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共有事項 新型コロナウイルス SARS-CoV-2の変異について

2021年03月01日 20時27分41秒 | COVID-19の集中治療

話題 新型コロナウイルス SARS-CoV-2の変異について

 

名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野

教授 松田直之

新型コロナウイルス SARS-CoV-2の変異について,一般の方からも質問を受けることがあります。

 

質問1:日本での新型コロナウイルス変異などを監視する「行政システム」は,どの様になっているのでしょうか?

返答1:内閣総理大臣,内閣官房長官,そして内閣官房副長官の直下に40の事務局や推進室などが設置されています。この中で,新型コロナウイルス感染症に関係する部局として,1)情報通信技術(IT)総合戦略室,2)新型インフルエンザ等対策室,3)国際感染症対策調整室,4)新型コロナウイルス感染症対策推進室,5)新型コロナウイルス感染症対策本部事務局が,内閣官房副長官の直下に置かれています。2021年4月1日の時点で,新型コロナウイルス感染症対策推進室は,1)総務・総括班,2)法令・ガイドライン班,3)企画調整班,4)調査・広報班,5)ICT・国際班の5つの班に分かれ,室員約87名として感染対策推進室を運営し,外部委員などとの小会議などを含めて内閣官房副長官の上申する仕組みとなっています。より明確に,ホームページ(https://www.cao.go.jp/index.html)に仕組み編成の推移を掲載していくことが期待されています。

 一方,内閣官房とは別に,新型コロナウイルス感染症対策推進本部が2020年1月に設置され,厚生労働省にも結核感染症課を母体として2020年7月に技術総括班が戦略班として改編され,新型コロナウイルス感染症対策の技術的課題や感染症法の解釈に対応するだけではなく,アドバイザリーボードなどを交えて,コロナ対策の基本指針が検討されています。2021年4月1日からにおいても,事務局直下として総務班と戦略班の2つが共同して,総括班は,渉外部門(官庁班,広報班,国会議員班,コールセンター班現地リエゾン班),対策部門(技術総括班,サーベーランス班,検疫班,医療体制班,公衆衛生対策班,国際班医薬品物資班,法令班),ロジスティック部門(総務班,庁舎班,会計班,IT班)として,新型コロナウイルス感染症対策をまとめて下さっています。

 2021年4月から5月にかけては,内閣官房と厚生労働省の2つの連携体制として,新型コロナウイルス対策が充実してきています。その中で,10月中旬からの次波に備えて,より一層の向上が8月までに求められています。この透明性と公開性が必要とされています。1)治療結果をまとめるデータベースの作成・解析・運用(データバンク事業),2)変異株に関するon-time解析,3)治療指針提案など,経済活動を正常化させるための前向きな提案として,頭脳の結集可塑性力が必要とされています。データベースにおいては,厚生労働省関連としては,G-MISHER-SYSが運用されるようになりました。質問の変異株の解析については,行政から国立感染症研究所への補助体制が強化され,変異株解析などが適正化されています。

 

質問2:新型コロナウイルス SARS-CoV-2の変異になぜ,注意する必要があるのですか?

返答2:コロナウイルスは1本鎖(プラス鎖)のRNAウイルスであり,直径約80-100 nmとされています。このウイルス表面には,約20 nmの花弁状の長い突起があり,スパイク蛋白(Sタンパク質)と呼ばれ,この部位が私たちの体内のⅠ型膜結合糖蛋白であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE-2)などに接着し,私たちの細胞に寄生します。このスパイク蛋白などによる形状が太陽の光冠(コロナ)のような外観となるので,コロナウイルスと命名されています。このような基礎研究のおかげで,さまざまな情報がつながって参ります。

 新型コロナウイルス SARS-CoV-2の変異については,2020年2月の第1波の際より十分に指摘されていました。従来,コロナウイルスは牛や豚などにワクチンを作りにくいウイルスとして知られていました。豚の血球凝集性脳脊髄炎や流行性下痢などの治療として,コロナウイルスは一つの重要なターゲットです。新型コロナウイルスSARS-CoV-2については,紫外線や環境などにより29,000レベルの塩基で構成されるRNAが違うRNAに変異し,スパイク蛋白だけではなく,RNAポリメラーゼ,RNAプライマーゼ,そしてカプシドなどの表現型が変わることが確認されています。

