MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

太っ腹のブラームス

2014-01-15 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

01/15 私の音楽仲間 (551) ~ 私の室内楽仲間たち (524)



            太っ腹のブラームス



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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                  嫌われる外骨格
                太っ腹のブラームス
                理屈っぽいのは誰?
                言うだけ言ったわよ





 演奏例の音源]は、引き続きブラームスの
弦楽五重奏曲第1番
から。

 今回は第Ⅰ楽章で、最初の主題が再現される
箇所です。 ヘ長調、4/4拍子。



 再現部は、[譜例 1]の2小節前から始まります。








 [譜例 2]は楽章の冒頭です。 Violin.Ⅱ のパート譜ですが、
Vn.Ⅰに続いて登場し、主題の後半を引き継いでいました。

 これに比べると、再現部は実に賑やかですね。 あちこち
から三連符のリズムが聞こえます。








 この曲が作られたのは、1882年初夏のこと。 49歳を
迎えた直後に当ります。 ヴィーンに住み着いてから、
早20年が過ぎ、すでに大家として認められていました。

 自信に溢れた確固たる歩調が、ここにも顕われている
ように思われます。 着実に歩みを続けるブラームス…。



 これ、三連符でないと駄目ですね。 二連符でも、また
四連符でも、この風格は滲み出て来ません。




 そして、テンポも重要です。

 “Allegro non troppo ma con brio” と指示されている。



 意訳すると、「ほどほどに快活に、でも活力に満ちて。」

 相変わらず注釈が多く、ブラームスらしいですね。




 また、この “con brio” は “陽気に” と訳すことも出来ます。

 …となると、大好きな散歩に出かける気分でしょうか。



 wikipediaには、「朝はプラーター公園を散歩し、昼に
は “赤いハリネズミ” というレストランに出かけるのが彼
の習慣だった」…と書かれています。




 ブラームスの肖像画や写真は、今日でも豊富に残っています。
音楽ファンの貴方なら、もう何度も目にされたことでしょう。

 ここでは、brahms in silhouetteと検索してみました。
有名なのは、“歩くブラームス” の姿ですね。



 …おや、これ変ですよ? “ZUM ROTEN IGEL” とあります!

 「“赤いハリネズミへ” (向かうブラームス)」…の意味になるから。



 どうやら、オリジナルなものではなさそう。 コマーシャルに
転用されてしまったようです。




 




 次の二つの画像は、オリジナルと判明しているものです。
共にオット―・ベーラー (1847?1913) の作品。

 もちろんハリネズミは、どこにも描かれていません。







 この二つを合成し、修正した上で、ハリネズミを描き
加えれば…。 上の宣伝画像が出来あがりますね。




 さて、検索しているうちに、次の画像に行き当りました。

 『ブラームスと物乞い』…という題名らしい。



           PhotographersDirect より

  




 先ほどのwikipediaの続きには、「ブラームスは親戚たち
へ金品を惜しみなく渡し、そのうえ匿名で多くの若い音楽家を
支援した。」…と書かれてはいます。

 でも、「物乞いに…」という記述には行き当りませんでした。



 皮肉屋、毒舌家として知られたブラームス。 しかし生い立ち
は、決して幸せとは言えなかった。




 ヴィーンの名士として名声を欲しいままにした、後半生の
ブラームス。 弱者への思い遣りを忘れなかったとすれば…。

 私にとっては新たなる発見。 この大作曲家が、いっそう
好きになりました。





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