講談社文芸文庫
2012年1月 第1刷発行
解説・清水良典
245頁
1967年7月~1968年12月まで「解説」に連載
単行本は1972年6月、あすなろ社より刊行
本書は2004年7月刊行、未知谷『小沼丹全集』第二巻を底本とする
敗戦後まもなく
学園を再建しようと努力する義父のもとで、中学主事を引き受けた青年教師・吉野君
進駐軍と旧軍需工場との交渉役を押し付けられ、出来の悪い生徒のいたずらや教師同士のもめごと、喰い詰めた友人の泣きごとにも向き合いながら、吉野君は淡々として身を処していく
時代の混乱と復興の日々を独特なユーモア漂うほのぼのとした温かい筆致で描いた青春学園ドラマ
作者の中学教師時代を描いた自伝的作品のようです
『吉野君は~』と著されているからか、楽しいこと、嬉しいこと、悲しいこと、失敗など、客観的に読めて、人によっては退屈と感じられるような物語ですが、楽しく読むことができました
ユーモアの中のほんの少しの哀しみがまた良いスパイスとなっています
さらに、武蔵野の「大きな飛行機工場」の跡地にまつわる敗戦後の生々しい変化が描かれており、その地域に関係のある方には興味深い部分も多いかと思います
地域の歴史のお勉強にもなるかもしれませんね