新潮文庫
2013年7月 発行
解説・東えりか
322頁
幼馴染の恋人・ミサキが打ち明けた秘密
それは現代の医学では不治とされる病・ハンチントン病に冒されている可能性があるということ
発症率は…
難病の恐怖に震えるミサキ
彼女への恋に揺れる僕・ケン
デビュー作です
恋愛の大きな障害となるもののひとつである病気を取り上げた究極の恋愛小説
以前読んだ著者の第二作「もう、さようならは言わない」は涙無しでは読めませんでした
「もう、さようなら~」では主人公の妻は既に亡くなっておりマイナスからのスタートなのですが、本作の主人公の恋人は生きており、病気を発症しているのでもない、まだ未来に希望が持てる設定になっていますので、救いがあります
幼稚園、小学校時代、憧れの女の子だったミサキ
大学で再会した二人は瞬く間に恋に落ちる
就職が決まったらプロポーズするつもりだったが、その前にミサキから聞かされた事実
彼女の父がハンチントン病であり母の介護を受けてなんとか日々を過ごしていること
この病気は発病したら不治であり、遺伝するものであること
現在は遺伝子検査により発病遺伝子の有無を特定できるが、自分はしていないこと
今後、ケンと結婚したとして
いつかは発病するかもしれない
そうなると自分は人格が変わるし、介護が必要になる
さらに、自分たちの子供にその遺伝子が受け継がれる可能性も否定できない
知ることは怖い
知らないことはもっと怖い
しかし、希望の持てる方を選びたい
大きく揺れるミサキの心
ケンに「私のどこが好き?」と尋ねます
ケンは「ミサキの笑顔、優しいところが好き」と答えるのですが
ハンチントン病患者は手足が勝手に動いたり、表情が固くなり、怒りっぽくなったり大声を出したりすることを説明し
そうなった自分をケンが愛し続けることが出来るのか
問いかけます
重い問いかけですね~
ケンは、悩みに悩みます
悩みや不安や怒りが複雑に入り組んで、いつまでも堂々巡り
やっと、ひとつの結論を出します
それは
ミサキの存在を愛していること
これから一緒に二人の時間を積み上げていきたいと思っていること
読み終わって
愛し合うべくして出会った二人の未来が穏やかであることを祈りたい気持ちでいっぱいになりました
期待したのですが全く泣けなかったのは少し残念
二作目のほうが読ませるものに仕上がっていました
本業の国語教師のお仕事が忙しいのか、「もう、さようなら~」と二冊のみで小説の執筆活動は中断状態のようです
次作が待ち遠しいですね
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