救急一直線 特別ブログ Happy保存の法則 ーUnitedー for the Patient ー

HP「救急一直線〜Happy保存の法則〜」は,2002年に開始され,現在はブログとして継続されています。

お知らせ 2018 東海ショックフォーラム

2018年05月06日 01時28分28秒 | お知らせ 講演会・セミナー

東海ショックフォーラムのお知らせ

日時:2018年5月26日(土)16:00-18:00
場所:名古屋マリオットアソシアホテル16階 アイリス
対象:医師・看護師・臨床工学技師・薬剤師・理学療法士・コメディカル全般・医学生
主催:日本製薬株式会社

※ さまざまな専門診療領域の皆さま,研修医の先生,医学生の皆様の参加も制限はありません。
※ 広く皆さんと共に,「ショック」についての理解を深める討議の場とします。

 ショックを東海エリアで討議する場として,2015年5月23日に東海ショックフォーラムが立ち上がりました。「ショック」は,循環を原因とする組織酸素代謝失調の病態です。私の研究と診療の学術の初期のテーマは,この「ショック」と「呼吸」でした。そこから,栄養学や感染症学を含めた「全身管理学」への進展がありました。

 このフォーラムでは,ショックの診断と治療を振り返りながら,皆でショック管理を討議できる場とさせて頂きます。私も2018年におけるショック管理の展望について,以下の5つの内容を基盤として,2017年度の文献を紹介しながら,お話をします。内容:①適切なショックの管理について,②カテコラミン使用についての概念:Cochrane Databaseなどの結果を踏まえた使用法の考察,③ショックにおける輸血について:血流分布異常性ショックにおける輸血の適応,④基礎知識:心不全におけるマトリックス・メタロプロテイナーゼの知識拡充,⑤血小板:ショックにおける血小板の量と機能変化について。どうぞ,予定を立てて,お越しください。


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講座 WHO 敗血症管理 世界におけるクリーン・ハンド・キャンペーンの開催:毎年5月5日

2018年05月05日 23時18分00秒 | 講義録・講演記録4

名古屋におけるクリーンハンドキャンペーンの背景

WHO Clean Hands Challenge in NAGOYA, JAPAN

Nagoya holding a clean hands campaign from 2012 in Japan:Essential event in order to prevent sepsis

名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野
松田直之 Naoyuki Matsuda MD, PhD

はじめに

  敗血症は,感染症により進展する全身性炎症と随伴する多臓器不全です。2016年に敗血症の定義がSEPSIS-31)として変更され,感染症による臓器不全の進行を阻止する必要性が強調されました。この敗血症は,感染症により臓器不全が進行する病態であり,多発外傷,重症熱傷,急性膵炎と並んで,炎症性サイトカインと増殖性サイトカインが上昇する代表的病態です。敗血症の管理は,多発外傷などと同様に,急性炎症学として極めて重要な学術領域であるとともに,その診療においては当然のこととして「早期発見」と「早期治療」が重要です。このような敗血症に関する広報活動は大切であり,私も京都大学時代より,そして日本集中治療医学会理事としても,敗血症や外傷などの全身管理の重要性を学術の一環として広報して参りました。

 この敗血症においては,既に皆さんがご存じのように,2017年5月26日の世界保健機構(WHO:World Health Organization)の年1回の会議であるworld health assemblyの議決は重要です。敗血症は,2017年5月26日に,世界保健機構により,「世界で解決されるべき優先課題」として議決されました。このような議決は,一夜にして決定されるものではなく,日本集中治療医学会を含む多くの国際的尽力で達成されたものと考えます。そして,2018年,クリーンハンドキャンペーンを世界保健機構が推奨し,2018年5月5日に実施されます。世界保健機構は,毎年,5月5日をクリーンハンドキャンペーンの日程と定めました(図1,図2)。名古屋大学では2012年より,日本集中治療医学会では2014年より,クリーンハンドキャンペーンを開催してきました(図3-図5)。

