今年に入ってから雑誌で本の特集が組まれているのをよく見かけるようになり、そのいくつかはこのブログでも紹介してきた。最近もまた『STUDIO VOICE』の9月号が「現在進行形コミック・ガイド2006-2007」というタイトルで特集が組まれている。このマンガ特集が圧倒的に面白い。
前回『STUDIO VOICE』でマンガ特集が組まれたのが2005年6月号であり、それから現在に至るまでの間にもマンガ界はリアルタイムで目まぐるしく変化している。『DEATH NOTE』を初めとした人気長期連載が次々と最終回を迎え、『NANA』ブームもひとまず落ち着き、戦後日本文学の金字塔である大西巨人『神聖喜劇』が漫画化され、綾辻行人&佐々木倫子『月館の殺人』も完結した。
今回の『STUDIO VOICE』ではマンガ雑誌レビューから、現在のマンガの最先端がはっきりわかる構図になっている作りが実にすばらしい。マンガ表現論の革命的傑作『テヅカ・イズ・デッド』の作者伊藤剛が記事の執筆をしているところが実にいい。インタビューに登場している作家のセンスがまた素敵である。
今年上半期最大の傑作である若杉公徳『デトロイト・メタル・シティー』のギャグマンガとしての殺人的なまでのクオリティーの高さには面食らったものだが、あのギャグを作者が夜中に金属バッドを手に徘徊しながらネタを考えているというのだから凄まじい。石川雅之は『週刊石川雅之』が出た頃から密かに注目してきたが、『もやしもん』でその才能が花開いたと言える。あずまきよひこ『よつばと』と保坂和志の文学の関係はなかなか興味深い。
今のマンガ界をざっと見ても、山田芳裕『へうげもの』や柏原麻美『宙のまにまに』といった新たな題材をテーマにした作品や、まだまだ序章に過ぎない幸村誠『ヴィンランド・サガ』や岩明均『ヒストリエ』、鈴菌カリオ、青山景、笠辺哲、岩岡ヒサエといったIKKI系の作家の躍進や、身につまされるような花沢健吾『ボーイズ・オン・ザ・ラン』や信濃川日出雄『fine』など、楽しみな作品を挙げていくとキリがない。マンガ界には「空白」などあり得ないということであろう。