新潮文庫
1980年11月 発行
2008年12月 45刷改版
2011年6月 50刷
解説・高井有一
509頁
江戸・天明年間
シケに遭い黒潮に流された土佐の男たちは絶海の火山島に漂着した
無人の島で次々と倒れていく仲間たち
ただひとり生き残った長平は苦難の末12年ぶりに故郷の土を踏む
高知県にお墓も残っている実在した人物を主人公に描いたドキュメンタリー小説です
三浦綾子さんの「海嶺」とはまた一味違う、読み応えのある長編でした
「序」に、著者が江戸時代の漂流者の記録にどうして興味を持つのか、について書かれています
そこには第二次大戦後、何年も経ってから帰国する元日本兵についての記述もあります
自分はグアム島の横井庄一さんとルバング島の小野田さんしか知りませんでしたが、かなり多くの日本兵が戦争が終わったことを知らずに長い時間帰国しなかったということです
昨年の大震災以来、横井庄一さんが書き著したサバイバル術の本が売れているらしいです
本書「漂流」に描かれる長平のサバイバル術は時代の違いもあり、横井さんとは比較にならないほど凄まじいものですが、『絶対生き残る』という強い意志は共通しています
今の自分に同じことが出来るとは到底考えられませんが、突然極限状態に放り込まれたとしても『あきらめない、生きる』
そういう思いは持ち続けなければ、と思いました
故郷に戻った長平を待っていたのは決して平穏な暮らしではなかったようです
江戸期に残された漂流者の記録だけを元に、ここまでの物語を紡ぎあげた著者の力量に感服します
ヘビーだけれど読んで良かった、と思える作品ばかりですね!