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小川洋子「夜明けの縁をさ迷う人々」

2010年08月15日 | あ行の作家
短編集です

「曲芸と野球」
いつも三塁側ファールグランドで逆立ちの練習をしてる曲芸師
僕は、彼女に打球を当てないように心がけているうちに流し打ちが上手くなった
いつか姿を消した曲芸師
しかし、大人になった僕が草野球をする場所には必ず三塁側ファールグランドに曲芸師がいて、ずっと僕のプレーを見守っている


「教授宅の留守番」
研究のためパリへ出発した教授の留守宅を預かることになったD子さん
D子さんを訪ねた私は、教授の書いた本が賞をもらったことを知る
次々届くお祝いの花、祝電、花、祝電、ケーキ、赤飯、シャンパン、ベーコンetc
立錐の余地もないほどのお祝いの品々に埋もれそうな二人
冷凍ブリを解体しながらD子さんが口にした驚愕の事実


「イービーのかなわぬ望み」
中華料理店のエレベータの中で産まれたイービー
9つになった時エレベータの中から出られなくなってしまったイービーはその後、身体の成長を止め完全なエレベーターボーイとして生きている
月日は流れ、老朽化のため取り壊されることになった中華料理店
イービーは新しい店舗ビルのエレベーターボーイとして迎えられる
はずだったのだが


「お探しの物件」
人が家を探すのではなく
家が住人を選ぶ
瓢箪屋敷
チェス館
丸い家
リリアン邸
マトリョーシカハウス


「涙売り」
自分の涙が楽器の音色をよくすることに気づいてから涙を売って暮らしを立てている女性
道具を使わず自らの身体のみを使い音を奏でる人々、人体楽団で身体中の関節を使って音を奏でる男性に恋をした彼女は、最も質の良い涙を彼の為だけに流す


「パラソルチョコレート」
小学生の姉弟
両親が仕事で忙しいため学校が終ってからはシッターさんの家に預けられている
姉が偶然出会ったパラソルチョコレートを美味しそうに食べるおじいちゃん
おじいちゃんは姉の裏側にいる人、らしい
シッターさんの裏側にいる人はどんな人なのだろうか


「ラ・ヴェール嬢」
ラ・ヴェール嬢と勝手に名付けた老女のアパートへ定期的に通っていた指圧師が老女から聞いた思い出話


「銀山の狩猟小屋」
別荘を買わないか、と持ちかけられた作家
秘書を連れて別荘を訪ねるのだが、迎えてくれたのは自称管理人の怪しげな老人
「サンバカツギ」をご馳走しようと言われ、早く帰る予定が別荘に留まることになる


「再試合」
野球部が夏の甲子園に出場することになる
レフトを守る「彼」を見守る17歳の少女
決勝まで進んだ野球部
決勝戦は引分再試合
翌日も、そのまた翌日も翌日も引分再試合
何日が過ぎたのか
何年が過ぎたのか



恐怖、美しさ、エロティシズム
「縁」をさ迷う人々が、どちら側に落ちるのか
磯良一さんの洒落た挿画が想像を掻き立てます
ちょっと素敵な絵を鑑賞したような気持ちになります

特に
「イービーのかなわぬ望み」
「涙売り」
の2編が印象に残りました


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