 
World Sepsis Day

   2012年5月,2010年にニューヨークで開催されたMerinoff Symposiumで結成されたGlobal Sepsis Alliance(GSA:世界敗血症連盟)2)の代表者であるドイツのKonrad Reinhart先生より,日本集中治療医学会にメールが届きました。2012年より2020年までを目標として,毎年9月13日をWorld Sepsis Dayとして定め,世界規模で敗血症キャンペーンを行うという企画であり,日本集中治療医学会にも連動してもらいたいという依頼でした。本活動については,私は2011年4月の段階でメールや国際学会などで知っていました。この提案に対して日本集中治療医学会は,私を含む国際交流委員会で話し合いを持ち,2012年に日本集中治療医学会が世界敗血症デーを行うことは難しいと結論し,国際交流委員会よりWorld Sepsis Dayについての情報のみを日本集中治療医学会ホームページに掲載させて頂きました。この時期に名古屋大学では,「全身性炎症管理」の病態生理学的理解を深める教育バンドルとして「敗血症管理バンドル」を提案させて頂き,この第1ブランチは「接触感染予防策の徹底」であり,2012年度よりクリーンハンドキャンペーンを開始した背景となりました。クリーンハンドキャンペーンの手法は,「open mind,成長と発展」をモチーフとしました。これは,ちょうど2011年9月に,疲れて眠っている時に私が夢で見た「クリーンハンドキャンペーン」を実現としたものでした。

 一方,毎年9月9日とGSAが定めた「World Sepsis Day」の日本における運用については,日本集中治療医学会国際交流委員会が扱うにしては細かすぎる内容であるとして,日本集中治療医学会内にGlobal Sepsis Alliance委員会(GSA委員会)をad hoc委員会として作成することが国際交流委員会委員会で提案され,理事会の議,および2013年2月の日本集中治療医学会総会の終了後にGSA委員会が発足され,私も国際交流医委員会と併任してGSA委員会に所属しました。これにより,2013年度にGSA2)と連携する体制が日本集中治療医学会に整えられ,2014年2月には京都で開催された日本集中治療医学会で,クリーン・ハンド・キャンペーンの実施の提案につながりました。

Global Sepsis Alliance委員会の活動

 敗血症は,世界全体では年間2000~3000万人が罹患し,年間で約1,000万人以上の成人,約600万人の小児が診療されています。GSAポスターの中心的告知のキャッチコピーは,ここに照準を絞り,「世界では数秒に一人の割合で,敗血症で亡くなる人がいます」でした。先進国では高齢化,高度先端医療後の免疫機能低下,多剤耐性菌の出現など,一方,発展途上国では貧困,ワクチン不足,栄養失調,治療タイミングの遅延などの問題が取り上げられ,敗血症による死亡率を削減できるためのキャンペーンを展開することになりました。しかし,このような敗血症は,日本を含めて広く一般には深く捉えられておらず,御家族や親戚が敗血症により死亡したとしても,がんなどの原疾患がある場合には,その原疾患が直接死因とされるのが一般的でした。医療従事者においても,敗血症に関する知識や概念に強い差があり,必ずしも均質な治療が行われていない状況があり,「日本版敗血症診療ガイドラインの作成」は必然でした3)

 一方で,日本集中治療医学会GSA委員会が連動しているGSA4)は,2012年9月13日より毎年,世界敗血症デーを9月13日に設定し,敗血症に関する5つの世界的到達点(Global Goals)を設定し,これらを2020年までに達成させることを目標としました。2020年までの到達目標は,①効率的な予防策により敗血症発症率を低化させる,②成人,小児,新生児での敗血症の救命率を上昇させる,③世界中のどこにおいても適切なリハビリテーションを受けられるようにする,④一般市民と医療従事者の敗血症に対する理解と認知度を高める,⑤敗血症がもたらす負の効果と敗血症予防と治療の正の効果が正しく評価される,これらの5つでした。2017年度のGSA会議では,新しい達成目標を明確に立てることが世界各国に呼びかけられました。

