MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

星と音楽 (13) 「星たちの歓喜」

2008-10-26 05:24:08 | 星と音楽・科学一般
10/26  星と音楽 (13) 「星たちの歓喜」




オリヴィエ・メシアン (1908/12/10~1992/4/27) ①

 『星たちの血は歓喜に沸く』~『トゥランガリーラ交響曲』より




         『星たちの血は歓喜に沸く』 音源



演奏会の動画付き



静止画像
    ↑
 個人的には、こちらの演奏を好んでいます。



plastic soulfood] (トップぺージ) より

トゥランガリーラ交響曲(音源付き)




                       《お断り》

     正確な訳としては “星たちの血の喜び” が文法的に正しく、通常も
    そう呼ばれていますが、今回は “星たちの血は歓喜に沸く” としました。





 お聴きになってお判りのとおり、これは生半可な喜びではありません。 オーケストラも大編成で、普段はめったに見かけない楽器もいくつかあります。

 楽譜を見ると、調性はほぼ変ニ長調で一定しています。 でも、臨時記号の#や♭などがたくさん! 付いていない音符の方が、むしろ少ないのです。

 おまけに、とても速いので (3/16拍子、1小節 = 132/分)、音を出す方はもう大変。 歓びというよりは、むしろ…。 眼が走って点になり、飛び出て来そう。 がいくつも…。 



 ところで、なぜ “星” が歓ぶの? それに “トゥランガリーラ” って何なの?



 作曲者の言葉を借りれば、
   サンスクリット語の “トゥランガリーラ” は、

    トゥランガ = 時間運動リズム

    リーラ    = ① 遊戯。 それも、創造や破壊など、
                   生と死に関わるもの。

              つまり “宇宙に及ぼす神的作用”
                 という意味での遊戯 (!) になる。

             ②

    トゥランガリーラ愛の歌。 喜悦

                時間、運動、リズム、創造・破壊や
                生・死に寄せる讃歌



…とのこと。 まとめてみても、こんなにたくさん言葉が必要です。



 以下の、作曲者のプログラム・ノートにおける言葉は、
別宮(べっく)貞雄氏の訳を参考にしました。



 「"トゥランガリーラ交響曲" は愛の歌、”喜悦” の讃歌である。 それも、小市民や礼儀正しい人たちの、静かな幸福感に満ちたようなものではない。 超人間的、圧倒的、盲目的で常軌を逸した喜悦である。 “愛”、それは運命的で抗しがたく、すべてを超越し、他のすべてを無にする愛、トリスタンとイゾルデの媚薬が象徴するようなものである。」


 なるほど。 何とか解りました。 でも、なぜ “星たちの血” まで騒ぐのかな? 

 「真に愛する者同志が一体となること、それは自分たちの一つの “変容”。 しかも宇宙的規模における変容なのだ。 シェイクスピアも、あの恋人たちに言わせた。 『吾妹子(わぎもこ) の眼は、水、空、地、火。』 ロミオとジュリエットのセリフだ。 このことを考えて初めて、星の血がなぜ過剰なほどに歓ぶのか、理解できるのだ。 この第Ⅴ楽章は、長く熱狂的な喜悦の踊りである。」
 
 そうですか…。 ありがとうございました。



 全曲は以下のような楽章群から成り、演奏には、ほぼ 80分を要します。

   《 1 序章   2 愛の歌Ⅰ》

   《 3  トゥランガリーラ I   4 愛の歌 II 》

   《 5 星たちの血は歓喜に沸く 》

   《 6 愛の眠りの園 》

   《 7 トゥランガリーラ Ⅱ   8 愛の展開 》

   《 9 トゥランガリーラ Ⅲ  10 終章 》





 へえ、神さまもお遊戯なの…。 お星さまをたくさん作り、動かしたり、壊したり…。 "時間" や "次元" とかは、お手玉にしちゃうんだね、きっと。

 それに、"恋" が成就すると、全宇宙が鳴り響くの? 星たちの血まで爆発して歓ぶの? 星の体にも血があるんだ…。
 


 爆発と言えば、お星さまの ”超新星爆発” とかが、もし無いと、そもそも元素の中には存在しないものがあるんだって。

 お星さまの爆発だけが作る元素…。 そういう元素が無いと、私たちの身体も、また成り立たないそうだ。 この私たちの体は星屑から出来ている、それは聞いたことがある。
 

 私たちの体は、すぐ塵に帰る。 そしてまたいつの日か、星の血になるのかな…。

 あなたの好きな人と一緒に。



 (続く)