救急一直線 特別ブログ Happy保存の法則 ーUnitedー for the Patient ー

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手技 閉鎖式A-lineからの採血と動脈血ガス分析

2016年09月04日 00時13分46秒 | 急性期管理技術

手技解説 

適切なA-line採血 PART2 閉鎖式A−lineからの動脈血採血


名古屋大学大学院医学系研究科 
救急・集中治療医学分野

日本救急医学会 救急科指導医・専門医

日本集中治療医学会 集中治療専門医


松田直之

 

 はじめに 


 動脈圧ライン(arterial line: A-line,A line,Aライン)が確保されている状況では,医師に限らず,適時,看護師さんが動脈ガス分析を行い,さらに圧ラインを清潔に管理できるとよいです。また,A-lineが入っているのに適切に圧波形が出ていない状況は,カテーテル内での血栓形成の可能性も出てきます。A-lineは,時間あたり1.8-2 mL/時で生理的食塩水(ヘパリン添加を含む)が流れるものとして管理しています。ヘパリンを生理的食塩水に含めるかどうかは,施設基準によりますが,大切な管理は動脈圧波形がしっかりと出るように管理することです。多くの前向き臨床研究では,ヘパリン1単位/mLを含む生理的食塩水と生理的食塩水のみで還流させた場合に統計学的有意差はついていませんが,ヘパリンを含まない場合にはカテーテルの血栓性閉塞は約18%に高まる可能性があります(Del Cotillo M,et al. Intensive Care Med. 2008;34:339-43)。一方で,ヘパリンをルーティンに併用する危険性は,ヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia:HIT)です。A-lineの管理では,A-lineを定期的にフラッシュをする必要はありませんが,しっかりとA-lineの圧波形が出るように管理しましょう。

姉妹編(開放式・髭つき回路からの採血) 手技 適切なA-line採血と動脈血ガス分析の実際 クリック

※ 看護師さんへのお願い:すべての手技は,親指を曲げないことから始まります。親指が立つと,指全体が曲がりやすいのです。これは,料理の手技でもそうです。指が曲がらない手技は,等速直線運動を作りやすいにです。慌ててはいけません。慌てることが災害です。親指を曲げない手技を体得されてください。

  コツとポイント 

1.サンプリングサイト(血液を採取する場所;採血ポート;ゴム式プラグやプラネクタなど)の清潔化:アルコール綿で消毒してから1分置くようにします。これは,仮に菌が付着していても減菌できるからです。静脈路確保の際と同様に,A−line確保やA-line採血においても1分間待ちます。これは,サンプリングサイトに付いている菌を減量させるためです。僕自身は,アルコール綿で拭いた後にそのアルコール綿の裏面で積み込みさらにアルコール綿が入っている袋で包み込む方法(松田考案:アル綿包み込み法/1分間法)などで,1分間以上アルコール綿で消毒する方法(ステップ2/3参照)とします。

2.アルコール綿:アルコール綿は,1袋に2枚付いています。1枚は使用前,1枚は使用後として,意識してアルコール綿を使用します(ステップ2参照)。

3.シリンジの挿入方法:垂直穿刺を原則(ステップ8参照)とします。斜めに挿入することで,血液をベッドサイドなどにこぼす可能性が高まります。写真では,サンプリングサイトに25G針で穿刺していますが,プラネクタであれば針を用いずに直接にシリンジを挿入しますので,この際は絶対に寝かせてはいけないと強調して指導しています。シリンジは,寝かせて挿入するのではなく,立てて挿入することが原則です。BD A-line採血キットなどというのもあります。この1 mLシリンジはすぐれものです。

4.空気を回路に内に入れないこと:サンプリングサイトがプラネクタ(ステップ2参照)であるときなどは,特に雑に挿入すると回路に空気が入りやすいです。

5.動脈血採取後の対応:サンプリングサイトを残る1枚のアルコール綿で拭き,サンプリングサイトから血液を拭き取り,残さないようにします。

 

 写真で見る手技ステップ 

※ アルコール耐性のセラチアや表皮ブドウ球菌,またアシネトバクターもいます。しっかりと拭いて下さい。

※ ご自由に印刷されてご使用下さい。


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