ハヤカワ文庫
2012年4月 発行
解説・千街晶之
630頁
物語は、第一次大戦中、パン職人としてドイツ軍に従軍していたコンラートという青年の手記から始まります
ロシア軍の猛攻撃の中、ひとりのプロセイン騎馬士官に惹きつけられたコンラートは銃撃により傷を負った彼を馬に乗せ部隊から逃走
馬の進むに任せて辿り着いたのは、とある『薔薇の僧院』
そこで独り暮らすホフマン博士により士官は美しい薔薇と共生する生命体となって生きながらえることになる
脱走兵でもあるコンラートは人目を避けるため僧院で暮らすことにする
毎日の仕事は荒れ果てた庭園の整備と薔薇の世話
続いて、第二次大戦中、ポーランド・ワルシャワに暮らすミルカの物語
憧れの人はキュリー夫人で、上流社会の女性として生きるより学問を志しているが、母とは価値観が合わず息苦しい思いで毎日を過ごしている
古本屋で働いている少年、ユーリクと出会ったのもこの頃だった
やがてドイツ軍が侵攻、接収された屋敷の地下室で暮らすことになるのだが、姉はドイツ兵の子供を身籠り自殺、両親はテロ組織の中枢にいた、ということで逮捕される
屋敷の一室で暮らしていたナチ党員の映像技師の計らいで、ドイツの彼の実家に住まわせてもらえることになったミルカだが、その家では不思議なことばかりが起きる
その後、再び薔薇の僧院に話は戻り、最後にはミルカも僧院に辿り着き、全ての物語が繋がり謎が解き明かされます
小序に登場するポーランド人女性が誰なのか
読み進めば大方の想像はつくのですが、皆川さんの凝った手法にいつも肩透かしを喰っていますので、確信が持てた時はとても嬉しかったです
他のドイツ物「死の泉」「伯林蝋人形館」と比べると随分読みやすく皆川さんの華麗な文学世界を堪能させて頂きました
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