ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

ソーシャルネットワーク:Facebook誕生秘話とアメリカの金儲け信仰

2011年01月24日 | 映画♪
世界で最も若い億万長者の1人、世界最大規模のSNS・Facebookの創始者 マーク・ザッカーバーグを描いた「ソーシャルネットワーク」。日本ではGREEやmixにおされてもう1つ存在感がないものの、その規模は世界で5億人を越えるという。今をときめくネットサービス誕生秘話を描いた作品。

【予告編】

2011/1/15公開『ソーシャル・ネットワーク』予告編 "The Social Network" JP trailer



【あらすじ】

2003年。ハーバード大学2年生のマーク・ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)は、高校時代から腕利きのハッカーだったが、人付き合いに関してはおくてで、今もガールフレンドのエリカ(ルーニー・マーラ)を怒らせ別れてきたところだ。寮の自室に戻り、やけでビールを飲みブログに彼女の悪口を書いていたが、やがてハーバード中の寮の名簿をハッキング、女子学生たちの写真を並べてランク付けするサイト作りに没頭していた。このサイト“フェイスマッシュ”はたった2時間で22,000アクセスに達し、マークの名前はハーバード中に知れ渡る。これが利用者全世界5億人以上のSNS“フェイスブック”の始まりであった……。2004年。資産家の家に育ち、次期オリンピックにも出場が期待されるボート部のトップ、双子のウィンクルボス兄弟は憤慨していた。自分たちが企画した学内男女のインターネット上の出会いの場“ハーバードコネクション” 立ち上げのためマークに協力を要請していたが、彼は“フェイスブック”を立ち上げてしまったのだ。彼らは、早速、自分の父親の会社の弁護士を介し知的財産の盗用だ、として停止警告を送る……。一方、“フェイスブック”の共同創業者&CFO、エドゥアルド・サベリン(アンドリュー・ガーフィールド)とマークはNYへ広告スポンサー候補との会合に出かけ、19歳で“ナップスター”を作ったショーン・パーカー(ジャスティン・ティンバーレイク)に出会う。ショーンは“フェイスブック”が目標にすべき評価額は10億ドルだとアドバイス、そこまで成長させるためカリフォルニアに来るように持ちかける。マークはスタッフを増やしサーバーを増設、ショーンは次々に投資家とのミーティングを設定するが、それに怒ったエドゥアルドは会社の口座を凍結する……。やがてウィンクルボス兄弟はアイデアを盗用されたと言い、エドゥアルドは創業者としての権利を主張、マークを告訴した……。(「goo映画」より)

【レビュー】

マーク・ザッカバーグ本人の協力はあまり得られていないようなので、どの程度、実際に近いのかということは分からないのだけれど、物語としてはそれぞれの登場人物が何とも納得できる感じ。

作品そのものは、ザッカバーグ本人の想いとは裏腹に、Facebookの立ち上げから成功にいたる過程で生じた友情の亀裂やビジネス界の大人たちに翻弄される姿が描かれる。

この作品を見ていると、アメリカという国は「金儲け」が1つの宗教のようになっているのだなぁというのを実感。日本でも一時、ホリエモンあたりが活躍した時にはそういう風潮があったわけだけれど、やはりそれはどうなのだろう。

このFacebookに対して、ウィンクルボス兄弟のような「横槍」(日本人の感覚だとあの程度でアイデアを盗まれたというのは理解できない)はともかく、創業者のマーク・ザッカバーグ、エドゥアルド・サヴェリンとFacebookを大きくするのに寄与したショーン・パーカーとでは、その想いは全く違う。

マークは開発を進めた動機が忘れがたい彼女に対してのアピールであったとしても、Facebookに対する想いは一途だ。自らがソースを書き、アイデアをつぎ込み、魂を込めてきたサイトだ。何よりも自分自身の一部のように思っているだろう。

これに対してマークの友人でもあるエドアルドは同じようにFacebookへの想いはあったとしても、それは自らが創業者の1人でありCFOであることの「プライド」であったり、自分こそがマークのパートナーであることへの想いだったのだろう。彼はCFOとして幾つかのスポンサーを見つけてはきたが、そのスピード感はナップスターを立ち上げたショーン・パーカーには及ばない。そしてそのことに対しての嫉妬は激しく自らがCFOだとことさら主張する。しかしその一方で、Facebookで自らのプロフィールを修正することもできない。

エドゥアルドにとって、Facebookはマークとともに「学生のノリで」立ち上げたサイトでしかないのだ。成功者への憧れはあったとしても何十億ドルといったビジネスの具体的なイメージはないのだ。

これに対してショーン・パーカーにはFacebookに対する愛情は感じられない。彼はナップスターを立ち上げ、世界中の音楽の楽しみ方を変える一方で、音楽業界を敵に回し、ナップスターを自己破産に導かざろうえなかった。Facebookを初めて見た彼はそこに新たなる可能性を見出す。それはもちろん世界をデジタルライフに導く可能性であり、同時にビジネスとしての可能性だった。

彼はfacebookを大きくするために、それまで学生の延長で進められてきたFacebookにファンドからの投資をもたらし、またアメリカ以外の国への展開も進める。そして成長のためであればエドアルドを切ることも厭わない。しかしある意味それだけだ。彼の口からFacebookをよくするためのビジョンは語られない。どれだけ資産価値を高めるかといったことだけだ。

もっともこれは事実とは反するのだろう。彼は会社化したFacebookの初代社長であり、Facebookの基本機能である「NEWS FEED」を考え出した人物でもある。NEWS FEEDとは利用者の友人たちの更新情報を表示するための機能だ。ただしこれは単純に全ての更新情報を表示しているのではなく、親密度の高い人の情報を優先する。また現在のFacebookのデザインも彼がナップスター時代のメンバーを呼んで変更させたものだ。

しかし(映画でも現実でも)彼はコカイン所持で逮捕され、社長から退くことになる…

ウィンクルボス兄弟とは多額の和解金で、エドゥアルド・サヴェリンとはFacebook創始者の1人という名誉回復(とおそらく多額の和解金)で和解した。果たして「Facebook」というサービスを愛していたのは一体何人いたのだろうか。

「金儲け」が宗教だというのはこういう意味だ。彼らにとっては自らが起業し、サービスを立ち上げ、それを利用者のために維持し続けるということとが必ずしも大事ではない。ファンドからの投資を求め時価総額を高めること、そのまま売却し財を成すこと、正しいことを証明することよりも「和解」という名で金銭で解決することが優先される。それを「是」とする信仰があるのだ。

そのことがYouTubeのようなサイトを生み出すことにもなる。彼らの発想には著作権違反といった違法性に目をつぶってでも先にサービスを立ち上げることを望む。「ビジネスチャンス」を掴むことこそが大事なのであり、問題は後で(金で)解決すればいい、と。

果たしてこうした感覚は「正常」なのだろうか。

Facebookはこれからも利用者を伸ばし続けるだろう。様々な関係を作り続けるのかもしれない。しかしFacebookを生み出したマーク・ザッカバーグの志をと共にできる人間は見つかるのだろうか。


【評価】
総合:★★★★☆
みんなはまり役です(本人を知らないけど!):★★★★★
物語の深みと言うと…:★★★☆☆

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