生の授業でも、いろんなチームがこれらの産業の研究をしていたが、日本企業も含めて、ドミナント・デザインの法則は保たれている分野が多い。
「日本企業だけがプロセスが強くて特別」という状況はなくなってきた。
それから私の感覚だけど、日本企業自体もどんどん「日本らしい強み」みたいなものに頼らない仕組みに変わってきているのではないか。
1990年代までは、確かに「日本らしい強み」というものがあったように思う。
たとえば、藤本隆宏先生が論じているような「日本のものづくりの強み」みたいなものが、日本企業にはたしかにあった。
米国でも1990年代に書かれたイノベーション関連の論文には、日本企業研究をしているものが山のようにある。
ここにも、日本企業が独特の強みを持つ理由には、日本の文化的な背景も沢山書かれている。
終身雇用制と従業員の強い忠誠心、であったり、
海外の事業所に実際に日本人を貼り付けて、実地の情報交換をすることであったり、
「あ・うんの呼吸」で通じるエンジニアどおしのやりとり、であったり。
独自の技術に基づく、垂直方向にブラックボックス化された製品アーキテクチャであったり。
しかし、1990年代後半から、日本企業はこの「日本らしさ」のためにうまく行かず、苦しんできたのではないか。
終身雇用制が生んでいる巨大な間接コスト。
日本人を直接海外に送り込むコスト・日本人の考え方でローカルな製品を作ることの限界。
ガラパゴス問題。
それで、だんだんこういう「日本らしさ」を取り除き、ひとつのグローバル企業として、本当にグローバルに通用する強さへと進化させているように思える。
別にこれって日本企業に限ったことでなく、
フィリップスみたいな「オランダらしい」組織体系を持った企業なんかも90年代暮れから苦しんでて、
どんどん変わってきてるから、世界的兆候だと思うけどね。
そういうわけで、歴史的に日本の企業がこういう法則を破って打ち勝ってきた、というのは嬉しいニュースだが、
あまり「日本らしい強み」のようなものを議論することには意味がなくなってきていると、最近は思っている。
むしろ、日本企業が(または日本人が)「日本らしさ」のようなものに頼らず、真のグローバル企業として強くなっていく方法論が問われていると思う。
ドミナントデザインの考え方、事例については、Utterback先生の1994年の著書(下記)で紹介されてます。
Mastering the Dynamics of Innovation: How Companies Can Seize Opportunities in the Face of Technological Change
Harvard Business School Pr
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追記 (2009/10/5)
この記事を書いた後、宿題のケースなどを読んでいて思ったのですが、製品のドミナントデザインが決まった後に出てきて成功している企業は、日本企業以外にもありますよね。
有名な例では、パソコンのDellとか。
もちろん、Dellは流通サイドのイノベーションを起こし、パソコンそのものではなく、その流通でドミナントデザインを築いたともいえるのですが。
製品のドミナントデザインだけじゃ、全てを語れない、っていうのが正しい見方かもしれません。
ランキングサイトから英語の留学情報を求めてきました。
内容が英語以上に興味がある分野なのでじっくり読ませていただきます。
最近では日本企業の「日本らしさ」は大分失われてきていると感じます。
組織力から個の能力にまかせるところが多くなってきて隣に座っている人が何をやっているのかわからないという状況が増えてきていると思います。
1980年代の日本企業のやり方がすべて正しいとは思いませんが、もう一度再確認すべきことはあるのでは??と日本で働いて思いました。
稚拙な考えで申し訳ないです。
また伺います。
応援ぽちっ♪
各自課題を処理していく中で、こちらの問題意識がなんだったのかを分かってもらえたようで(直感を説明するのは難しいです)。
こちらのブログ、興味深く拝読させていただいてます。
日本企業がグローバル企業として戦える方法論は各企業が自ら見いださないといけない(試行錯誤の中で最適化されるもの)と思うので、部外者から見ると中々議論が進めづらい話ですよね。
