L'Appréciation sentimentale

映画、文学、漫画、芸術、演劇、まちづくり、銭湯、北海道日本ハムファイターズなどに関する感想や考察、イベントなどのレポート

平田オリザ「ヤルタ会談」と「忠臣蔵・OL編」

2005-11-28 23:02:11 | 演劇

 中島公園近くのシアターZOOにて平田オリザの主催する青年団の公演「ヤルタ会談」と「忠臣蔵・OL編」を観てきた。内容は期待通りの面白さだった。 両方とも史実を基にしたパロディーにうまく仕上がっている。

 ヤルタ会談

 登場人物はルーズベルトとチャーチルとスターリンの3人。この3人が第二次世界大戦の終わり頃の世界状況について独善的に語り合うものである。会談一日目はロクに政治談義にはならず、終始腹のさぐり合いで終わるが、二日目になってようやく世界情勢を中心とした政治話がメインになる。
 登場人物が他の人物のことをどう思っているかを語らせるべく、時々3人のうち一人が何らかの事情のため舞台から姿を消し、残った二人がその一人についての陰口を言うという場面がうまく挿入されている。
 劇が終わった後の談話で、劇中のセリフにある北海道のことが話題に上った。札幌公演ということもあって、劇中の話題が北海道の割譲問題という内容であるため劇団員の人たちも多少は気を遣っていたみたいだが、僕自身はたいして気にならなかった。むしろヤルタ会談で北海道のことが話題に上がるということの方にむしろ新鮮さを感じた。

 忠臣蔵・OL編

 OL姿の「7人の侍」が、赤穂藩の藩主が切腹となった後の身の振り方についてどうするかを延々と会社の休憩所で延々と議論をするという話である。
 議論をしていく中で、話題がどんどん逸脱しながらも議論の仕方を議論するように、話題がうまく何度も戻りながら話がまとまっている。
 ランチを食べるシーンから始まるこの劇は、セリフのみならず時折OLがお菓子を食べたりお茶を入れながらセリフを言うように、「食事」という行為が単なるセリフ劇に留まらない、身体を使った「パフォーマンス」が笑いをうまく誘うべく機能している。

 

 劇を観てキューブリックの「博士の異常な愛情」と「12人の怒れる男達」をなんとなく思い出した。戦争をセリフ劇でブラックユーモアに仕立て上げた劇は文句なしに楽しい。
 ロビーで売っていた平田オリザ氏の著作『芸術立国論』と『演劇入門』を購入。平田オリザの芸術論は全般的に大賛成だが、日本の行政レベルでの芸術立国への道は残念ながら難問だらけと言わざるをえないなぁ。


アンゲロプロス「エレニの旅」

2005-11-12 12:28:57 | 映画

e56a5c34b3008bb3718806fac6e9a9cd  テオ・アンゲロプロスの新作「エレニの旅」を蠍座で観た。「ユリシーズの瞳」で衝撃を受け、「永遠と一日」で全身に映像の威力に打ちのめされて以来この監督の作品を求め続けていたが、劇場で観るのは初めてだ。春にスガイで公開されていたらしいが、札幌で公開されないと思い込んでいたために見事に見逃してしまった。もう劇場で観る機会はないとあきらめていたが、さすが蠍座。こういう映画を採算度外視で上映してくれるオーナーのセンスに感謝するばかりである。蠍座は僕が見逃した映画を必ず上映してくれるすばらしい映画館なのだ。
 
 平日昼間のせいか、それとも、アンゲロプロス作品のためかはわからないが、ほとんど客がいなかった。それに途中で退場する人も何人かいて最後まで観た人は自分も含めて4,5人くらいしかいなかった。

 アンゲロプロス作品特有の長回しはこの映画でも展開され、ほとんどのシーンは1シーン1ショットである。オデッサを追われたギリシャ難民がやってくるシーンでスタートするこの作品は、エイゼンシュテインの「戦艦ポチョムキン」とも歴史的に通底している。
 
 青空が全く登場しないこの映画は、常に曇りか雨が降っていて、終始スクリーンはグレイである。そして雨、葬送の河、洪水等の「水」が数多く登場するが決して「青」くはない。水は生命のシンボルでもあるが、この映画では「死」と結びついている。特にスピロスの葬送の船のシーンは象徴的であろう。映画全体には常に死の影が顔を覗かしている。スピロス、ニスコ、木にぶら下げられた羊、そしてエレニの息子のヤニス、沖縄で戦死するアレクシス・・・。最後の場面で息子の死を知って号泣するエレニの涙もまた「水」であり、悲劇で幕を閉じる。

 また美しいアコーディオンの音楽もこの映画の魅力であろう。揺るぎなくスローで展開される映像の美しさとアコーディオンの音楽は「旅芸人の記録」でもお馴染みである。

 この映画が3部作の1作目であるのは驚きだ。この後の2部、3部がどうなるのか、果たしていつ公開されるのか?孤児から母、そしてふたたび一人の女性になったエレニの「旅」は一体どこに向かうのであろうか?次回作を待つ他あるまい。


L'Appréciation sentimentaleについて

2005-11-08 00:39:40 | ごあいさつ

 このブログでは主に本や漫画、映画等々、実際に自分が観たり読んだりしたものを中心に、軽い批評めいたことを中心に発表していきたいと思います。
 
 ブログのタイトルはフランス語でして、訳すと「感情評価」といった意味になります。19世紀のフランスの文豪フローベールの小説でL'Éducation sentimentale『感情教育』という名作がありますが、なんとなく似ているのでL'Appréciation sentimentaleなんてタイトルにしてみました。

 「受け手不在」といわれるような状況の中で、果たしてブログの僕の「言葉」がどこまで通じるのか?色々と試みてみたい思います。
 
 もう長いこと札幌に住んでいるので、札幌という日本の「周縁」からの視点を取り入れた考察もしていきたいと思います。
できれば週2,3回くらいの割合で更新できれば・・と思っていますがどうなることやら。
 
 どうかよろしく。