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佐伯一麦「鉄塔家族」

2008年10月11日 | さ行の作家
朝日文庫
上下巻で691頁


東北のある都市で、小さな山の頂上に立つ鉄塔
その近くに立つマンションに住む小説家斎木と草木染作家の奈穂
彼らと、鉄塔の周辺に暮らすちょっと辛い過去を持ち、静かに生きている人々の穏やかな日常が静かに描かれている
斎木と奈穂の二人だけでなく、鉄塔の近くに住んでいたり、毎日鉄塔を眺めている登場人物全員をひっくるめて「家族」なんだろうと思った

四季折々の草花や野鳥など自然に関しての佐伯さんの描写はいつも素晴しいと思う                                           

 
自然描写以外で印象に残ったのは

奈穂に自宅を染工房に使って欲しい、と提案した老女と奈穂の会話

「東北は梅雨が明けないと炬燵が仕舞えないものね、おたくもそうでしょ」
「ええ、でも、うちは仕舞っちゃいました」
菜穂が答えると、それはお若いから、と浅野さんはぴしゃりと言った
菜穂は跳ね付けられたようで、少し寂しく思った
草木染教室のときも、年輩者の中には、よくそういう物言いをする人がいた
「東京で生まれ育った方だから」
「お子さんがいらっしゃらないから」…
すると、本人に悪気はないのはわかるが、菜穂は、その話題についてそれ以上話を続けることができなくなってしまう

いらっしゃいますねぇ
うっと言葉が続かなくなってしまい、心の隅に言えないことが溜まってしまう相手
年を重ねて、経験が増えるのは良いことでしょうが、決め付けたような物言いはいけませんね


後半は斎木の別れた前妻との間の息子の家出騒動で少しばたばたする
前妻と斎木がうまくいかなかったのは、仕方ない、前妻には前妻の主義主張があって、斎木側だけが正しいとは言えないんだろう、と思ったけれど、これを読む限り、前妻のことを悪妻・鬼嫁・別れて正解!と思う人が多いかもしれない
息子や前妻も、斎木や菜穂のように、ふと自然に目を留めて心が癒される日が来るといいのにな、と思った

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