中小企業含めて全ての日本企業が「日本らしさ」を持っているわけでもなく、逆にある企業の「日本らしさ」が意外と他の国から見ても普遍性があったり、この10年ないし20年が日本企業にとって、日本市場の中であまり意識せず当たり前だと思っていた事項を見直し、改めて環境が変化するものだとの意識の下で再構築を試みる上では必要なプロセスだったんだろうと思います(他人事ですが・・・)。
自分が「これだ」と思うものは遠慮せず、どんどん世に問うていく(外に出ていく)ことが当たり前になる「ゆとり(のりしろ)」みたいなものはどうやって作れるのか、課題は多い気がします。
なんかお礼を兼ねて書き込んでみましたが、議論が広がらなくて申し訳ないですね。
ありがとうございました。
余談ですが、昨日パスポートの更新にいってまいりました。その際、書店に並んでいたのがipodと似た音楽再生ツールで英語勉強ツールがありました。操作性も楽ということで入り口を広めているのかな、なんて単純に思ってましたが、今日の日記を拝見して感慨深いものがありました。
いやー、実は自分で後で読み直して、「結局、何が言いたいんだ私?」とか思っていたのですが、
皆様、親切に解釈してくださり、いろいろコメントをいただけて嬉しいです。
>斉藤様
>組織力から個の能力にまかせるところが多くなってきて隣に座っている人が何をやっているのかわからないという状況が増えてきています
確かに、昔の日本にあった、終身雇用制などや会社への忠誠心、皆が同じ教育を受けてきて同じ価値観を持っているという期待、などに基づくような「組織力」って、徐々に薄れてきている、という感覚はありますよね。
もちろん組織なので、組織の文化ややり方を共有している分、組織として一つになって動いているわけですが、その中核にある理由が変わってきている気がします。
>outernationjpさま
こちらこそ、来て下さって有難うございました。
>この10年ないし20年が日本企業にとって、日本市場の中であまり意識せず当たり前だと思っていた事項を見直し、改めて環境が変化するものだとの意識の下で再構築を試みる上では必要なプロセスだったんだろうと思います(他人事ですが・・・)。
そうですね、まだまだ過渡期にあるとは思いますが、変わりつつあると思います。
>自分が「これだ」と思うものは遠慮せず、どんどん世に問うていく(外に出ていく)ことが当たり前になる「ゆとり(のりしろ)」みたいなもの
こうなってくると、起業する人も日本でももっと増えてくるかもしれませんね。
>takayosiさま
>ipodと似た音楽再生ツール
まさに携帯音楽プレーヤーはiPodがもうドミナントデザインを形成した感がありますね。。
TOEFLで苦しんでいるものです。
いつも、大変刺激的な記事に感服しています。
今回の記事も非常に興味深く読ませていただきました。
その中で、一点、考えさせられる部分があったので、
少し長くなりますが、コメントをさせていただきます。
「日本企業が(または日本人が)「日本らしさ」の
ようなものに頼らず、真のグローバル企業として強く
なっていく方法論が問われていると思う。」
の部分について、最近、大前研一や冨山和彦が唱えている
議論に近い話ですが、日本の企業がグローバル企業として
強くなるというのには、
①日本国内で製品を作り、海外に輸出することで稼ぐ
②海外で作って海外で売る(日本に輸出する)ことで稼ぐ
という二つのタイプがあって、それぞれが、日本国内に
与えるインパクトは全く異なっていると思います。
①の場合、日本企業の儲けは国内の雇用、賃金支払い、
税収となって、日本国内に利益をもたらしますが、
②の場合、雇用は海外で生まれ、賃金は海外で発生し、
税金も現地政府に取られるので、日本国内に利益が
戻ってきませし、それどころか、製品を逆輸入する
ので、貿易赤字が進むと考えられます。
高度成長期には、①の形で企業と国が二人三脚で日本を
強化してきましたが、今は②の形が主流となってきていて
日本の企業がグローバル企業として強くなることの意味が
どこにあるのかを見直す必要があるのではないかと
思います(そのあたり、METIも全くコントロールできない
状況になってきていますね)。
TOYOTAが世界で活躍する事は、日本のレピュテーション
や日本人の誇りの向上には繋がっても、お金と雇用を国内
にもたらす結果には繋がらないということです。
それを考えると、日本企業という本籍に注目するのでは
なく、どこで活動し、誰に利益を落とすのかという事に
注目する必要があって、そういう意味で、日本市場の
