中島公園近くのシアターZOOにて平田オリザの主催する青年団の公演「ヤルタ会談」と「忠臣蔵・OL編」を観てきた。内容は期待通りの面白さだった。 両方とも史実を基にしたパロディーにうまく仕上がっている。
ヤルタ会談
登場人物はルーズベルトとチャーチルとスターリンの3人。この3人が第二次世界大戦の終わり頃の世界状況について独善的に語り合うものである。会談一日目はロクに政治談義にはならず、終始腹のさぐり合いで終わるが、二日目になってようやく世界情勢を中心とした政治話がメインになる。
登場人物が他の人物のことをどう思っているかを語らせるべく、時々3人のうち一人が何らかの事情のため舞台から姿を消し、残った二人がその一人についての陰口を言うという場面がうまく挿入されている。
劇が終わった後の談話で、劇中のセリフにある北海道のことが話題に上った。札幌公演ということもあって、劇中の話題が北海道の割譲問題という内容であるため劇団員の人たちも多少は気を遣っていたみたいだが、僕自身はたいして気にならなかった。むしろヤルタ会談で北海道のことが話題に上がるということの方にむしろ新鮮さを感じた。
忠臣蔵・OL編
OL姿の「7人の侍」が、赤穂藩の藩主が切腹となった後の身の振り方についてどうするかを延々と会社の休憩所で延々と議論をするという話である。
議論をしていく中で、話題がどんどん逸脱しながらも議論の仕方を議論するように、話題がうまく何度も戻りながら話がまとまっている。
ランチを食べるシーンから始まるこの劇は、セリフのみならず時折OLがお菓子を食べたりお茶を入れながらセリフを言うように、「食事」という行為が単なるセリフ劇に留まらない、身体を使った「パフォーマンス」が笑いをうまく誘うべく機能している。
劇を観てキューブリックの「博士の異常な愛情」と「12人の怒れる男達」をなんとなく思い出した。戦争をセリフ劇でブラックユーモアに仕立て上げた劇は文句なしに楽しい。
ロビーで売っていた平田オリザ氏の著作『芸術立国論』と『演劇入門』を購入。平田オリザの芸術論は全般的に大賛成だが、日本の行政レベルでの芸術立国への道は残念ながら難問だらけと言わざるをえないなぁ。