NTT東日本と提携をしたり、横浜ベイスターズの買収に名乗りをあげたりと話題の尽きないUSENの決算報告があった。宇野社長はこれからの主力事業の1つとしてギャオを紹介。好調に会員数を伸ばしているものの、まだまだ広告がとれないなど、ビジネスとしてはまだまだ成立していない。果たしてこの編成型無料広告モデルは成功するのであろうか。
USENが横浜ベイスターズ買収に意欲!宇野社長が正式表明 (サンケイスポーツ) - goo ニュース
FujiSankei Business i. 産業/USEN ギャオ登録300万件突破 広告収入は伸びず(2005/10/21)
USENのHPに掲載されている決算短信などを見ていると、GyaOが含まれる「映像・コンテンツ事業」としては、ショウタイムやエイベックスギャガ・コミュニケーションズなどの関連会社を含んだ上で、売上高は14,925百万円(前期売上高991百万円)、営業損失は1,032百万円(前期営業損失557百万円)とのこと。内訳が載っていないので、GyaO単体の成績というのは見えてこないのだけれど、「FujiSankei Business i」によると、『インターネット放送「ギャオ」の二〇〇六年八月期の広告収入が五十億円未満となる見通しを示した。当初の予想は最低でも百五十億円としていた』とのことだから、会員数の方は好調に獲得しているが、収入予測は大きく狂ってしまったというところだろう。
これだけの損失となった要因としては、広告収入が伸びなかったことだけでなく、現在GyaOが提供しているような「完パケ」もの中心の「コンテンツ」だと、コンテンツ獲得のためのコストが大きいこともあるようだ。
Sankei Web 産経朝刊 放送・通信の融合手探り 重いコンテンツ調達費 ギャオ、視聴300万人でも赤字(10/21 05:00)
企業が全体的に「金余り」状態となり、その一方でTV・ラジオなど既存の4媒体の広告効果が落ちてきていることもあり、広告費用がネットへと流れてこようとしている。とはいえ、バナーやタイアップ記事、キーワード連動型広告などこれまでのネット広告に既存4媒体のようなブランド効果を期待することは難しい。そんな状況もあるので、ある意味TVなどと同じようにマスを対象としたメディアとして、GyaOそのものの広告収入は今後ある程度は伸びていくだろう。
ただそのこととコスト過多という体質の問題は全く別だ。収入が増えようとコストがそれより多ければビジネスにはなりえない。
7月3日に「GyaO」について書いた記事でも述べた通り、おそらくこのモデルでは、ネットワークコストとコンテンツ調達コストをどのようにコントロールするかが肝となる。特にGyaOのような「編成型」の場合、ロングテールを対象としたアーカイブ型のコンテンツというわけにはいかないため、常に集客力・話題性の高いコンテンツを調達しつづける必要がある。つまりはなから「金」がかかるのだ。
無料動画「GyaO」と動画検索「googleビデオ」
そういった意味で、特定の固定層をおさえつつ、TV放送の少ない、定期的にコンテンツ放送枠が埋まるコンテンツである「プロ野球」に宇野社長が興味を持つのも分かる気がする。(もっともそこまでの(商売としての)価値がベイスターズにあるかは微妙だけれど)
またネットワークコストについて言うと、「モノ作り」と違って、ストリーミング配信の場合、配信数が増えれば増えるほどネットワークコストが必要となる。この中でのポイントとなるのは、1)映像の圧縮効率、2)データセンター、ISPなどのネットワークコスト、3)ネットワークの利用効率(最大利用帯域と平均利用帯域の差分)の三点。もっとも、1)映像の圧縮効率については、殆どの配信事業者がMSのWM9テクノロジーをベースとしており、2)のコストについてもよほどの技術革新などがない限り急激にコスト削減に繋がるものではない。むしろ3)の部分が各配信事業者の工夫やコンテンツ編成の特性が現れるものなのだろう。
例えば、MSビデオの場合、同じように広告無料配信をベースとしているとはいえ、昼夜/夜間との利用率の差が少ないという。これの何がいいのかというと、映像ストリーミングサービスを提供しようというと、最大利用帯域以上でのインターネットの接続が必要となる(=ネットワークコスト)。つまり、1Mbpsの映像配信を考えた場合、平均1.5人の利用者しかいなかったとしても(平均利用帯域:1.5Mbps)、あるタイミングで15人が同時接続する瞬間があった場合、必要となる帯域としては15Mbpsが必要となるということだ。15Mbpsの契約を行いつつ、その利用効率は10%ということになる。つまり無駄が多いということだ。これが満遍なく使われているのであれば、それだけ有効利用されているということになるのだが、GyaOのようなエンタメ系中心のモデルの場合、効率は悪くならざろうえない。
また実際に「見るか」という問題もある。GyaOでは300万人の登録者がいるとのことだが、そのうち実際に利用しているユーザー数は約1/3~1/4といったところだろう。また1人あたりの平均利用時間/日は30分強ということだから、平均視聴時間/日が4時間のTVと比べると、健闘はしているもののまだまだといった感じだろう。
広告収入自体は今後増えていくだろうから、この3点をどのように改善していくか、このあたりがGyaOの成否の分かれ目となるのだろう。面白いコンテンツが増えてきたからといって、利用者が増えてきたからといって、それがそのままビジネスの成功に結びつくわけではないのだ。