閉鎖性は国内への利益誘導の観点で致命的だと思います。
実は、自分自身、どうしたら、Tokyo Marketを国富誘導
マシーンとして有効活用できるようになるのか、その
あたりを考えたくてBusiness Schoolを目指しています
(先日のエントリーにあったように、ここで思考停止
せずに自分なりの答えを考えているところです・・・)。
コメント有難うございました。
MBAを目指す理由ということで、MBAエッセイネタにお使いになるのかもしれないので、参考にしていただけるように、ちょっと真面目にコメントしてみますね。
>日本の企業がグローバル企業として
強くなるというのには、
①日本国内で製品を作り、海外に輸出することで稼ぐ
②海外で作って海外で売る(日本に輸出する)ことで稼ぐ
という二つのタイプがあって
これは確かにそうですね。ちなみに、ここに
3) 日本国内で製品を作り、日本国内で売る
というのが存在しない(これがないとMECEにはならないですね)のは何故かというと、
日本は少子化で市場が小さくなっていくため、日本で売っても儲からないことを前提としているわけですね。
したがって、ゆーたさんの2)のカッコ内にある「日本に輸出する」というのは、実際には行われていても、プラスマイナスでみれば無いです。(実際には輸出のほうが多い)
よって、日本に逆輸入することで貿易赤字が発生する、というようなことは実際には起こらないと思われます。
>②の場合、雇用は海外で生まれ、賃金は海外で発生し、
税金も現地政府に取られるので、日本国内に利益が
戻ってきませし
この話は、80年代後半から、日本のメーカーが海外に工場を移転するようになったころから「産業の空洞化」という形でずっと言われていたことではありますが、
本当に日本国内に利益が戻ってきていないのか、というとそうでもありません。
実際には、最も付加価値のある「研究開発」「製品開発」の部分は日本においている、というメーカーがほとんどです。
つまり製品ひとつのコストから原価分を除くと、海外で生産している分の生産コストの比率は小さく、日本国内で行っている開発コストの比率が大きくなっているわけです。
したがって、海外に生産委託し、海外で売っても、利益は日本にもちゃんと入ってきてることになります。
(テクニカルには、海外で生産して販売した分も、いったんは日本の本社にお金が流れていることに注目しましょう。海外生産分は、その工場から日本の本社がいったんトランスファープライスで買い上げ、それを海外の販売店に別のトランスファープライスで売っているわけです。モノの流れとお金の流れは違うわけです。ですので、心配しなくても、きちんと日本にはお金が入ってきています)
この話にはさらに続きがあって、いまはこの「研究開発」「製品開発」の部分も、海外に移行すべきなのではないか?と言う議論が2000年代初めころから徐々に始まっています。
>TOYOTAが世界で活躍する事は、日本のレピュテーション
や日本人の誇りの向上には繋がっても、お金と雇用を国内
にもたらす結果には繋がらないということです。
トヨタは、いまだに日本で生産したものを海外に輸出しています。
具体的な数字は忘れましたが、確か生産では日本:海外が5:5とかなのが、需要では日本:海外=3:7 くらいなのでその分輸出しているわけです。
で、そういう工場では日本の人(移民含む)を大量に雇用しています。
昨年の暮れに、トヨタ(と系列の企業)が大量の期間労働者の解雇をしたことで大問題になりましたよね。
日本にもまだまだ生産工場がたくさんあるわけです。
トヨタが全てを海外生産に移行しないのには理由がいくつかあって
・ハイブリッドカーなどは技術を盗まれたくないので日本で生産したい
・レクサスなどの高級車は、海外工場の生産ラインのレベルがまだ低いので日本で生産したい
・全体として、生産ラインのオートメーションは日本が最も進んでいるので、日本で生産するのが最も生産コストが安い
などです。
3番目の理由が個人的には一番面白いと思ってます。別にトヨタだって、本来なら人件費が安く、生産コストが安くなるはずの海外で生産したいと思います。けれど、海外ではオートメーションのレベルを日本並みに上げることが出来ていない。それは雇用を維持するためにやっていない、のではなく、やろうとしているけれど出来ていない、のだと推測します。
生産のレベルでも、まだまだグローバライゼーションは壁が色々あるということなのです。
