朝日文庫
2005年12月 第1刷発行
解説・藤森照信
236頁
母の年の離れた兄
若いころは自由気儘に暮らしていた伯父が50歳を過ぎて結婚した相手は伯父より年上のロシア人女性
伯父が事故で亡くなり独りぼっちになった伯母と湖の近くの洋館で、伯父の残した多数の剥製に囲まれて暮らすことになった「私」
そこいらじゅうに『A』を象った刺繍を刺す伯母
「私」が『A』の意味を尋ねると、それは名前の頭文字で、ユリアだとばかり思っていた伯母の名前は本当はアナスタシアなのだと言う
本人は自分のことをロマノフ王朝の最後の生き残り、アナスタシア皇女だと思っているらしい
小川さんの老婆の描写には容赦がありません
髪、顔や手の甲のシミ、シワ、入れ歯、曲がった背中
人間誰しも年を取ればそれなりの外見になってしまうのは仕方ありませんね
それを文字で繰り返し表現されても不愉快な思いにならないのは小川さんの透明感のある文体のおかげでしょう
実家の近くにも洋館があり、小学生の頃、皆は「幽霊屋敷」と呼んでいました
洋館って独特の雰囲気がありますよね
そんな不思議な場所で物語は進みます
『私』の恋人で重度の強迫神経症のニコは伯母の妄想も全て受け容れます
伯母もニコの苦しみをありのままに受け止めます
他に重要な役回りなのが、剥製商人のオハラ
洋館でひっそりと余生を送るはずだった伯母を表舞台に引きずり出そうと画策します
伯母は本当にアナスタシア皇女だったのだろうか
ニコの強迫神経症は治るのだろうか
そういうことはどうでもよく、小川さんの世界に浸れた一冊でした
TB飛ばなかったみたいで・・すいません。
>実家の近くにも洋館があり、小学生の頃、皆は「幽霊屋敷」と呼んでいました
おお~~。そういうお屋敷があったんですね・・・。子供の頃って、(今もだけど)、そういう怖い様な、何か怪しいお屋敷って、ソソられるものがありますよねー。
「アルゼンチン ババア」だったかな・・・
以前、よしもとばななさんの本を読んだのですが、やっぱりそういうお屋敷に住む謎のおばさんの話で・・。
でも、個人的に小川さんの世界の方が私は好みかな^^
質問を送ったら、こちらの操作ミスみたいな返答が来て、何だかなぁ~、でした
(;_;
実家近くにあった洋館
門から玄関までが遠くて、屋根が高くて、子供の頃は本当に怖くて近寄れませんでした
そこから人が出て来るのを見た事がありませんでしたし
その洋館は今でもあります
でも改装されて『明るい』洋館になっています
あそこに誰が住んでいるのか、今でもわからないのが少々不思議ですけどね
よしもとばななさんは読んだことが無いのです
今度、探してみますね