毎度の風景といえばその通りだけれど、原口大臣の「光の道」構想をむけてNTTvsKDDI、ソフトバンクがぶつかったようだ。今回の論点もいつもどおり「光」のアクセス部分を現行のNTTから分離することが是か非か、というもの。
「光の道」実現に向けNTTと競合が対立 - ニュース:ITpro
iPhoneで躍進したこともあって「SIMロック解除」議論では一転反対派に回ったソフトバンクは今回は攻める側。「SIMロック解除」議論と「光アクセス分離」議論は本質的には大差がないと思っているので、ソフトバンクの態度というのは、結局はこの手の議論が自社にとっての利己主義でしかないことの証明としか思えないのだけれど、どうだろう。
ちなみに個人的には「SIMロック」を解除したとしても、短期的にはiPhoneユーザーがDoCoMoへ乗り換えるかどうかくらいだろうと思っているので、「SIMロック解除」議論もナンセンスだと思う。iPhoneのように独自性のある端末であればキャリアを変えても継続したいかもしれないが、それ以外の携帯端末なんてどのキャリアも似たり寄ったりだ。むしろ端末と連携することで、キャリアから提供されるサービスの方がよほどメリットがあるのではないかと思う。
ICTタスクフォースの議論の中で、ソフトバンクの孫正義社長は、「光の道を全面的に支持。光アクセスは税金ゼロで、メタルアクセスと同じ月額1400円で提供できる」とぶち上げた。
孫社長は、メタルアクセスを全廃した上で、個別の工事ではなく全てをまとめて工事すれば工事単価が下がりかつ光ファイバの使用率が高まり、コストダウンが可能となる。その結果、「光の道を全面的に支持。光アクセスは税金ゼロで、メタルアクセスと同じ月額1400円で提供できる」というもの。
国策でもある地デジでさえここまで強引に地デジ移行させていないのに、これはかなり強権的だ。まぁ、これくらい強引にやらないと「光の道」は成立しないのかもしれないが、明治政府の廃藩置県でもあるまいし、とても民主主義社会の行動とは思えない。仮に「光の道」を国家プロジェクトとして位置づけるとしても、エコポイントや補助金といった間接的なインセンティブを通じて光化を促すことしかできないだろう。
そもそもの疑問として月額1400円だったらみんな「光」を利用するのか、ということがある。
だいたいケータイさえあればPCなんていらないと思っている人も多いのではないか。高齢者層のようにPCリテラシーの低い層もそうだし、逆にケータイ文化の中心である10代にとってもPC不要≒「光」不要なのではないか。それを固定電話(メタル)の代わりに「光」を引けといわれても、ちょっと違うだろう。
その点、NTTの三浦社長の論点整理は的を得ていたのではないか。三浦社長はインフラ整備率と利用率を分けた上で、『インフラ整備率を「90%→100%」にする措置については、これまでのように公設民営で進める方式が有効』とし、『利用率を「30%→90%」にする措置については、「光アクセスという特定の技術で普及を目指すのは問題も多く現実的ではない。普及のためにはサービスの充実と使いやすい端末が重要」』とした。
以前にも書いたのだけれど、利用率を「30%→90%」に上げたり、行政、医療、教育などの分野のICT利用を高めたりするために必要なことは「光」であることではない。それぞれのサービスを利用できる環境を用意することであって、端末やプラットフォームの整備だ。
どの家庭でも利用できるという意味では、PCではなくテレビやもっと簡易に誰もが利用できるような端末でインターネットを利用できるようにする必要があるだろうし、その上で使いやすいUIが必要になる。またPCとそういったデバイスに対しても同じようにサービスを提供するのだとしたら、ブラウザ間の違いや機能の違いを吸収できるような仕組みも必要になるだろう。これらの議論は「光」の話ではない。無線であろうが、光であろうが、通信速度が担保されるのであれば「インフラ」はなんだっていい。
結局、「光」に議論の焦点があっているということは、通信キャリア間の綱引き以外の何ものでもなく、ICT戦略の本質的な議論はなされていないということなのだろう。
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ちなみに個人的には「SIMロック」を解除したとしても、短期的にはiPhoneユーザーがDoCoMoへ乗り換えるかどうかくらいだろうと思っているので、「SIMロック解除」議論もナンセンスだと思う。iPhoneのように独自性のある端末であればキャリアを変えても継続したいかもしれないが、それ以外の携帯端末なんてどのキャリアも似たり寄ったりだ。むしろ端末と連携することで、キャリアから提供されるサービスの方がよほどメリットがあるのではないかと思う。
ICTタスクフォースの議論の中で、ソフトバンクの孫正義社長は、「光の道を全面的に支持。光アクセスは税金ゼロで、メタルアクセスと同じ月額1400円で提供できる」とぶち上げた。
孫社長は、メタルアクセスを全廃した上で、個別の工事ではなく全てをまとめて工事すれば工事単価が下がりかつ光ファイバの使用率が高まり、コストダウンが可能となる。その結果、「光の道を全面的に支持。光アクセスは税金ゼロで、メタルアクセスと同じ月額1400円で提供できる」というもの。
国策でもある地デジでさえここまで強引に地デジ移行させていないのに、これはかなり強権的だ。まぁ、これくらい強引にやらないと「光の道」は成立しないのかもしれないが、明治政府の廃藩置県でもあるまいし、とても民主主義社会の行動とは思えない。仮に「光の道」を国家プロジェクトとして位置づけるとしても、エコポイントや補助金といった間接的なインセンティブを通じて光化を促すことしかできないだろう。
そもそもの疑問として月額1400円だったらみんな「光」を利用するのか、ということがある。
だいたいケータイさえあればPCなんていらないと思っている人も多いのではないか。高齢者層のようにPCリテラシーの低い層もそうだし、逆にケータイ文化の中心である10代にとってもPC不要≒「光」不要なのではないか。それを固定電話(メタル)の代わりに「光」を引けといわれても、ちょっと違うだろう。
その点、NTTの三浦社長の論点整理は的を得ていたのではないか。三浦社長はインフラ整備率と利用率を分けた上で、『インフラ整備率を「90%→100%」にする措置については、これまでのように公設民営で進める方式が有効』とし、『利用率を「30%→90%」にする措置については、「光アクセスという特定の技術で普及を目指すのは問題も多く現実的ではない。普及のためにはサービスの充実と使いやすい端末が重要」』とした。
以前にも書いたのだけれど、利用率を「30%→90%」に上げたり、行政、医療、教育などの分野のICT利用を高めたりするために必要なことは「光」であることではない。それぞれのサービスを利用できる環境を用意することであって、端末やプラットフォームの整備だ。
どの家庭でも利用できるという意味では、PCではなくテレビやもっと簡易に誰もが利用できるような端末でインターネットを利用できるようにする必要があるだろうし、その上で使いやすいUIが必要になる。またPCとそういったデバイスに対しても同じようにサービスを提供するのだとしたら、ブラウザ間の違いや機能の違いを吸収できるような仕組みも必要になるだろう。これらの議論は「光」の話ではない。無線であろうが、光であろうが、通信速度が担保されるのであれば「インフラ」はなんだっていい。
結局、「光」に議論の焦点があっているということは、通信キャリア間の綱引き以外の何ものでもなく、ICT戦略の本質的な議論はなされていないということなのだろう。
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