自動車に関しては研究開発は、いわんやおや、です。ほぼすべて日本で付加価値がつけられていると言っても間違えないでしょう。
別にこれも、そうしたくてしている、というよりも、言語の壁、文化の壁、それを伝えるための壁、などによって研究開発を海外に移していくのは大変難しいからだと思います。
したがって、「グローバル化」は日本企業は企業の利益を最大化するために頑張って進めているのだが、なかなか進まない、というのが現状だと思います。
そうかんがえれば、日本人がMBAに行く意義って沢山あるように思います。(現にトヨタはまだ沢山の人をMBAに社費で送っていますね)
ゆうたさんがなさっているように、メディアでいわれていることに対して、論理的に展開してみるのは、非常に良いと思います。
私がもし付け加えるとしたら
・MECEに考える(本当にそれで全部か?つっこみをいれる)
・ファクトベースで考える(事実がどうなっているか、調べる)
だと思います。
それで、考えが色々膨らんでくると思いますよ・・
エッセイの参考になるかもしれないと思い、色々書いてしまいましたが、是非受験のほう頑張ってください。
ご指摘を踏まえ、自分で書いた内容を読み返すと、議論の前提にあった「国富の増減」
という観点について非常に言葉足らずだったことがわかりました。
以下、国富の増減という観点で考えると、
まず、国内生産・国内販売は国富の海外流出という観点の議論ではあまり寄与しないので
省いてしまっていました。
実際には、海外と全く関係を持たない日本の企業は数多くあり、それが内需の減少に
さらされているという議論は別途重要な論点だと思います。これも一言きちんと触れるべきでした。
また、海外移転がマイナスを生むという議論は少々乱暴ですね・・・。
むしろプラスを減少させる可能性について検討するというほうが適切でした。
一企業で見ると、資金のやりとりについて、
①トランスファー買い上げ・・・コスト
②トランスファー売り上げ・・・収入
となり、②>①より、差額が利益となりますが、国全体で見ると、海外移転がない場合、
①(コスト)もどこかの企業や個人の利益として国内に残るため、海外移転により、
①の分が海外に流出していると考えられると思いますがいかがでしょうか。
もちろん、この差額が製品価格の下落→消費刺激や設備投資に繋がれば国内経済の
活性化に繋がるので、内需との関連で日本経済にとってプラスマイナスどちらに転ぶのかは
一概には言えないとは思います(事実関係の理解がまだまだです・・・)。
また、トヨタの国内生産拠点のあたりの議論は、海外生産・海外販売が国内経済に与える
影響を考えようと思ったのですが、トヨタは例が悪かったと思います。プリンター業界などを
考えた方がより適切かもしれません。
完全に海外で生産し、海外で販売する場合、その利益の一部は
①上記トランスファーコストの差額(海外拠点から第三国への販売の場合)
②国内拠点から特許や工作機械等の海外拠点への販売
③株式配当などの投資利益
により国内に還元されるものの、製造業の連単ギャップが拡大していることからわかるように、
製造付加価値やサービス販売の付加価値のうち労働分配分の多くは海外に流出していて、
結果的に国富の流出が起きたと見ることができるのではないでしょうかと言うことでした。
逆に見れば、海外企業が日本の高付加価値技術に目をつけ、付加価値の高い部分だけでも
日本国内で生産を行ってくれると、国富が増大すると思うのですが、最近の外資排斥は
この動きを強烈に妨げてしまっているということに問題意識があり、日本の投資対象としての
魅力を上げていく必要性を感じています(対日投資促進は政府も取り組んでいますが、
J-Powerや空港を守ったりしていますし・・・)。
もう少し踏み込むと、個別企業の利益最大化と国富増大が必ずしも一致しなくなってきている中、
個別企業の利益最大化よりも、どのように日本の国富を確保するか、どのように日本国民の
生活を守るのかということに関心があります。
自分も理系出身で、資金循環、企業の生産や資金構造について勉強不足で、ファクトベースでの
理解に乏しいと思っています(それだけに論理、ファクトバランス良く議論できるLilacさんを
尊敬してしまいます!)。上記の議論も、頭の中だけで考えているのであまり自信がありません・・・。
本当は資金循環統計や個別企業のビジネスモデルをもっと勉強しないといけないと理解しているものの、
仕事柄、なかなか体系的に勉強する機会もないので、こういう考える機会は非常に楽しいです!