 既に2020年3月23日の段階で,GISAIDデータベースから新型コロナウイルス感染患者さんの合計558株のSARS-CoV-2のゲノム配列が解析されています。RNAポリメラーゼ(nsp8)とスパイク蛋白の同時に遺伝子変異などが,合計163株で確認されています(PMID: 32353474)。スパイク蛋白についてはRNAレベル(23403A>G)とタンパク発現レベル(D614G:アスパラギン酸→グリシン)の変異が183株(32.8%),RNAポリメラーゼ(nsp12)についてはRNAレベル(14408C>T)とタンパク発現レベル(P323L:プロリン→ロイシン)の変異が182株(32.6%)です。変異株と呼ばれている新型コロナウイルスについては,スパイク蛋白を介した細胞接着性だけではなく,RNAポリメラーゼ活性などの変化にも注意が必要です。ワクチンについては,スパイク蛋白のどこを認識させるかが,ワクチン作成において重要なポイントとなります(文献)。

 さて,以上の新型コロナウイルスの変異について,なぜ日本でも大きく取り上げらるようになったのかについては,もちろん変異株に注意しなければならないのですが,世界保健機関(WHO:World Health Organization)や東京オリンピック開催に向けてなどの国際指針/国際情報としての関連があります。英国では2020年12月からイングランド南東部で発症した新型コロナウイルス感染症COVID-19の多くが,「スパイク蛋白変異」として報告されました。この変異株は,スパイク蛋白などにおけるアミノ酸の欠失や変異(欠失69-70,欠失144,N501Y,A570D,D614G,P681H,T716I,S982A,D1118H)などとして紹介されています(文献)。この英国の報告に対して2020年12月20日にWHOは,新型コロナウイルスの変異株としてホームページに公表しています。こうした変異株については,既に1年前に報告されているように,結合に関与する「スパイク蛋白」だけではなく,「RNAポリメラーゼ」の表現系の変化にも注意が必要であり,RNAポリメラーゼ阻害薬ファビピラビル(アビガン®)やレムデシビルなどの有効性についても評価を継続する必要があります。

 

質問3:新型コロナウイルス変異株の定義と注意する変異株について教えて下さい。

返答3:WHOは2021年2月25日の段階で,注目する変異株(VOI:Variants of Interest)と懸念する変異株(VOC:Variants of Concern)の定義を暫定的内容として報告しています(文献)。このようなVOIとしてWHOは,① 英国VOC-202012/01株,② 南アフリカ株501Y.V2, ③ ブラジル株Nextstrain clade 20J/501Y.V3を挙げています。これらは,ワクチンがターゲットとしている「スパイク蛋白」などのアミノ酸配列が変化しています。一方,日本においても,英国VOC-202012/01株はよく検出されていますし,その他,南アフリカ株501Y.V2やブラジル株501Y.V3に類似して,E484K(グルタミン酸→リジンへの変異),N501Y(アスパラギン→チロシンへの変異),K417T/N(リシン→トレオニンあるいはアスパラギンへの変異)などの「スパイク蛋白」の変異が確認されています。「スパイク蛋白」を標的として作成されたワクチンの効果が低下する可能性に注意が必要となります。現在,WHOは,このように世界各地で新型コロナウイルスの変異株が確認されることから,注目すべき変異株としてVOI,そして懸念される変異株としてVOCという用語を用いて,国際的に変異株への注意を喚起し,新型コロナウイルスの国際的指導としています。政府やマスコミの変異ウイルスに関する報道は,皆さんへの情報共有として,とても大切であると思います。まだまだ,ワクチンや,罹患後の治療薬の開発や承認が必要になる状況にあります。

※ 2021年7月までの段階で,L452RやN501Yは感染力を高めること,E484KはE484Qなどとして現在のワクチンでの免疫が効かなくなる可能性が示唆されました。これは,2019年の当初からわかっていたことですので,初期の重症化しないためのウイルス治療薬(対コロナ治療薬)の承認が緊急時医療体制として必要です。(2021年8月28日追記)

 

質問4.新型コロナウイルスが寄生した細胞はどのようなタンパクを作るのですか?

返答4:さまざまな細胞腫に新型コロナウイルスを反応させ,その細胞がどのようなタンパク質を作るかを調べることは,治療に応用できますのでとても大切です。いわゆる寄生された細胞は,正常時の情報伝達蛋白などの産生が低下する傾向があります。肺胞上皮細胞などでは,SLC1A5,CXADR,CAV2,NUP98,CTBP2,GSN,HSPA1B,STOM,RAB1B,HACD3,ITGB6,IST1,NUCKS1,TRIM27,APOE,SMARCB1,UBP1,CHMP1A,NUP160,HSPA8,DAG1,STAU1,CHMP5,DEK,VPS37B,EGFR,CCNK,PPIA,IFITM3,PPIB,TMPRSS2,UBC,LAMP1,CHMP3などのさまざまなタンパク質を新たに作りはじめるのかもしれません。細胞の機能は,正常時とは異なり,例えるならば災害モードとなります。