 以上のキャンペーンを目的とした「世界敗血症デー」では,4時間以内に治療を開始することの重要性として4時間キャンドルを公共の場で点火し,敗血症についての疫学,診療知識を公開し,また広くマスコミと行政に公開し,連動し,これらの記録を一般に公開し,敗血症に対する理解を世界に広めるという具体策が提案されています。

 日本集中治療医学会GSA委員会は,毎年,9月13日の世界敗血症デーに合わせて敗血症キャンペーンを展開し,さらに定期的に敗血症セミナー5)を開催しています。日本集中治療医学会学術集会においても,セミナーやクリーンハンドキャンペーン(図6,図7)を展開しています。このような活動は, GSA本部との定期的に行われる会議,またメール連絡などで共有されています。

 2019年3月30日(土)〜4月7日(日)までの9日間,ポートメッセなごや(http://portmesse.com)において,名古屋大学は第30回日本医学会総会2019中部「健康未来EXPO2019」のテーマ展示の1つとして,50m2の広さを用いた「展示」と「プレゼンテーション用特設ステージ」を用いて,医療従事者と一般の皆様へ「敗血症啓発ブース」を展開します。日本集中治療医学会そして日本救急医学会とも連動させて頂きます。この内容は,適時,本稿に追記とさせて頂きます。多くの皆さんのプレゼンテーションの機会とさせて頂き,Youtube等にアップさせて頂く「Sepsis Hiro Presentation Campaign」とともに,新しいクリーンハンドキャンペーン「New Generation Clean Hans」を企画しています。世界との急性期学術連携として,大きな学術的イベントとできますように,多くの皆さまと相談しながら企画の過程にあります。

おわりに

 2011年から7年間ほどの短期間において,敗血症および集中治療のレベルが国内外で高まりました。世界保健機構も,敗血症を当面の解決すべき診療課題として決定しました。感染管理と感染予防において,敗血症への進展を念頭に置き,感染症の早期発見,早期治療,全身管理などの敗血症診療に対する世界的必要性と急性期医療活動に,日本は強く尽力しています。私たちは,GSAと連携する一方で,多くの医学会,また医療従事者,医療関係者と連携し,より一層に敗血症診療を適正化することに尽力する必要があると考えています。

 

参考文献

1.Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA 2016;315:801-10. 
2.Czura CJ. "Merinoff symposium 2010: sepsis"-speaking with one voice. Mol Med. 2011;17:2-3.
3.日本集中治療医学会 Sepsis Registry 委員会. 日本版敗血症 診療ガイドライン,The Japanese Guidelines for the Management of Sepsis. 日集中医誌 2013;20:124-73. 
4.  http://www.globalsepsisalliance.org/world/
5.http://www.jsicm.org/seminar/


図・写真


図1 世界保健機構によるクリーンハンドキャンペーンのHP掲示 毎年5月5日

図2 文献 2018年5月5日 世界保健機構によるクリーンハンドキャンペーン

図3 名古屋におけるWorld Sepsis Day 2013の掲載

図4 名古屋におけるWorld Sepsis Day 2014の掲載

図5 名古屋におけるWorld Sepsis Day 2017の掲載

図6 日本集中治療治療医学会学術集会におけるクリーンハンドキャンペーンの実施

http://emergency.muse.weblife.me/WSD.html

図7 日本集中治療治療医学会におけるクリーンハンドキャンペーンの実施 2014 in Kyoto

名古屋大学救急・集中治療医学分野では2012年よりクリーンハンドシステムを管理バンドルに含めました。
日本集中治療医学会では,2014年より2017年までの4年間,クリーンハンドキャンペーンを展開しました。
一方,現在は手掌認証の時代であり,個人情報の観点より,2018年に開催された日本集中治療医学会でのクリーンハンドキャンペーンを私は推進しませんでした。
現在は,これまでの企画と変わる「新しいクリーンハンドキャンペーン」を考案しています。
 
※ 告知 東海セプシスフォーラム 2018年9月9日(日)

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