ありがとうございます。
Business Schoolではこうした部分について確かな知識とファクト学び、確かな議論ができるように
なりたいと思います。また、実際に受験するとなった際には、ご相談させていただくかもしれませんが、
よろしくお願いします!
なるほどー。
読んでいて思ったんですが、「国富」って何ですかね?
税収のことなのか、GDPのことなのか、国民の金融資産のことなのか?
ついでに「国富」が増えれば日本国民は幸せになるのか?
そこのところはもう少し考えてみてもいいかもしれませんよ。
>本当は資金循環統計や個別企業のビジネスモデルをもっと勉強しないといけないと理解しているもの
個人的見解ですが、そういうことが必要になる職業(金融機関とか)についているわけでもなければ、そんなことまでする必要は無いと思いますよ~
もちろん、新聞を読んだり、日経ビジネスみたいな雑誌を読んだりくらいはしたほうがいいとは思いますが・・
私の上記のトヨタの知識も、日経ビジネスあたりから来たネタですよ。たいしたことは無いです。
個人的見解ですが、一般的には理系のほうがファクトベースの議論には強いと思いますよー。
分からないときに、「よし、まずは調べてみよう」というマインドセットで動く人が多いので、これはいいことだと思ってます。
ビジネススクールで学ぶことは、こういった企業の知識や経済学、戦略の考え方、などもあると思いますし、他の人とのインタラクションで学ぶ文化や組織のこともあると思います。
また理系出身のビジネスパーソンが増えるのは個人的には嬉しいです。
是非頑張ってくださいまし。
>・ハイブリッドカーなどは技術を盗まれたくないので日本で生産したい
アメリカではプリウスをアメリカ人がアメリカで生産していますが?そしてその為に故障が多くて問題になっているなんてこともありますね。メンテもアメリカ人が行うので他社と変わらないし。過去最大のリコールもだしていますね。
>・全体として、生産ラインのオートメーションは日本が最も進んでいるので、日本で生産するのが最も生産コストが安い
>本来なら人件費が安く、生産コストが安くなるはずの海外で生産したいと思います。
オートメーションだけでなく人件費も日本の方が半分なので本来は全て日本から輸出する方が利益は大きいのになぜアメリカで生産するのでしょう。
利益だけではなく政治的にも勝たなくてはならないからでしょう。
>アメリカではプリウスをアメリカ人がアメリカで生産していますが?そしてその為に故障が多くて問題になっているなんてこともありますね。
あー、はしょって書いたんで、分かる人は分かると思ってたんですが・・・
ハイブリッドカーは、いわゆる「ボックス」と言って、電池含め重要部分を日本で生産。
中国・アメリカにはそれを輸出して、プリウスの車自体は中国でもアメリカでも生産している、という形だったかと思います。
>オートメーションだけでなく人件費も日本の方が半分なので本来は全て日本から輸出する方が利益は大きいのになぜアメリカで生産するのでしょう。
利益だけではなく政治的にも勝たなくてはならないからでしょう。
ここは私は議論していませんでしたが、まあ単純に、1980年代後半の日米自動車協定があって、日本の自動車産業は米国での生産をやむなくされた、という経緯があります。
その後も生産拠点だけではなく、「R&Dも移せ」ということは散々言われているので、研究開発拠点も置いている、という経緯でしょう。
しかし、研究開発については、果たしてどれだけ移行しているかというと、??かなと思っています。