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クゥ~、科学者がまた体を張ってる。自作の新型コロナワクチンを自分の体に試す科学者たち(アメリカ)

2020年09月07日 | 世界びっくりニュース
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科学者らが体を張ったコロナワクチン開発
科学者が自らが実験台となり自作ワクチンの接種 /iStock

 時に科学者の研究にかける情熱は並々ならぬものがある。特に今回の新型コロナウイルスのように、早急にワクチンや治療薬を開発しなければならないとなればなおさらだろう。

 現在、約200種ほどの新型コロナワクチンが開発中で、人間による治験に進んでいるものも30種ほどある。これは異例の速さであり、科学者には最大限の敬意を伝えたい。

 だが、その他にも、自分の体を実験台に自作ワクチンを試す科学者たちが、少なくとも20人はいると言われている。その多くはハーバード大学とMITの関係者だ。 

 彼らは一刻も早く、有効なワクチンを開発する為に、自腹で費用を捻出し、動物実験すらも行われていない自作のワクチンを、自らの体で試しているのだ。

早急に有効なワクチンを。科学者らが体を張って実験


 ハーバード大学のプレストン・エステップ氏はボストンの某所で借りた研究室に1人でいた。大企業からの支援はないし、製作委員会だってないし、政府からの助成金もない。動物実験のデータもないし、倫理委員会からの承認もない。

 あったのは自作のワクチンの材料と実験台としての自分の体だけだ。混ぜたものをくるくると回すと、鼻にシュッと吹きかけた。

 正式な手順を踏んで、ワクチンを開発し、それが承認されるには1年以上かかると言われている。だが彼らは、悠長にそれを待っていられなかった。

 ハーバード大学の著名な遺伝学者ジョージ・チャーチ氏もそうした1人だ。彼は先月頭に1週間間隔でワクチンを2回接種した。エステップ氏から郵便で送られてきたものだ。

 チャーチ氏はもう5か月も外出していないとこぼす。エステップ氏は彼の元教え子で、彼が作ったワクチンならかなり安全だと信じている。

 「感染経路の多さや、症状が人によって大きく異なることを考えると、新型コロナのリスクの方がずっと大きいでしょう」とチャーチ氏。

 自作ワクチンは無害かもしれない。しかし、それが服用者をウイルスから守ってくれるかどうかは別問題だ。また自作ワクチンを開発し、それを提供する研究者は、法的にグレーな行為を行っている可能性もある。

科学者が体を張ってコロナワクチンの実験
ワクチンを試す、レストン・エステップ氏(左)とジョージ・チャーチ氏(右)
image by:ALEX HOEKSTRA

自腹で借りた研究室でワクチンを自作


 今年 3月、「ラピッド・デプロイメント・ワクチン・コラボレーティブ(RADVAC)」なるグループが結成された。

 エステップ氏が知人たち宛に、ワクチン開発には12~18か月かかると政府は予想しており、自作した方が手っ取り早いだろうとメールを送ったのものこのときだ。彼の考えでは、そのためのウイルスの情報はもう十分出ていた。

 エステップ氏はすぐに志願者を募った。その多くは、かつてチャーチ氏の研究室でヒトのDNAを解析し、それを公開するオープンプロジェクト「パーソナル・ゲノム計画」に携わった者たちだ。

 ワクチンのアイデアを練るために、RADVACはSARSとMERSのワクチンに関する報告を調べた。どちらもコロナウイルスの感染症だ。

 何しろ同グループは借りた研究室で、通販の材料を使って作業しているので、複雑すぎることはできない。シンプルでなくてはならなかった。そこでピペットと磁気かくはん機で作ることになった。

 こうして7月初旬、「ホワイトペーパー」が公開された。

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iStock

経鼻サブユニットワクチン


 そうした作られたワクチンは、「サブユニットワクチン」と呼ばれるタイプだ。これは病原菌のかけら、つまりペプチドで作られている。これらは新型コロナウイルスのパーツに相当する短いタンパク質なのだが、それだけでは病気を引き起こさない。

 RADVACのワクチンは、ペプチドをキトサンでコーティングしてナノ粒子にし、粘膜を通過できるようにしてある。これを鼻の内側に吹き付けて服用する。

 チャーチ氏によると、見過ごされているが、経鼻ワクチンは注射器によるものより接種しやすいのだという。

 研究者の中には、新型コロナのワクチンとして最適なアプローチだと考える者もいるそうだ。鼻に使用されたワクチンは「粘膜免疫」を作り出す、つまり気道の組織内に免疫細胞が現れる。

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Pixabay

果たしてうまくいくのか?