iTunes vs Google:次世代のネットの覇者はどちらに
USENが横浜ベイスターズ買収に意欲!宇野社長が正式表明 (サンケイスポーツ) - goo ニュース
FujiSankei Business i. 産業/USEN ギャオ登録300万件突破 広告収入は伸びず(2005/10/21)
USENのHPに掲載されている決算短信などを見ていると、GyaOが含まれる「映像・コンテンツ事業」としては、ショウタイムやエイベックスギャガ・コミュニケーションズなどの関連会社を含んだ上で、売上高は14,925百万円(前期売上高991百万円)、営業損失は1,032百万円(前期営業損失557百万円)とのこと。内訳が載っていないので、GyaO単体の成績というのは見えてこないのだけれど、「FujiSankei Business i」によると、『インターネット放送「ギャオ」の二〇〇六年八月期の広告収入が五十億円未満となる見通しを示した。当初の予想は最低でも百五十億円としていた』とのことだから、会員数の方は好調に獲得しているが、収入予測は大きく狂ってしまったというところだろう。
これだけの損失となった要因としては、広告収入が伸びなかったことだけでなく、現在GyaOが提供しているような「完パケ」もの中心の「コンテンツ」だと、コンテンツ獲得のためのコストが大きいこともあるようだ。
Sankei Web 産経朝刊 放送・通信の融合手探り 重いコンテンツ調達費 ギャオ、視聴300万人でも赤字(10/21 05:00)
企業が全体的に「金余り」状態となり、その一方でTV・ラジオなど既存の4媒体の広告効果が落ちてきていることもあり、広告費用がネットへと流れてこようとしている。とはいえ、バナーやタイアップ記事、キーワード連動型広告などこれまでのネット広告に既存4媒体のようなブランド効果を期待することは難しい。そんな状況もあるので、ある意味TVなどと同じようにマスを対象としたメディアとして、GyaOそのものの広告収入は今後ある程度は伸びていくだろう。
ただそのこととコスト過多という体質の問題は全く別だ。収入が増えようとコストがそれより多ければビジネスにはなりえない。
7月3日に「GyaO」について書いた記事でも述べた通り、おそらくこのモデルでは、ネットワークコストとコンテンツ調達コストをどのようにコントロールするかが肝となる。特にGyaOのような「編成型」の場合、ロングテールを対象としたアーカイブ型のコンテンツというわけにはいかないため、常に集客力・話題性の高いコンテンツを調達しつづける必要がある。つまりはなから「金」がかかるのだ。
無料動画「GyaO」と動画検索「googleビデオ」
そういった意味で、特定の固定層をおさえつつ、TV放送の少ない、定期的にコンテンツ放送枠が埋まるコンテンツである「プロ野球」に宇野社長が興味を持つのも分かる気がする。(もっともそこまでの(商売としての)価値がベイスターズにあるかは微妙だけれど)
またネットワークコストについて言うと、「モノ作り」と違って、ストリーミング配信の場合、配信数が増えれば増えるほどネットワークコストが必要となる。この中でのポイントとなるのは、1)映像の圧縮効率、2)データセンター、ISPなどのネットワークコスト、3)ネットワークの利用効率(最大利用帯域と平均利用帯域の差分)の三点。もっとも、1)映像の圧縮効率については、殆どの配信事業者がMSのWM9テクノロジーをベースとしており、2)のコストについてもよほどの技術革新などがない限り急激にコスト削減に繋がるものではない。むしろ3)の部分が各配信事業者の工夫やコンテンツ編成の特性が現れるものなのだろう。
例えば、MSビデオの場合、同じように広告無料配信をベースとしているとはいえ、昼夜/夜間との利用率の差が少ないという。これの何がいいのかというと、映像ストリーミングサービスを提供しようというと、最大利用帯域以上でのインターネットの接続が必要となる(=ネットワークコスト)。つまり、1Mbpsの映像配信を考えた場合、平均1.5人の利用者しかいなかったとしても(平均利用帯域:1.5Mbps)、あるタイミングで15人が同時接続する瞬間があった場合、必要となる帯域としては15Mbpsが必要となるということだ。15Mbpsの契約を行いつつ、その利用効率は10%ということになる。つまり無駄が多いということだ。これが満遍なく使われているのであれば、それだけ有効利用されているということになるのだが、GyaOのようなエンタメ系中心のモデルの場合、効率は悪くならざろうえない。
また実際に「見るか」という問題もある。GyaOでは300万人の登録者がいるとのことだが、そのうち実際に利用しているユーザー数は約1/3~1/4といったところだろう。また1人あたりの平均利用時間/日は30分強ということだから、平均視聴時間/日が4時間のTVと比べると、健闘はしているもののまだまだといった感じだろう。
広告収入自体は今後増えていくだろうから、この3点をどのように改善していくか、このあたりがGyaOの成否の分かれ目となるのだろう。面白いコンテンツが増えてきたからといって、利用者が増えてきたからといって、それがそのままビジネスの成功に結びつくわけではないのだ。
iTunes vs Google:次世代のネットの覇者はどちらに
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