イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「人類滅亡2つのシナリオ AIと遺伝子操作が悪用された未」読了

2024年05月16日 | 2024読書
小川和也 「人類滅亡2つのシナリオ AIと遺伝子操作が悪用された未」読了

僕の感想から書くと、まあ、たいしたことのない本であった。
AIの暴走と遺伝子操作をされた人類が増加することによって本来の人類が絶滅する恐れがあるというのである。パンデミックでも核戦争でもないというのは著者の職業からくるのであろう。

この本では「人類滅亡」をこう定義している。
・人間社会が機能しなくなり、人間による文明や技術が崩壊し、人間の生活が維持できなくなる状況。そこには、人間による主体的な統治の終了を含む。
・現生人類の個体数が大幅に減少し、種としての生存が不可能になる状況。
・遺伝子の変化は種の絶滅に該当しないと考えられることが多いが、一般的なホモ・サピエンスとは異なる人間、例えば数世代に及ぶ遺伝子改変の結果、現生人類とはかけ離れた性質を持つ「ポスト・ヒューマン」が誕生し、種の進化とは見なせない人間にホモ・サピエンスが置き換えられてしまう状態。

著者が考える、AIが引き起こす人類滅亡のシナリオは、二つある。ひとつは、機械学習やディープラーニングでAIが進化してゆく段階で、悪意をもった人物が偏った情報を提供することで人間に不利な回答を出させることである。
法律、規制、経済、社会インフラ、教育、医療など人間生活に欠くことのできない部分でAIの提言が大きなウエイトを占めるようになったとき、その歪んだ情報は人間を不要なものだと判断するかもしれない。まあ、地球を汚染したり無駄に資源の浪費をしているのは間違いなく人間なのだから不要な炭素体ユニットだと判断されるのは実は正しい判断だったりするのかもしれないが・・。
もうひとつはすべての判断をAIに頼ることで、またAIには追い付けないということで人間としての本質である努力や向上心といったものを失くしてしまい進歩の主役をAIに引き渡してしまうという事態である。まあ、これも、僕みたいな人間はすでにAIでなくても誰かに人生の主役の座を譲り渡してしまっているのだから個人的には滅亡してしまっている・・。

遺伝子操作が引き起こす人類滅亡のシナリオはゲノム編集を受けたデザイナーベイビーが生まれ、子孫にその遺伝子が受け継がれその遺伝子の改変部分が数世代にわたって受け継がれてゆくとまったく新しい種「ポスト・ヒューマン」が生まれ、その時点で現生人類は新たな種にその立場を譲り渡して滅亡したと判断されるというのである。

その防止策として、個人個人の倫理観を高めることと世界規模での共通の価値観を持った規制が必要であるというのが著者の主張である。なるほどもっともだと思うのであるがそれ以上でもそれ以下でもない・・。

しかし、人類はいまや80億人もいる。AIというのは、これは現在の状況に過ぎないかもしれないが膨大な電気を消費するそうだ。巨大な電源がないとAIは働けない。握り飯1個と水があれば数日生きることができる人間とはそこが違う。80億人もいれば誰かが悪意を持ったAIの教育係に反旗を翻し、人間に不利な判断をしているAIの電源を破壊してくれるだろう。また、これだけの人口がいれば遺伝子操作された異性をどうしても好きになれない人たちがいて、ホモ・サピエンスの血統を守ってくれるはずだ。

そう考えると、著者がいう、統一された価値観のようなものがかえって人類滅亡を招く結果になってはしないだろうか。どのイデオロギーが正しいかは別にして、対立したものがあったとしてもそのどれかが生き残れば人類としては生き残ったということになるのではないだろうか。多様性が人類を守ってゆくということだろう。
局所的な部分で見ると戦争は命を消費しているが、マクロな見方をすると多様な考え方を維持し付けるための必要悪なのかもしれない。本当なら、対立しながら別の面では均衡を保ちながら数年か数十年の平和を次の世代に引き継いでゆくしか最善の策がないのかもしれない。
その面で見ると、ウクライナやガザの紛争は人類の失敗ということだろうが、そこさえ乗り越えることができればギスギスしながらも人類は滅亡していないということになり、これこそがAIにも遺伝子操作をされたポスト・ヒューマンにもできない技なのかもしれない。
なんといってもこれはまったく合理的ではない方法なのだから・・。

コメント
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