 現時点で、RADVACからワクチンの有効性について発表はない。新型コロナウイルスに対抗する抗体ができるかどうかは分かっておらず、チャーチ氏は自身の研究室でそれを確かめているところだという。

 副作用の危険性を懸念する研究者もいる。たとえば、かつて存在した医薬品メーカー、ワイス社でワクチンの責任者だったジョージ・サイバー氏は、ワクチンによって症状がかえって悪化する可能性を指摘している(なお彼もまたエステップ氏に声をかけられた1人)。

 だが、チャーチ氏は、調合が単純であることを考えれば、ワクチンはおそらく安全だろうと反論している。リスクとしてより大きいのは、それに効果がないことだろう、と。

 有効性や副作用についての証拠はないが、RADVACはワクチンを知人や同僚などに提供している。承認されたものではないが、感染症のリスクを抑える確かな手段であると、エステップ氏は主張する。

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ボストンで借りた研究室で経鼻サブユニットワクチンを試すドンワン博士
image credit:ALEX HOEKSTRA

法律上の懸念


 いずれにせよ、そうした行為は法的にグレーである。米国食品医薬品局(FDA)は、新薬の実験を行うには許可を得るよう求めている。それなのに、RADVACは無許可のまま計画を遂行しており、どこかの倫理委員会と提携しているわけでもない。

 エステップ氏の考えでは、RADVACはこうした規制の対象には当てはまらないという。あくまで自分たちで調合し、自分たちに投与しているだけで、お金も介在していないからだ。

 ただし、RADVACは法律の専門家のアドバイスに従っており、そのホワイトペーパーにも広範囲の免責条項が添えられている。

 たとえば、そこに記載されているワクチンの使用は完全に自己責任と明記されているし、また18歳以上でなければならない。

 とは言っても、新型コロナワクチンが国際的な注目を集めており、政府も強く関与していることを考えれば、RADVACが規制当局の目に留まる可能性は大いにあるだろう。


自分の体を張った人体実験はワクチン研究者の伝統だった


 サイバー氏によれば、自分を実験台にしたワクチン開発など、米国内ではどこの大学でも倫理委員会からお墨付きをもらうことはできないだろうという。

 しかしワクチン研究者たちは、以前から手軽にデータを得る方法として自分の体に開発中のワクチンを接種するのが常だった。彼自身、同じことを試した経験があるそうだ。

 ドイツ、テュービンゲン大学のハンス=ゲオルグ・ラメンシー氏もまた、今年初めに新型コロナワクチンを自らの腹に注射したという。それによってピンポン球くらいのふくらみができ、血液に免疫細胞が出現した。

 ラメンシー氏は、お役所仕事をさけ、ちょっとした予備データを得るために行ったと述べている。だが、あくまで彼が「免疫学の著名な専門家」であるから許されることだとも。「どこかの教授がポスドクの研究者にやらせたら犯罪ですよ」と。

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iStock

それでも科学者を研究に駆り立てるもの


 RADVACのプロジェクトに携わる人間が増えているために、規制当局によってさまざまな調査を受ける可能性はある。そうなれば無許可の治験を行っていると判断される恐れがないわけでもない。

 しかし、規制当局が動き出そうとそうでなかろうと、ワクチンの効果のほどが不明瞭であろうと、自作新型コロナワクチンはすでにそこに関わった者たちの心に影響を与えている。

 都市封鎖で休業を余儀なくされ、RADVACに加わったデータアナリストのアレックス・ヘクストラ氏は、鼻にシュッと一吹してから、今の危険な世界をそれまでとは違った心持ちで出歩けるようになったという。

この隣り合わせの危険に対して自分には免疫があるかもしれないという感覚は、びっくりするくらいシュールな経験ですよ。パンデミックの中を歩き続けるだけで、有用なデータになるわけですから。意義や目的意識すら感じられます

 尚、ワクチンの特許申請や知的財産の保護は行われておらず、ワクチンの設計と管理に必要なすべての情報と資料はRaDVacのWebサイトに掲載されている。
Materials and equipment – RaDVaC
https://radvac.org/materials-and-equipment/
References:technologyreview / vice/

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