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吉村昭「秋の街」

2014年03月01日 | や・ら・わ行の作家

 

中公文庫
2004年8月 初版発行
解説・池上冬樹
254頁

 

 

1975年から84年にかけて文芸誌に発表された短編が7編収録されています

 

「秋の街」
刑務官が無期刑の囚人とともに仮釈放の準備のために半日社会見学をする
出所にそなえるための教育の一環で、その一部始終を刑務官の視点で描いています
刑務官にとってはごく当たり前でも、囚人にとっては16年も触れることのなかった娑婆の風景
戸惑いや驚きを隠せない囚人の細かい表情の動きをしかと捉えています

 

「帰郷」
寝台自動車で重病人を故郷へと運んでいく運転手たち
集団自殺をする若者たちを描いた「星への旅」と比較できると思います

 

他に

「雲母の柵」
変死体の解剖にあけくれる検査技師たち

 

「赤い眼」
実験用マウスを飼育する研究所員の不安と恐れ

 

「さそり座」
母を亡くした父と子の旅

 

「花曇り」
母の哀しみを見据える

 

「船長泣く」
漂流船で生き残った船長と船員の葛藤を描く

 

 

この頃は「羆嵐」「高熱隧道」「ふぉん・しいほるとの娘」「破船」「破獄」などなど傑作長編を数多く発表していますが、短編も見逃せません

 

 


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