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三浦しをん「天国旅行」

2010年08月31日 | ま行の作家

「心中」を共通のテーマにした短編集

「森の奥」
自殺目的で富士の樹海に来た中年の男
首吊り自殺に失敗した自分を助けてくれた若者と樹海でキャンプを続ける


「遺言」
大恋愛の末、親の反対を乗り越え結婚
雨の日も晴れの日もあった長年連れ添った妻に遺す遺言


「初盆の客」
祖母の初盆に遠く宮崎から訪れた客人
知らなかった祖母の過去、祖母の心


「君は夜」
子供の頃から見る不思議な夢
断片的ではっきりはしないのだけれど、自分の前世の「生」らしい
前世で心から愛した男こそ現世で自分が出会うべき相手であるはず
しかし、やっと出会えた、と思った男は既婚者だった


「炎」
学校のグラウンドで焼身自殺した憧れの先輩
先輩の自殺の真相を探る私と先輩の彼女だったクラスメート
やがて自殺の真相が明らかになるのだが、時間が過ぎるにつれ、あれはクラスメートの仕組んだ贋の真相だったのではないか、と思い始める私


「星くずドライブ」
部屋にやってきた彼女の様子がどこかおかしい
轢き逃げに遭って死んだらしいのだ
昔から霊が見える体質だった自分
自分にだけ見える彼女と暮らす部屋
いつか、自分の彼女に対する気持ちは薄らいでいくのだろうか、そして、気持ちが消えたとき、彼女は完全にこの世から消えるのだろうか


「SINK」
経済的に追い詰められ車で海に飛び込んだ一家心中の生き残りの若者
祖父に育てられ、今は独りで金属加工の仕事をしている
恋愛は勿論、他者との繋がりに背を向けてしか生きられない若者
海へ飛び込んだ車から逃げ出したときの記憶が彼の心に重く深くのしかかる



「森の奥」「SINK」は自殺、心中そのものを取り上げたもの
「遺言」「初盆の客」「星くずドライブ」は死を通してみた家族愛、恋人への愛
「君は夜」「炎」はオカルト、ホラー

自殺や心中は思い止まりましょう、という内容のものではありません
テーマがテーマだけに読後は気持ちが沈みます


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