シルバーウィークは中学時代の友人の結婚式に参列するため、東京に何日か滞在してきた。会場が目黒の雅叙園だったので、式の前日夜に目黒駅近くのとあるホテルに宿泊。今回7年ぶりに再会する友人(しかも大幅に遅刻してくる強者だ)もいたりして、とっても楽しい一時を過ごすことができた。長くつきあうことのできる友人がいるというのは、本当にとっても幸せで楽しいことの一つだ、とつくづく思う。
二人の幸せを皆で祝い、またの再会を誓って友人と別れた翌朝からは、去年まで引きずっていたダークな気分からも解放されていることにも気がつき、改めてその喜びを味わう。とりあえず目黒から山手線に乗って渋谷にいく。午前中はまだシャッターが閉まっている店も多く、人もまばらだ。ブックファースト文化村通り店が開いていたので少し立ち寄る。店舗面積の割には量も充実していて、かつてのブックファーストの懐しさと快適な空気が感じられるのがとてもGoodだ。
Bunkamuraザ・ミュージアムで行われている「ベルギー幻想美術館展」を鑑賞。レオン・スピルアートの夢なのか現なのか判然としない、人間の苦悩が色濃く繁栄されている黒を基調とした絵からは、作者の苦境が伝わってくる。ジェームズ・アンソールが描く群衆の一人一人の表情は、漫☆画太郎の絵のようにも見えてくる。マグリットの絵はいつ見ても不思議な気分の連続だ。
考えてみたら、ポール・デルヴォーの絵を一度に大量に見る機会というのはかなり貴重だ。機械人形が好きだったデルヴォーのように、独特のフェティシズムを持つというのは芸術家足るべき条件の一つなのかもしれない。立ちっぱなしが続いて持病の腰痛が若干悪化したのか、痛みが再発。ベンチで休憩を多めに取る。
Bunkamuraを出てから、近くの「小川」というラーメン屋でラーメンを食した後、地下鉄を乗り継ぎ、故・黒川紀章が設計した新国立美術館へ。乃木坂駅から美術館に直結している出口に向かうと、佐藤可士和がデザインした赤い「新」というデザインのシンボルマークが描かれたポスターが目に飛び込んでくる。テーマは「光」ということで、画家の松本陽子&写真家・野口里佳、二人のコラボレーションの展示を見る。
松本陽子は抽象画家として名高い。ピンク色が爆発したうねりと勢いのあるポロック風の絵が壁全面に並んでいて、ひどく暖かみのある迫力が漂ってくる。野口里佳の写真もスゴイ。太陽の球体が写真の中央で光り輝いている構図の写真が、無数の種類展示されている。それも、木漏れ日が葉の間から差し込むという光ではなく、太陽の光球そのものが木と同化して放射状に光を放って丸く輝いているのだ。これはとても不思議だ。同時に、なんだか子供の頃によく遊んだ公園のことを思い出して懐かしい感じがした。
きれいな夕日や朝日を見ると、その光をそのまま何か形に残したい、という気になることがある。その瞬間だけの「画面」を切り取る、というのは密かにやってみたいと思っていたことだ。それを既にこういう形で行っている写真家の作品を見ることができたことに、何ともいえない感銘を受けた。
同時に開催されていた「新制作展」も鑑賞。多種多様な視点から対象物がとらえられているあまりにも夥しい数のユニークな絵を大量に見ると、脳内細胞も変革したような新たな気分になる。こんなにも芸術の創作意欲を爆発させている人がたくさんいて作品を発表してる、という事実に驚く。人間の創造性は留まるところを知らないのだ。
その後まだ時間があったので秋葉原に赴き、ラノベやDVDなどをいろいろ眺めている内に予約しているホテルのチェックインの時間が近づいてきたので、再び電車を乗り継いで渋谷へ。荷物を部屋に置いて、近くのそば屋でそば&牛丼セットを頼む。牛丼もそばも予想よりも遙かにボリュームが多い。丼もミニではなく、通常の一人前分ぐらいある。寝る直前でこの量では胃に負担がかかるな、と思いつつも全部平らげてホテルに戻る。すっかり疲れていたのですぐに爆睡。
翌朝の天気予報が曇りだったが、太陽が出ていて明るい。とりあえず原宿へ。駅を出るとすぐに「君に届け」episod0の無料冊子をもらう。街をよく見るとキャンペーンで爽子や風早くんのポスターが貼られている。明治神宮に参拝すると境内では偶然にも結婚式が行われていた。前日結婚式に出たばかりということもあり、不思議な偶然を感じながら竹下通りや表参道方面を散策。
表参道は、いつ来ても独特の気が流れており、ビルの形やブランドのロゴを眺めるだけでもとても楽しい通りだ。スゴイ人混みでウンザリするも、安藤忠雄がデザインした表参道ヒルズの内装には今更ながら驚く。そして、ZARAのビルのようなセンスのある建築物が札幌には全くないことに思い当たる。もう少しデザイン性のあるビルが札幌にもあった方がいいのではないか?
歩きっぱなしで疲れたので、途中カフェで休憩しようにもどこも大混雑。しょうがないので、そのまま歩いて青山ブックセンターへ。何冊か専門書を購入するが、4年前に比べてすっかりこの本屋も変わった。本屋の質は、並べられている本棚のデザインや空気から知的興奮を感じられるかどうかにかかっていると思う。詳しくは敢えて書かないが、さらなるABCの「復活」を望みたい、と一ファンとして心から思う。
さて、こうしてつらつら書いてみると、なんともとりとめのないアホみたいな彷徨の連続だ。札幌に戻ると急にいつもの日常に戻ってしまったが、この日常は昨年とまで全く違う生活でもある。いろいろな「気」を取り入れてきたので、これからの変化がとても楽しみだ。