 

質問5.新型コロナウイルスのスパイク蛋白のアミノ酸配列を教えて下さい。

返答5.GenBankのQOS45029.1として登録されているスパイク蛋白のアミノ酸配列は,以下となります。新型コロナウイルスのスパイク蛋白は,1,273個のアミノ酸で構成されています。この関連論文として,Chiuppesi先生たちの論文が知られています。世界や日本で問題となっているスパイク蛋白のアミノ酸変異として,E484K(グルタミン酸→リジンへの変異),N501Y(アスパラギン→チロシンへの変異),K417T/N(リシン→トレオニン/アスパラギン)に色をつけていますので,以下のアミノ酸配列の中で確認されてください。その後,2021年4月より注目されたのは,インド型変異(G142D,N440K,L452R,E484Q,D614G,P681Rなど)です。L452R(ロイシン→アルギニンへの変異),E484Q(グルタミン酸→グルタミンへの変異)などに注意しますが,はじめから予測されていた内容ですので,このウイルス感染予防策を改めて国内に徹底し,学術的には繰り返しとして適切に早期対応策を提案していくことになるのだろうと思います。治療パラダイムや治療ストラテジーは,1年の過程で多くの医師に見えてきていると思います。L452R(ロイシン→アルギニンへの変異),そしてE484Q(グルタミン酸→グルタミンへの変異)は,継続して日本でも注目していくべき変異です。

文献:Chiuppesi F, Salazar MD, Contreras H, Nguyen VH, Martinez J, Park Y, Nguyen J, Kha M, Iniguez A, Zhou Q, Kaltcheva T, Levytskyy R, Ebelt ND, Kang TH, Wu X, Rogers TF, Manuel ER, Shostak Y, Diamond DJ, Wussow F. Development of a multi-antigenic SARS-CoV-2 vaccine candidate using a synthetic poxvirus platform. Nat Commun. 2020 Nov 30;11(1):6121.

新型コロナウイルスのオリジナルのスパイク蛋白のアミノ酸配列(GenBank:QOS45029.1)

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     1021 sanlaatkms ecvlgqskrv dfcgkgyhlm sfpqsaphgv vflhvtyvpa qeknfttapa
     1081 ichdgkahfp regvfvsngt hwfvtqrnfy epqiittdnt fvsgncdvvi givnntvydp
     1141 lqpeldsfke eldkyfknht spdvdlgdis ginasvvniq keidrlneva knlneslidl
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質問6.新型コロナウイルスのスパイク蛋白は,変異に関わらず,構造を変化させるそうですが,この構造変化について教えて下さい。

返答6.新型コロナウイルスのスパイク蛋白は3つのポリペプチド鎖(たくさんのペプチド結合)に分けて,構造を説明されています。この3つに分類されるポリペプチド鎖は,1)N末端ドメイン(NTD),2)受容体結合ドメイン(ACE-2と結合する部位:receptor binding domain:RBD,S1ドメイン),3)S2ドメインです。Sはスパイク グライコプロテイン(spike glycoprotein)のSです。このスパイク蛋白は,Glycation(糖化)やGlycosylation(グリコシル化)されることが知られており,スパイク グライカン シールド(spike glycan shield)などという呼称もあります。このため,糖化蛋白の受容体であるRAGEと結合するのかもしれないことや,血管炎症や凝固異常が生じる可能性などは,生体内でSタンパクを作る今回のmRNAワクチンの一つの危険性なのかもしれません。さて,質問4のようなアミノ酸構造の中で,N165,N234,N343などのアスパラギンが糖鎖修飾を受けることで,スパイク蛋白は安定化することが知られています。また,スパイク蛋白は,糖鎖修飾で「アップ型」と「ダウン型」の2つに形を変化させることが,理化学研究所の森先生たちより報告されています。スパイク蛋白の構造変化に関する素晴らしい研究です。ヒトの細胞表面に結合する際は,「アップ型構造」で結合しやすくなることが確認されています。糖尿病患者さんでは,新型コロナウイルスのスパイク蛋白の構造安定として,アスパラギンの糖鎖修飾により強化される可能性などがあるのかもしれません。細胞内でタンパク質が合成された後の翻訳後修飾として,糖鎖修飾は,新型コロナウイルスの接着や繁殖にも関係することとして留意が必要となります。スパイク蛋白の変異では,N501Y(アスパラギン→チロシンへの変異),K417T/N(リシン→トレオニンあるいはアスパラギンへの変異)として,これらのアスパラギンなどの糖鎖修飾がどのようなものなのかについて留意していく必要があります。高血糖の制御されていない状態や糖尿病では,スパイク蛋白の糖鎖修飾とともに,ACE-2のグリコシル化などによる機能変化についても,新型コロナウイルスの感染性に関係することに留意が必要です。

文献1:スパイク グライカン シールド. Ghorbani M, Brooks BR, Klauda JB. Exploring dynamics and network analysis of spike glycoprotein of SARS-COV-2. Biophys J. 2021;S0006-3495(21)00210-1. 

文献2:Mori T, Jung J, Kobayashi C, Dokainish HM, Re S, Sugita Y. Elucidation of interactions regulating conformational stability and dynamics of SARS-CoV-2 S-protein. Biophys J. 2021 Mar 16;120(6):1060-1071.

文献3. 新型コロナウイルスとRAGEの関連:Stilhano RS, Costa AJ, Nishino MS, Shams S, Bartolomeo CS, Breithaupt-Faloppa AC, Silva EA, Ramirez AL, Prado CM, Ureshino RP. SARS-CoV-2 and the possible connection to ERs, ACE2, and RAGE: Focus on susceptibility factors. FASEB J. 2020 Nov;34(11):14103-14119.

 

質問7.変異ウイルスに対して薬の効き方は変わるのでしょうか?

返答7.その可能性があります。薬剤の作用部位に変化がある場合,例えばRNAポリメラーゼに変化がある場合など,薬剤の効果を再評価する必要があります。細かな内容については,調べられている過程ですので,結果に応じて紹介します。臨床研究については,ひとまとめな評価ではなく,効果の多様性についての評価も必要とされています。

 

質問8.デルタ株というのは何でしょうか? いつから,デルタ株はできたのでしょうか?

返答8.世界保健機関WHOは懸念される変異株(Variant of Concern:VOC)と注目すべき変異株(Variant of Interest:VOI)に対して,2021年5月31日にギリシャ文字を用いて,新たな呼称を提唱しました。これが,デルタ株やシータ株などの呼称です。現在,2021年5月31日の時点でWHOは,VOCとしてα,β,γ,δの4つを世界で警戒するように指定しています。学術的には,アルファ株はB.1.1.7系統,ベータ株はB.1.351系統,ガンマ株はP.1系統,そしてデルタ株はB.1.617.2系統と呼ばれています。つまり,デルタ株という株が新しく出現したわけではなく,インドだけの問題ではないインド株などの呼び方を,2021年5月31日から国際的に変更したのです。

 現在の日本では,α,β,γ,δの4つだけ注意するわけではありません。イプシロン(B.1.427系統・B.1.429 系統),(P.2 系統),イータ(B.1.525系統),シータ(P.3系統),イオタ(B.1.526系統),カッパ(B.1.617.1系統)は,VOIとして注意が必要とされています。

 これまでWHOによりVOCとしてパンデミックを懸念されきたB.1.617系統は,2021年6月の段階でB.1.617.1~3の3系統に細分類されています。B.1.617系統は,SARS-CoV-2のスパイク蛋白においてL452R,D614G,P681R変異を特徴とします。この内のB.1.617.2系統が,インドで報告されたデルタ株です。従来呼ばれた英国株はアルファ株,南アフリカ株はベータ株,ブラジル株はカンマ株,インド株はデルタ株と名称が変わり,国を超えた変異株として国際的に対応する指針となっています。

 これまでと同様に,アルファ株はN501Y変異,デルタ株はL452R変異などとスパイク蛋白の単一の変異と認識することなく,いろいろな箇所での複数のアミノ酸変異が生じること,これは予測されていたことですし,SARS-CoV-2やコロナウイルスの特徴です。変異することがプログラムされている可能性なども学術的には非常に興味深いものです。

文献1. WHOによるVOC/VOIの呼称の変更の提案

世界保健機関 SARS-CoV-2 Variants of Concern and Variants of Interest.  31 May 2021.

文献2. 英国アルファ株に関する2020年12月のコメント

https://www.sciencemag.org/news/2020/12/mutant-coronavirus-united-kingdom-sets-alarms-its-importance-remains-unclear

初版:2021年3月1日(質疑応答:1,2.3),2021年4月5日(4,5),2021年5月7日(6,7),2021年6月13日(8), 2021年8月28日(3)

※ 適時,追記を予定します。

※ 蛋白の記載については,現在,「タンパク質」で一般的に統一されています。その前提のもとで,カタカナや英字と併記するときに「蛋白」,また略語として「タンパク」の表現を用いさせていただいています。


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